ほーんてっど・きゃっする
はじめに
こちらは音声配信アプリにて独自企画として行った「Halloween Monsters」用に書き起こしたお話です。
企画が終了したのでフリー台本化します。
ほーんてっど・きゃっする
ここはモンスターが住むと噂のほーんてっど・きゃっする!
3階建ての庭付き一戸建て!家賃は0円のオバケには嬉しい暗くて日の当たりが悪い石造建築。ところどころ崩れてるところもあるけど、雰囲気があってそれがいい!そんなほーんてっど・きゃっするには色んな奴らが住み着いてる。
まずは、月夜に叫ぶバインドボイス!その呼び名は数しれず。ライカンスロープにルー・カルー、ヴィルカシスと色んな国で恐怖の伝説を残したこのモンスター!オオカミ男!
鋭いヒレ!全身ビッシリ鱗の表皮。手には水掻き、首にはエラ。近くに来たら生臭い!アマゾンに潜む水棲の恐怖。半魚人!
体は大人、頭脳は子供。巨大な体は科学の産物。ツギハギだらけのビックボディ!フランケンシュタイン博士が生み出した恐怖の人造人間!名前は無い。
手に持つ箒で掃除をするの?するわけないだろ、バカチンが!闇夜に空切る三角帽子。箒に跨り、flying the sky!お供のコウモリ引き連れて、放つ魔法はビビデバビデブー!黒猫お供に携えた魔法使い!
おいおい、俺たち忘れんな!数の暴力暴飲暴食!映画にゲームに引っ張りだこ!ダンスだって踊れちゃう。ラッタッタ!ラタッタラタッタッ!墓場の下からこんにちわ!ゾンビ!
忘れちゃいけない奴らがいるぞ!神出鬼没のトリックスター!壁抜け床抜け任しとけ!Trick or Treatが似合うのは俺たちだ!ゴースト!
キングオブモンスターはやっぱり私だ!鋭い牙にお供のコウモリ。惚れた美女は数しれず。みんな私に血を吸われ、心も体も私のモノ。夜の帝王バンパイア!
こんなヤツらが住み着いたほーんでっと・きゃっするは、ハロウィンが近づくと日増しに賑やかになり、城内では誰が1番怖いかで大盛り上がり!
ゴーストがうらめしやぁ〜とやったなら、オオカミ男はわぉーんと遠吠え!それに合わせてゾンビが踊れば、フランケンシュタインの怪物も一緒になって踊りだす。半魚人が水芸を披露したかと思えばバンパイアがコウモリを飛ばし、そして魔女がスモーク焚きながら空を舞う。まさにモンスターの共演!こんな恐怖の宴があったことだろうか!
それが日増しに派手になるのでいつしか近隣の村からは「誰もいない城から物音がする」と恐れられるようになりました。なんと恐ろしい!
そんなハロウィンの前日。ほーんてっど・きゃっするに近づく白い影。お化けの格好をしていますが、どこかぎこちない。まるで子供がシーツでも被ってそこに目が見えるように穴を開けた、そんな格好のお化けです。おや?よく見ると足もありますね。
そんなお化けが恐る恐るというように月夜に照らされたほーんてっど・きゃっするを目指して歩いていきます。
ちょっとした異変なんてなんのその。今夜もほーんてっど・きゃっするは大騒ぎが始まろうとしています。お城の大広間には続々とゾンビやゴーストが集まり、半魚人は水芸の仕込みをし、オオカミ男は月を見上げて今にも吠えたくてうずうずしています。
しかし、魔女とフランケンシュタインの怪物、それからバンパイアが現れません。魔女はいつも遠くのお菓子の家から飛んでくるので到着が遅いし、バンパイアも陽の光を怖がってなかなか棺桶から出てこないのでいつも遅れがち。
そんな中、フランケンシュタインの怪物はいつもならもう着いてるはずなのに姿を現しません。しかし、体は大人、頭脳は子供なフランケンシュタインの怪物は森で何かを見つけたりすると遅れたり、現れないのもしばしば。なので特段慌てたり気にもとめないモンスターズでした。
そんなフランケンシュタインの怪物でしたが、やっぱり気になるものを見つけたようです。それは先程のお化けでした。フランケンシュタインの怪物はゴーストが迷子になってると思い、捕まえてそのまま大広間にむかっていきます。捕まったお化けは内心怖くて仕方ありません。しかし、彼が目指していたほーんてっど・きゃっするに向かっていると感じると決心を固めるのでした。
打って変わってここはほーんてっど・きゃっするの大広間。
やっと現れた魔女がバンパイアとフランケンシュタインの怪物がいないけど、今夜も始めるかと咳をひとつし、「オオカミ男!よし!」と合図を送るとわぉーん!としっぽを振って遠吠えを放ちました。するとゴースト達が空を飛びまわり、ゾンビが集団で踊るという怖いのか楽しいのか分からない絵面。そして仕込んでいた水芸を放つ半魚人に仰向けになってしっぽをフリフリしながら魔女にお腹を撫でられてご満悦なオオカミ男。そして夜は更けていきます。
そんなところに現れたのがフランケンシュタインの怪物でした。モンスターズはやっと来たかと思いましたが、途端にオオカミ男がいきり立ちます。フランケンシュタインの怪物が連れてきたお化けに反応したようですが、他のゴースト達は気にしてない様子。
「君も早くこっち来いよ」「楽しくやろうぜ!」などなど呑気に声をかけてきます。
お化けの男の子はガクガク震えます。それが被った布越しにも伝わるのか、布がフラフラしてます。そんな時に我慢ならんと飛び出したのがオオカミ男でした。低く唸った声でお化けに飛びかかったかと思うと、フランケンシュタインの怪物が身を呈してかばいました。だってオオカミ男が友達のゴーストを襲うと思ったから。
さぁここからはもう大変!大広間でフランケンシュタインの怪物とオオカミ男が怪獣大決戦よろしく殴り合いもみ合いへし合い大合戦!それを取り巻くゴーストとゾンビ達!半魚人はここぞとばかりに「怪物に賭けるか!オオカミ男に賭けるか!」と賭博を始めます。そんな中ポツンと残されたお化けの男の子の所に寄ってきたのはゾンビ達でした。
「大丈夫かい?」と声をかけて来ましたがゾンビなので上手く喋れません。しかも男の子は襲われると思ったので身動きが取れません。そしてゾンビが彼の体に触れた途端、その感触に違和感を覚えます。だって普段ゴーストを触ろうとしても触れないんだから!
