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記憶の記録:episode 1. SMILY / 大塚愛

懐かしい音楽を聴くと、電子レンジでチンしたみたいに、ほわほわと蘇る思い出や景色がある。いつもは記憶の湖の深いところに眠っているけれど、そうして何かのきっかけで水面まで浮かんでくるということは、きっと何かしらの理由があるんだろう。けれど恐らくはいつかそうした記憶たちも、さらに深く深く沈みこんでしまい、浮かんでくることもなくなってしまうだろうから、思い出せるうちに文字にして残しておこうと思う。

episode 1.  SMILY / 大塚愛

今でもこの曲を聴くと、友人たちとビリヤードをしている光景を思い出す。その理由は至極単純で、初めてこの曲を聴いたとき、私たちはビリヤードをしていたからだ。

2005年、わたしは大学生で、京都に住んでいた。よく一緒に遊んでいたサークルの仲間の間で突然ビリヤードが流行り、講義の後や、河原町あたりで飲んで酔っ払った後ふ連れ立ってビリヤード台のあるお店に行ったりしていた。男の子たちがどんどん上達していく中で、わたしはなかなか狙った通りに球を弾けなくて、それでもなんだか、ビリヤードという大人の遊びをしていることへのわくわく感で、よく一緒についていったものだった。

そんなある日、いつものようにビリヤードをしていた時に、ふいに耳に飛び込んできたのが、店内で流れていた大塚愛のSMILYの歌詞だった。

みんな集まって 
さわいで青春してふざけあって
これほどにない幸せ者になる SMILY

泣きたいところは 1人でも見つけられる
笑って 笑って 君の笑顔が見たい
泣きたいときには そっとそばにいてあげよう
笑って 笑って 君と明日 会いたい

大塚愛の歌はそれまでも好きで、ただどちらかというとバラードが好きで。けれども、はちゃめちゃに明るい声でめためたにシンプルな歌詞で歌うこの歌詞が、その時は、くっきりはっきりと耳に入ってきて、ああ、まさに今この瞬間の気持ちってこれだな、と思ったことを鮮明に覚えている。

大好きな友人たちと、しょうもないこともいっぱいして、くだらないことで泣いたり笑ったりして、青春って感じで、そしてこの時間はきっと、ずっともっと大人になってからも、とてもいとおしく、大切な時間になるんだろうなあと、そんな予感がした。

ただただ夜中まで飲んで次の日ぐったりしていた日も数知れず、きっともっと有意義な時間の過ごし方や、やれることもやるべきこともあっただろうけれど、それでもとにかく、楽しかったあの頃。

あれから16年が経って(そんなに経ったのか!)、東京にいたり関西にいたり、仕事をしたり、家庭を持ったり、親になったり、みんなそれぞれの生活をしているけれど、あの頃一緒にビリヤードをしていたメンバーとは、今でもつながっている。年々会う頻度は減っているけれど、それでもやっぱりつながっている。

そしてラジオやテレビや自分のiPhoneからSMILYが流れると、その瞬間、わたしはあの大学時代のビリヤード場にワープして、ひとり懐かしさを噛みしめながら、みんなに会いたいなあ、なんて思ったりしている。

#音楽 #記憶 #思い出 #エッセイ  


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