30日間の革命 #革命編 37日目

 加賀は仙波に対して、堂々と宣言をした。坂本のために革命を起こそうとしているのではないか。そんなことを言われて黙っている訳にはいかなかった。

 「申し訳ないけど、今何を言われたって俺は革命を止めるつもりはないよ。もう俺たちにも時間がないんだ。残りの高校生活を全て捧げても、革命を起こす。そのつもりだよ」

 仙波の表情が少し曇る。

 「これが最後の通告よ。革命なんて止めて。今ならまだ間に合うよ。お願いだから変なことは起こさないで。このまま、今まで通り普通の学校生活を送ろうよ。そして、みんなで楽しく卒業しよう」

 「……仙波さんはさ、何でそんなに革命に反対するの? それは受験のため? それとも……馬場のため?」

 加賀の問いかけに、仙波の表情は更に曇っていった。

 「……何それ? 何で馬場君が出てくるのよ。私の意思に決まってるじゃない。そもそも学校で革命を起こそうとする方がどうかしているのよ。私たちが普通なの。私は普通の感覚で判断しているだけよ。あなた達が異常なの」

 仙波の言葉にはトゲがあった。馬場という名前を出したことによって、仙波の心は乱れているようでもあった。

 「……せっかく二人きりなんだから、ここからは建前なしで本音で話さない? どうしても気になっていたことがあったんだ。何で仙波さんは、馬場の味方をするの? それが仙波さんの意思だって言うならそれまでなんだけど、俺にはどうしてもそうは思えないんだ」

 仙波はふっとため息をつき、窓辺へ歩きグラウンドを眺めた。グラウンドでは、女子バレー部がランニングをしていた。

 「……本音か。加賀君はいいよね、真っすぐで。昔からそう思ってたよ。誰と話すときも、本音を話してくれる。……そんな加賀君が好きだったんだよ」

 仙波からの告白に、加賀は少したじろいだ。

 「は? ……え? ど、どういうこと?」

 急な告白にとまどう加賀を見て、仙波は笑った。

 「やっぱり気づいてなかったんだ。そういうところも加賀君ぽいね。真っすぐすぎて鈍感っていうかさ。あーあ。何か私だけバカみたいだから、もう全部話すね」

 そう言うと仙波は生徒会長のイスへと座り、加賀へ向かって話した。

 「全部”嫉妬”だよ。坂本さんに対してのね」

 「はあ? し、嫉妬? どういうこと?」

 「だから嫉妬よ。坂本さんが羨ましかったのよ。だから坂本さんのやることに全力で反対しているの。ただそれだけ」

 「ちょっと待って。それだけって言われても全然分からないんだけど」

 「……悔しかったのよ。全部坂本さんに負けるのが。私ね、一時期凄い勘違いしてたんだ。周りの男子からちやほやされて”私って人気者なんだ”ってね。でもね、『坂本さんってやっぱり別格だよね。仙波さんはどこの学校にもいる可愛い女子って感じだけど、坂本さんはオーラが違うんだよな』っていう男子の会話を聞いちゃったんだ。もちろん、ただの会話だし、ふざけて言ってるだけかもしれないよ。でもね、傷ついたんだ。私は”どこにでもいる普通の存在なんだ”ってね。そう考えたら、もう自信なくなっちゃってね……」

 仙波は机にあったペンを指で回しながら、そのまま話を続ける。

 「そんなとき、私と加賀君が付き合ってるって噂がたったんだ。何か凄い嬉しくてね。学校で一番人気の加賀君と噂されるってことが。それにその時、自信をなくしていた私に『可愛い』って加賀君から言われたのも本当に嬉しかったんだ。覚えていないと思うけどね。それで加賀君のことが好きになっちゃったんだよね」

 加賀は仙波の話を聞きながら、どうすることも出来ずにいた。ただただ仙波の話を聞くほかなかった。

 「でもね、やっぱりそこでも坂本さんが出てくるんだ。3年になって坂本さんと加賀君が同じクラスになるでしょ。それで二人が一緒にいるところが目撃されたらすぐに噂って拡がるんだよ。多分加賀君たちの耳には入っていないと思うけど、二人が付き合ってるんじゃないかって噂は、3年になってすぐ拡がってたんだよ。もうショックでさ。どうしても坂本さんを超えられないことが。そんな時に声をかけてきたのが、馬場君だったんだ。彼が私に告白してきたんだけど、何て言ったと思う? 『坂本先輩を超えるために力になって欲しい』だよ。思わず笑っちゃったよ。でもその時思ったんだ。私も坂本さんを超えたいって。彼についていけば、いつか坂本さんを超えられる。そう思って、彼と付き合いはじめたんだ。それから、革命の話を聞いたよ。坂本さんと加賀君たちが学校で革命を起こそうとしてるってね。だから私は全力で反対しようと思ったんだ。坂本さんがやろうとしていることを阻止できれば、私はようやく坂本さんに勝つことができるって。その気持ちは今でも変わってない。小さい女だって思うかもしれないけど、私にとって坂本さんはそんな存在なんだ」

 仙波の告白に、加賀は拳を握りしめた。

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