- 運営しているクリエイター
記事一覧
あの、夏の日の君へ。
第一章
(1)
「松宮玲です。よろしくおねがいします」。小学生の時だけでも、3度言った。黒板の前で、とかではなく、自席で立ち上がらされて、一言、それだけ言って頭を下げる。中学に入ってからも、9月だか10月だか、中途半端な時期に、イドウ、とかいうので、また違う街に転居した。その頃には、もう誰かと深い関係になることは避けて、教室にいても、置物か、人間以外の生き物のように、呼吸だけをして、日がな一
第一章
(1)
「松宮玲です。よろしくおねがいします」。小学生の時だけでも、3度言った。黒板の前で、とかではなく、自席で立ち上がらされて、一言、それだけ言って頭を下げる。中学に入ってからも、9月だか10月だか、中途半端な時期に、イドウ、とかいうので、また違う街に転居した。その頃には、もう誰かと深い関係になることは避けて、教室にいても、置物か、人間以外の生き物のように、呼吸だけをして、日がな一