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絵とワードの物語 『きっかけはきらめいて』 


「ボトルメールだね」
 首をかしげた私に向けて、手に持った本をポンポンと叩く。タイトルだけ聞いたことある海外の小説。ちょっと怖そうだから読んだことはない。
「手紙を詰めた瓶を海に流すんだよ。誰かに拾われますように、って」
 そんなことしたって、誰にも読まれないかもしれないのに。差し出された本を受け取ってぺらぺらめくるけど、びっしりと並んだ文字に、読もうと思った気持ちはすぐに消えていった。
「でも、拾ったでしょ」
 そうだけど。
 机の上に置いた瓶は、海で見たときみたいに輝いてはいない。きらきらして不思議できれいだと思ったから拾ってきたけど、よく見たら傷もたくさんあるし、中の紙はなんか茶色いし。
「開けてみたら?」
 私は首を横に振る。
 すぐに開けるなんてなんだかもったいない気がする。もう少し、もうちょっとだけ飾っておきたい。あの海の向こうに太陽が沈むまで。
 だって、きっと、そうしたら。
「……なに?」
「ううん、なんでもない」
 きみと二人、このキセキをほどけると思うから。


絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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