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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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2020年9月の記事一覧

禍話リライト「血を吐く弟」

 大学生たちがサークルの部室に集まって怖い話をしていたときのこと。早々にネタが切れてネットで調べた怖い話を朗読し合っていたのだが、怖くないだの何だのと批評する者があった。  仮にAくんとしておくが、彼は浪人したとかでほかの部員よりいくらか歳上で、誰も言い返せない。はじめのうちは的を射た内容だったけれど、リアリティが無いからダメだと言い出し、段々と難癖に変わり、場の雰囲気も悪くなっていった。  そこに現れたのが、牢名主のごとく部員たちを取りまとめるOBの先輩だ。分け隔てなく接し

禍話リライト「やまのこども」

「山にやばいモノがいる話ってさ、ネットの怪談だと姦姦蛇螺とかヤマノケとか色々あるけど、実際のところどうなんだろうね? 実体験だと聞かないよなあ。やっぱりネット上のフィクションなのかな」  趣味で怪談を集めているCさんは、たまに友人たちにそうぼやいていた。すると後日、それを聞いていたある人が、 「山にやばいモノがいる話、聞いてきましたよ」と声をかけてきた。 「俺にこの話をしてくれた人、かなり枝葉の部分をぼかしてたんですけど、この話、結構怖いですよ」  そう言って、こんな話を聞か

【禍話リライト13】因果の通り魔

「よく通り魔って言うじゃないですか。『魔が通る』って。 急に往来で人を刺すようなやつが出たときに、通り魔って言い方をしますよね。通り悪魔とか、悪い風が吹いたとか。 つまり、そんなのは人間がやれることじゃない。 その時その場所に変な風が吹いて、それに当たった人がそういうことをしたんだ、って考え方だと思うんですが。 …そういうのって、やっぱあんのかなって」 *** 会社の飲み会があった。 仲のいい社員で家に集まってワイワイする、気楽な飲み会である。 宴は大いに盛り上がり、日を

禍話リライト「重なる家」

 ある大学のサークルで、怪談会をしよう、ということになった。  今年五年生だか六年生だかになる先輩が言った。 「せっかくだから、おれの知ってる誰も住んでいない親戚の家があるから、雰囲気いいからそこでやろう」  当日、サークルの皆でその家に向かった。まだ夜の九時だというのに、周囲には明かりがなく、真っ暗だ。田舎だからこんなものなのか……と思いながら、家に足を踏み入れた。  話に聞いたときは廃墟のようなボロボロの建物を想像したが、実際にはそんなことはなく、中も小綺麗だった。ただ、

【禍話リライト14】首の命日

A子さんはいたって平凡な高校生だったが、お兄さんとお姉さんは昔からとても優秀な人だった。 勉強もスポーツも習い事も、何をさせても上手くできた。 ただ、性格にだけは恵まれなかったらしい。 自分たちに比べて何事も平均点なA子さんを、いつもハッキリと口に出して嘲っていたという。 どうしてか悪いことに、親ふたりも何かにつけては兄や姉と比べて馬鹿にするので、幼いときからコンプレックスを抱いて育った。だが高校生にもなると「なんだこの人たちは」と気がつくようになる。 大学を卒業して仕事に

【怖い話】 ちいさなせかい 【「禍話」リライト44】

 日常生活の中のちょっとした出来事。それにほんの少しだけ深入りしたせいで、怖い目に遭ってしまう。  これはそういうお話である。  Gさんが仕事の都合で引っ越し、マンション暮らしをはじめて1年経った頃のことだ。  「彼女もいない一人暮らしでしたけど、その分かなり気楽ではありましたね」  平和だし、騒音もなく、迷惑な近隣住民もいない。いい環境だな、と感じていた。  街での生活にも慣れてきたなと思った1年目のあるとき、妙なことが起きた。 「オルゴールがね、聞こえてきたんですよ。

禍話リライト「かぞくの家」

 Yさんという女性が、大学生だったときの話だ。  彼女は地元から離れた大学に進学し、独り暮らしをしながら授業にサークルにと充実した毎日を送っていた。  大学2年生になると、サークルの後輩のFさんという女の子と仲良くなった。Fさんは実家から通学しているという。サークルの活動がある日も7時には帰るため、親が厳しいのかな、とYさんは考えていた。  ある日のこと。Yさんが授業の合間の時間帯にサークルの部室に行くと、ちょうどFさんも来たところで、しばらく2人でダラダラと時間をつぶして