ここでゾンビもおかしいと思い、掴んだお化けの布を思い切り引き剥がしました。すると中から男の子が出てきました。その手には十字架、それから腰にはニンニクに液体の入った瓶や銀の鉄砲などなど。男の子の顔は今にも泣きそうに引き攣りながら「トリックオアトリート!」と叫んで腰の鉄砲を抜くや否や引き金を引きまくる!
すると中からは銀の弾、ではなく水が出たと思ったら、その水をかぶったゾンビが呻きながら倒れてく。なんと中身は聖水が入った水鉄砲!飛距離は無いが動きの遅いゾンビにやたらめったら撃ちまくるとバシャバシャかかっていく水浸し。そんなゾンビが悲鳴をあげる阿鼻叫喚の地獄絵図。そしてゾンビを心配して寄ってきたゴーストにも聖水がかかるかかる。だからゴーストも悲鳴をあげて飛び回り、消えていく。そんなゾンビが倒れるところにフランケンの怪物に投げられたオオカミ男がストライクよろしく投げられて、ゾンビが弾け飛ぶ!そんなに事故現場を目にして水の入った龜(かめ)に逃げ込む半魚人。そして慌てて飛び出す魔女。しかし慌てて箒で飛んだから窓の縁に頭をぶつけてノックアウト!
さて、龜に逃げ込んだ半魚人。このままやり過ごすつもりが、お化けの男の子が投げた聖水入りの瓶がたまたま龜の中に。
こうなると溜まったもんじゃない半魚人!狭い龜の中で暴れた事で龜が割れて、暴れる半魚人が聖水の混ざった水を撒き散らす。すると男の子の水鉄砲が届かないところにいたゾンビやゴーストも水がかかって大パニック!そんな半魚人が痙攣して泡吹いたところにまたまたオオカミ男が投げられてくる。その半魚人の生臭さに鼻もやられてそのまま気絶。
そんな大広間の騒動に寝坊助バンパイアがやっと現れた!「なんだこれは?」と辺りを見渡すと大広間の真ん中で勝ちポーズをしてるフランケンシュタインの怪物、そして人間の男の子。のびてるオオカミ男に大きなたんこぶ作った魔女、それから泡吹く生臭半魚人。死屍累々の如く倒れるゾンビ達に全く姿の見えないゴースト達。バンパイアはフランケンシュタインの怪物に向かって「お前がやったのか!」と怒りの形相で叱りつけます。それを受けて萎縮するフランケンシュタインの怪物。「怪物よ。お前は下がっていろ。人間の子供に用がある。」と凄まれるとフランケンシュタインの怪物は広間を出ていきました。「子供よ。お前は何しにここに来た。まさか肝試しでもあるまい。」とジリジリと歩み寄ってきます。
「どうした、ここまでの騒動を起こし、我の眠りも妨げた。ここに来て黙りはないだろう。」と冷たい眼差しで見つめられて、蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった男の子。ささやかな抵抗なのは手に持った十字架を向けるくらいでした。
「そんなもの、私に効くわけないだろ。もちろんその腰に下げたニンニクもな。」と不敵に笑います。絶体絶命とはこの事。もう、子供は祈ることしかできませんでした。もう後一歩でバンパイアが自分のところに来る。そう思った時でした。山の向こうから朝日が登り、窓から差す陽の光がバンパイアを照らすのです。すると断末魔の雄叫びをあげてバンパイアは灰になり、風に飛ばされていきました。
後には男の子だけが残り、そしてモンスターズは居なくなったとさ。
最後に
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こちらは朗読用に書いたフリー台本です。
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