30日間の革命 #革命編 169日

 高橋は鳥越に近づき、ゆっくりとマイクを取り上げた。鳥越も高橋の不気味な笑顔に押され、思わずマイクを手放した。

 「ここは私に任せてください」

 高橋のそのささやきが何を意味しているのか、鳥越は全く分からなかった。

 高橋は鳥越からマイクを取り上げると、ゆっくりとステージに向かって歩き出した。鳥越が怒鳴った直後の出来事なので、学生たちのみならず、教師を含めたその場にいる全ての人の注目が高橋に集まった。高橋はそのまま歩き続け、ステージの下で止まる。ステージ上にいる加賀に一度目を向け、すぐさま全校生徒の方へと向き返した。

 「えー、全校生徒の皆さん、うちのクラスがご迷惑をおかけしております。今の教頭からお話しがあった通り、こんな茶番は長くは続きません。今すぐ通常の文化祭に戻るべきです。今なら教頭も不問にしていただけるということなので、ここは大人しく引き下がらせようと思います」

 高橋の言動に注目が集まったが、高橋の口から出たのは革命を止めさせるという旨の話だった。そして更に話しを続ける。

 「私もクラスの担任として恥ずかしい限りです。3年生にもなってこんなことをするなんて。学校で革命を起こす? 正直笑ってしまいますよ。受験も間もなく控えているというのに、こんな茶番。本当に情けない限りです」

 高橋の話しに鳥越並び他の教師は安堵した。担任が動き出したことで事態は収まる。そう思った。鳥越も高橋の話しを聞いて、うんうんと頷いていた。

 「いいですか、君たちが何をしようと、所詮まだ“子ども“なんですよ。子どもの発想力ってのは確かに面白い。でも、出来ることと出来ないことがある。それを判断するのが大人の仕事です。だから、君たちは素直に大人の言うことに従えばいいんです。それが一番なんですよ。学校で言えば教師の言うことに従うことです」

 高橋の話しはまだ終わらない。

 「結局君たちだけの力じゃ、何も出来ないんですよ。今日、それが証明されます。君たちが革命を起こそうとするも失敗する。つまりそれは、君たちの無力さを示していることになる。全校生徒の皆さんもよーく見ていてください。これが君たちの限界なんだとね。また来週から今のまで通り学校に従う生活を送ればいいんです。そして、勉強して大学に行って就職する。あ、ちなみに社会ってものこんなもんですよ。大人だって、上下関係はありますから。嫌な上司がいても、ヘコヘコと従わなければならないんです。だから今の内にそれに慣れておいた方かいいんです。変に夢を見ると、後から大変ですからね」

 だんだんと高橋の話しがエスカレートしていってることを、教師たちは感じていた。鳥越もそれを感じ、高橋へ近寄ると

 「た、高橋先生。も、もうその辺でいいですよ」

 と小さな声で耳打ちした。

 「いえいえ、とんでもない! まだ彼らは分かってないんですよ。ここまでは言ってもほら、座ってないでしょ? 私に任せてくださいよ。この機会に学生たちに現実ってのをしっかりと教えてやりますよ」

 高橋は敢えてマイク越しに鳥越へそう返した。そして、

 「よし、もう敬語はやめるぞ。いいか? さっきも言った通り、君たちは無力だ。いくら子どもが束になったって何も変えることなんて出来ないんだよ。現実見ろ。今こんなことに時間を使っている場合か? そんな時間があるなら勉強しろよ。もう文化祭は終わりだよ。十分に夢を見たじゃないか。もうこれで満足だろ。ならさっさと幕をおろしてこんな茶番を終わらせるんだ」

 高橋の話しを受け、会場の雰囲気はまた少しずつ変わっていった。

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