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エッセイ

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執筆した雑記、月報などをここにまとめています。
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2019年9月の記事一覧

鷹見一幸『再就職先は宇宙海賊』――意地、意地、意地、ロマン!

鷹見一幸『再就職先は宇宙海賊』――意地、意地、意地、ロマン!

鷹見一幸『再就職先は宇宙海賊』ハヤカワ文庫、2018を読んだ。次がありそうな書き方だが、もしかしたらこれで完結かもしれない。

SFには前提がある。スチームパンクならかっこいい蒸気機関車とか飛行船が出てくるし、ニンジャスレイヤーの場合は2000年問題でUNIXがばくはつし、そもそも平安時代はニンジャに支配されていたという前提だ。このSFの前提は、月である。ざっくりいうと、スーパーテクノロジーを持つ

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マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』――ゾンビ出現を経たパラレルドキュメンタリー

マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』――ゾンビ出現を経たパラレルドキュメンタリー

マックス・ブルックス(訳:浜野アキオ)『WORLD WAR Z』2013、文春文庫(上下)を読んだ。実際にはもっと前に読み終えていたのだが、やっと感想を書く気になれたというほうが正しい。

一口でいうならゾンビと人間の戦争である。個人やグループ間の逃げる話でなく、人類がアジアやユーラシアの場所で戦いきってゾンビを絶滅させる話だ。つまり、ゾンビに勝った。

他のゾンビ作品ではゾンビと人間の争いや人間

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飴村行『ジムグリ』――まつろわぬ民、銃、地雷、そしてシャッテン

飴村行『ジムグリ』――まつろわぬ民、銃、地雷、そしてシャッテン

飴村行『ジムグリ』集英社文庫、2018を読んだ。ジャケットそのものが極彩色で怖いし書いてあることの意味もわからない。帯には「関根勤さんも大絶賛!」と書いてあるのだが、作者の粘膜シリーズを読んで大ファンになったそうだ。解説も関根勤さんが書かれている。

どこから始まるのかというと、トンネルだ。主人公である博人が大宮あたりから引っ越してきた小仲代群獅伝町には、虻狗隧道と呼ばれるトンネルがある。トンネル

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水城正太郎『道化か毒か錬金術』――自由に暴れるエンタテイメント

水城正太郎『道化か毒か錬金術』――自由に暴れるエンタテイメント

水城正太郎『道化か毒か錬金術』HJ文庫、2018を読んだ。以下続刊している。

どんな作品かと聞かれたら、半分シリアスだが半分自由な作品だ。陰謀が出たと思ったら日本の相撲取りの話になったり、事情聴取のすぐ後でヘヴィメタ突っ込んできたりとギャップが忙しい。雰囲気としては夜中になんとなくつけた深夜ドラマのノリなのだが、最終的にはエンタメに収束していく。

舞台設定がなかなか凝っている。ページを開くと最

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