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あいいろのうさぎ  短編集

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「あいいろのうさぎ」として活動している私が日々書き溜めている短編をまとめたものです。恐らく文字数は1000字程度なので、サクッと読んでいただけると思います。 巡り合ったあなたの時…
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2024年3月の記事一覧

金の雛鳥を追いかけて

金の雛鳥を追いかけて

あいいろのうさぎ

 金の卵から生まれたヒヨコは他とは見た目からして違うのだろうか。いや、分かっている。金の卵というのは才能ある若者を指す言葉だ。そこから生まれたヒヨコ、というような表現は、俺は聞いたことがない。

 ただ、部活の同期が目覚ましい活躍をしていると、そんなことも思い浮かんでしまう。こいつは確実に金の卵から生まれてきたやつだ。それに、これで卵の状態とは思いたくない。こいつは確実に生まれ

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Many blessings to you.

Many blessings to you.

あいいろのうさぎ

「それでね、ボールに当たりそうになったけれど、メアリーが助けてくれたのよ!」

 あら! メアリーちゃん、とってもカッコいいわね!

「その後、そのままメアリーがシュートを決めたの! とってもカッコよかったわ!」

 メアリーちゃんはとっても運動の出来る子なのね。

「私ももう少し運動が出来ると良いんだけど……」

 そうね、得意なことが広がるのは素敵なことですもの。でも、その

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届かない距離

届かない距離

あいいろのうさぎ

「古文わかんない! やる必要性さえわかんない! 今の言語で喋ってよ! 日本語でこい!」

 放課後の空き教室で勉強していたところ、小林が喚き始めた。

「古文にキレたってしょうがないだろ。あと古いだけで日本語だから」

 俺が返すと小林はあからさまに不機嫌な顔になる。

「正論なんて今はいらないのー! 私は勉強しなくて良い理由が欲しいのー!」

「そこまで来るといっそ清々しいな

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孤独を取り払って

孤独を取り払って

あいいろのうさぎ

 憧れのその人と同じクラスになれたのは奇跡としか言いようがなかった。しかも席が隣だなんて、私は運を使い果たしてしまったのではないかとさえ思う。

 ただ問題があった。

 憧れるあまりに一言も喋りかけることができない。

 そもそも私なんかが話しかけていい存在なのだろうか。クラスメイトたちも彼に対しては一目置いているためか距離を置いている。そんな中で話しかける勇気もなかなか出て

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