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【映画感想文】犯罪都市 THE ROUNDUP

はい、マ・ドンソク主演の韓国映画『犯罪都市』の続編の『犯罪都市 THE ROUNDUP』の感想です。

えー、僕、この映画の前作『犯罪都市』を観てると完全に勘違いしてまして。あのマ・ドンソクがめちゃくちゃ強いヤクザ役やるアレの続編ねと思って観始めたんですが、「あれ?マ・ドンソク警察だな。」、「前作シリアスだった印象があったけどかなりコメディよりに変えたんだな。」とか…。いや、まぁ、そんなわけはなく。僕が観ていたのはマ・ドンソク演じるヤクザの組長が連続殺人鬼を素手でボコボコにする『悪人伝』だったわけです(どちらにしてもマ・ドンソクが異常に強いということでストーリーが展開していくことに変わりはないのですが。)。

ということで、前作をまったく観ずに続編鑑賞ということになったのですが、ストーリー上特に困ることはなかったです(こっちを観たあとに、配信で前作も観たんですが、いくつかのお約束ギャグがあったのを逆パターンで楽しみました。)。基本的にはよくあるというか70年代辺りの刑事モノのパターンで、(前作もそうだったんですが)めちゃくちゃサイコパスな極悪犯罪に刑事が挑むという(しかも前作は実在の事件を元にしてるんですよね。)ものなんですけど、そこに宇宙規模(『エターナルズ』に出演したことでそうなってしまいました。)に強いマ・ドンソクを投入したらどうなるかっていうことをやってるわけです。

で、どうなるもなにもどうやったってマドンソクは殺られるわけはないということが("マ・ドンソクである"ということで)担保されてしまっているわけで。ストーリーの中でも殺られる素振りは微塵もないわけです。この辺りがこの手のマ・ドンソク映画の潔いところですよね。今度の敵はヤバイぞみたいなところをまったく引きに使わない。じゃあ、どこでストーリー的なカタルシスを得るのかというと、とにかく血も涙もない極悪非道な悪役を登場させてコイツの好きなようにさせるんですね。しかも、そうとうサイコで何考えてるか分からない。つまり、行動原理が常人じゃないので、警察側の裏を掛かれて実際に捕まえることがなかなか出来ない。なので、まずは、えー、日本で言えば『闇金ウシジマくん』的なリアルにヤバイやつがやるヤバイことっていうのを見せられるんです。

で、今回の悪役のソン・ソックさん(この人ほんとにめちゃくちゃ悪い顔してるんですけど、普段の写真見たらかなりスッとしたイケメンなんですよね。こういうとこにも韓国映画の凄み感じます。)演じるカン・ヘサンというのがとにかく凄くてですね。金持ちを誘拐する誘拐集団という一応設定はあるんですけど、そんなの関係なく都合悪くなったら殺す、邪魔だなと思ったら殺すっていうね(こんなにわけ分かんないやつじゃ下で使われてるやつも嫌になるだろうなって思ってたらちゃんと謀反されたりして。そこら辺はリアルなんです。)。で、そういうむちゃくちゃな論理で行動するやつをなんとか追い詰めて対峙したところで正義の鉄槌という名の単なる相手を黙らせる為の暴力を振るうわけなんですけど、これがほんとに痛快なんです。要するに話の通じない頭のおかしいやつ黙らせるにはこれしかないでしょっていうことなんですが、そういう暴力に対する世間の嫌悪感も分かってますよって体で一応描いてるんです(マ刑事は暴力を振るう度に一応「あー、やっちゃった…」って顔するんですよ。だから、じつはマ刑事は分かってて暴力を止められないって人で。"正義"とか"〇〇を守る為"とかってことで暴力の持つ暴力性から逃げてないんです。そういう意味ではサイコ犯罪者よりもヤバイんじゃないかって思うんですけど、そこがより痛快だったりするわけなんですよね。)。その為に悪役の極悪さはどんどんインフレを起こしてるんですけど、それでも説得力のあるマ・ドンソクの強さっていうところがね。まぁ、そこに尽きますね。やっぱり(あ、あと、この映画、武器が刃物なんですね。銃はいっさい出て来ません。正直こんだけヤバいことやる裏社会の人間が銃使わないの不自然ではあるんですけど、それよりも人が人の手で人を殺すってことのリアリティはこっちの方がありますから。そういうとこのエグさですよね。あと、悪役のインフレが進んで今後銃を使う犯罪者が出て来た時の対処法とか、そういう今後の展開への伸びしろはありますね。)。

はい、ということで、70年代とか80年代とかにあったゆるい刑事モノ(チョン・イルマン班長との妙なバディ感もいいです。)と『羊たちの沈黙』以降のサイコサスペンスという真逆のジャンルの犯罪モノをマ・ドンソクの人間力だけで繋げるというありそうながら結構アクロバティック(でありながらシリーズモノとしての愛嬌もある。)なアクション映画でした。とにかく暴力が痛快でスッキリするので、あー、なんかいろいろ嫌になっちゃったなって人(つまり、現代日本で生きるほとんど全ての人)におススメです。


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