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雨乞い

 気がついたら映画館にいた。いつの間にか着席していた。もう映画は始まっているようで、周りの目も気になるし席を立つのはよしておこう。良かったな俺が映画好きで。

 お姫様を助け出すなんて聞き飽きた。ゲームでも物語でも遊び尽くされ、語り尽くされた。刀を使って姫を守る、ありきたりなストーリー。敵の大将のような人物だけはおそろしくてまともに見られない。味方が次々に屠られていくのを眺めていると、次は自分が殺されそうな気がして、屋敷から逃げ出した。お姫様と何人か追従させて森の中へ。

 ゴロゴロとどこかで雷落ちている。雨に体を冷やされている、恐怖からきた震えなのか、寒さから来た震えなのかもうわからない。野営しよう、ここからは持久戦に。

 稲光が近づいてきて、自分たちの目の前の木を割ると、耐えられなくなったのか、仲間が一人逃げ出した。森の中を駆けていく、追いかけないとまずい、一人で行動していいのは囮だけだろう。

 目の前の仲間を必死で追いかけていると、いつのまにか森を抜け足元がおぼつかなくなっていた。どうやら土の道が途切れ、砂しかない、砂漠のような場所まで来ていた。仲間を見ると装備を捨てて空を見上げていた、その姿にどこか見覚えがある気がして、周りを見渡す。しかし、次のシーンにまた目を奪われてしまった。

 見上げた夜空に光る月、そして地球は青かった。今いるこの地球よりもきっと空に浮かんだあの地球のほうが青く見えるだろう。遠くに見えるのは学校なのだろう、チャイムが聞こえてきた。

 そして学校が割れていく、なんの脈絡もなく割れていく。地球が2つある世界に脈絡なんてないようなものか。豆腐みたいにきれいに線が引かれて割れていく。大きさからして教室ごとに区切られているようだ。そのひとつひとつが味噌汁ではなく宇宙に向かって飛んでいく。へぇ、飛べるんだ校舎って。とかそうじゃなく自分たちもあれに乗っていかないとこの地球に置き去りにされてしまうんじゃないのかと焦る。それで何が困るのかよくわからないけど、何かに急かされるように二人は校舎に向かって歩み始め、その足取りは徐々に力強くなっていく。

 黒幕

 はぁ?これで終わり。B級映画もいいところだ、地球が終わる系の話なんか聞き飽きていたし、もう一個地球ができてる設定とか突拍子もなさすぎて...明るくなって初めて気づいたけどなんだ自分を含め3人しかいないじゃないか。これなら周りを気にせずに出ていっても良かったな。ってかふたりとも何してんの?こぼしたポップコーンでも拾おうとしてるのか目を皿にして探している。何探してるの?と聞くと「青いBB弾」とだけいって元の作業に戻る。

 意味不明すぎて手伝ってやる気にもならず、出口に手をかけると砂でつくっていたかのようにサラサラとくずれていった。映画館に続いていたはずの扉は砂漠へつながっていた。月の白と地球の青だけが夜空に光る。

 

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