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欧州: EUクリーン水素戦略

欧州でも盛り上がる水素活用だが、その原点はEUグリーンディールであり、EUクリーン水素戦略にある。そこで水素を巡るEU政策動向を概観しつつ、水素戦略を掘り下げて整理した。

記事要約

  • 脱炭素&気候中立を謳ったEUグリーンディール達成には水素活用が不可欠なので、2020年に欧州委員会はEUクリーン水素戦略を公表。

  • ゴールは2030年までにグリーン水素の大量生産・消費で、それに向け3ステップを提案

  • 理念やそれに沿った計画はしっかりと立てるEUらしい野心的な水素戦略、これは始まりにすぎず、戦略発表から早4年、政策がどのように動いていったか引き続き掘り下げていく。




1. 水素を取り巻くEU政策動向

全ては、NEDO欧州事務所が2023年4月にアップしたスライドにうまくまとまっているので、まずはそれを紹介。

水素利用を巡るEU政策動向
水素利用を巡るEU政策動向
(出典:NEDO欧州事務所)

すなわち脱炭素&気候中立を謳ったEUグリーンディール達成には水素活用が不可欠なので、2020年に欧州委員会はEUクリーン水素戦略/A hydrogen strategy for a climate-neutral Europeを公表、すべてはここから始まり、2021年のFit for 55で具体的な法規改定・導入に入る、ウクライナ侵攻を発端としてエネルギー危機により水素の役割はエネルギー安全保障という観点からも重要度を増した、という流れ

※脱炭素&気候中立を盛り込んだEUグリーンディール概要はこちらから

ちなみにFit for 55下で、各種関連規制にどういった水素条項を盛り込んできたかは下記の図に整理されている。再エネ指令改定代替燃料インフラ規則などに水素縛りを入れることで低炭素水素生産の拡大化を図りつつ、航空運輸燃料規則改定で低炭素水素需要も刺激しようという目論見。

水素利用を巡るFit for 55下での取組
水素利用を巡るFit for 55下での取組
(出典:NEDO欧州事務所)

2. EUクリーン水素戦略

2020 年7 月8 日に、欧州グリーンディールの一環としてEUクリーン水素戦略/A hydrogen strategy for a climateneutral Europe」を発表。これは法規・規制ではなく、あくまで欧州委員会が考えた戦略であり指針である。

再エネ普及によるグリーンな電力を使って生成するグリーン水素、電力の蓄積手段としても利用でき、さらに電力による化石燃料代替が困難な産業部門での低炭素化の手段ともなる。また、CCUSを使ったブルー水素も短期的なオプションとして盛り込まれている。ゴールは2030年までにグリーン水素の大量生産・消費で、それに向け3ステップを提案。European Clean Hydrogen Alliance設立して官民連携で頑張る。

  • 第一段階(2024年迄):水電解用Electrolyersを拡大生産し6GW分域内設置グリーン水素1Mt生産し、産業部門など既存領域で消費。

  • 第二段階(2030年迄):40GW域内設置&グリーン水素10Mt生産し、DRI製鉄や運輸・海運部門など新たな領域で水素消費を促す。

  • 第三段階(2030年以降):グリーン水素の大量生産・消費体制へ

EUの水素ロードマップ
EUの水素ロードマップと3ステップ(出典:欧州委員会資料

※グリーン水素やブルー水素、主な水素の用途(既存領域、新領域)などの概要は以下

具体的にどうやるのということだが、5つの大きな行動方針(20の具体的なアクションポイントが紐づけされているが詳細割愛)が盛り込まれてる。

  1. 投資促進:官民連携やInvest EU資金のテコ入れなど

  2. 需要創出&生産拡大:運輸交通政策や他エネルギー使用セクターでの水素利用の盛り込みなど

  3. 水素利用拡大を支える各種スキームなどのフレームワーク構築:インフラ整備、水素ステーションの設置、水素利用を巡る各種規制の簡素化・効率化

  4. R&D:水電解装置の拡大など

  5. 国際協力:域外近隣諸国との関係構築、水素調達網の確立など

なお民間による投資誘因のため、公的資金をテコ入れするとのことで、Invest EUやNew Generation EU、結束基金などが挙げられている。投資先内訳は下記。

投資金額内訳(出典:石油エネルギー技術センター

3. コメント

IEAの水素報告書を読んでから欧州の水素戦略を読むと、言説が同じことに気づかざる得ない。それだけIEAという国際機関とEUというヨーロッパ地域機関が密な関係があるということだろう。それ自体は悪いことではなく、むしろいいこと。実現可能性/Feasibility はさておき、理念やそれに沿った計画はしっかりと立てるEUならではの野心的な水素戦略となっている。

この野心的な政略の裏には欧州委員会の焦りが見て取れる。国際的にみれば、欧州は水素活用という分野で中国や米国らに後れを取っていることは否めないからである。

※水素を巡る国際的な動きや現状は下記から

字数の関係で今回はここまでとするが、この水素戦略はいわば始まりにすぎず、戦略発表から早4年、政策がどのように動いていったか引き続き掘り下げていく。


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