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新卒1年目|IPO体験記②~IPO支援の内容~

こんにちは、1年目のUです。全3回に渡ってお届けさせていただくIPO体験記、今回は②をお届けさせていただきます!(【①そもそもIPOとは何か】はこちら

今回は私が実際にやっている支援内容も含めたお話を紹介させていただきます。ぜひご覧ください!


2.IPO支援の内容

前回投稿した【①そもそもIPOとは何かでIPOの概要はザックリと掴んでいただけたと思うので、今回は私が実際にやっていることも交えてIPO支援の実務の内容についての説明をさせていただきます。

 IPO支援の大変なポイント

実際にIPOに取り組んで知ったことは、本当に大変なタスクが山のようにあるということです…。

主幹事証券審査部および証券取引所による厳正な審査をクリアするためには『上場企業としてあるべき体制』を整える必要があるのですが、その過程がとても険しいです。
そもそも『上場企業のあるべき体制』とは何か、という感じですよね。その内容は日本取引所グループから公開されている「上場審査基準」、「新規上場ガイドブック」、「有価証券上場規程」等に記載されているのですが、審査項目の範囲はとても広く且つ量は膨大であり、加えて求められる内容はハイレベルという高いハードルばかりが並んでいる状況です。
 
そんな高い審査ハードルを越えることを求められるのがIPOですが、IPOを目指す企業は基本、成長フェーズにある企業のため本業のビジネスがとても忙しいという現実があります。その結果、上場準備を進めることができる人的リソースが限られる状況になるため、IPO準備は外部の専門家にサポートを依頼するケースが多く見られます。

また依頼する外部の専門家は1つの会社にお願いするわけではありません。お伝えした通り審査項目が多いため各分野の専門家に依頼する形になります。ちなみに私が関与しているクライアントでは上場準備室が6つの分野別チームに分かれており、それぞれのチームが別のコンサルティング会社と契約をしています。

<上場準備室のチームの例>
・Ⅰの部、Ⅱの部の作成
・人事労務
・財務諸表作成
・J-SOX対応
・コーポレートガバナンス・コード対応 など…

このように、『IPO支援』と一言でいっても対応する幅はとても広いです。現在、私は「コーポレートガバナンス・コード対応」と、これら分科会をまとめる「PMO」の分野を担当しています。

では次にIPO支援の具体的な内容として「コーポレートガバナンス・コード対応」について詳しく説明していきます。
※他の支援内容が聞きたい方はぜひインターンや会社説明会にお越しください!


▶コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンス・コードとは、一言で表すと『優れた企業統治を実現するためのあるべき企業像』のようなものです。
 
詳しく説明すると、日本証券所グループはコーポレートガバナンスを『会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み』と定義し、コーポレートガバナンス・コードは、「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」とされています。
つまり、企業が中長期的な成長を実現するためには、あらゆるステークホルダー(利害関係者)と健全な関係を構築・維持し、清く正しく・スピーディーで・大胆な決断をする必要があり、それを可能にする体制を構築するヒントとなるのがコーポレートガバナンス・コードという具合です。


▶コーポレートガバナンス・コードの特徴・難点

①抽象度・自由度の高さ
各コードの内容は「プリンシプル・ベース(原則主義)」で書かれ、抽象的なあるべき姿について記載されています。
したがって、コードが提示する「あるべき姿」を実現するための具体的な制度・取組は各企業が独自に考えなければなりません。
IPOを目指すほとんどの企業はそれまで「収益性」ばかりに注目してきているため、コーポレートガバナンスと言われても何をすればいいのか分かりません。いざ取り掛かろうとコーポレートガバナンス・コードを読んでみても、抽象度・自由度が高すぎて結局何をすれば良いか分からないのです。
 
②対応すべき事項の多さ・厳しさ
コーポレートガバナンス・コードは5つの基本原則と、それをより具体的に記述した31の原則、さらにそれを具体化した47の補充原則で構成されています。(計83コード)
証券取引所は、プライム市場・スタンダード市場に属する企業に対しては、この83原則すべてを順守するか、遵守しない場合にはその理由を説明することを求めています。(いわゆるComply or Explain)
また、上場審査の際に『コーポレートガバナンス報告書』という書類(ドラフト)を証券取引所に提出する必要があり、それをもとに企業が各コードに対してどのように考え・取り組んでいるかを審査します。
このように83にも及ぶ高難易度の項目を企業は対応することが求められます。


▶コーポレートガバナンス・コード対応の具体的なフロー

ここまで専門的な内容を細かく述べて来ましたが、コーポレートガバナンス・コード対応のフロー自体は他の支援と大きく変わりません。
コードは「あるべき(To-Be)」を提示したものであり、企業はできる限りそこに近づいていくために現状の課題を潰していく。まさに皆さんがイメージするコンサルのビジネスモデルそのものです。
 
①Fit&Gap分析
第一に、「スタート」と「ゴール」を明確にして距離を測ります。
具体的には、「証券取引所はどのような審査方法を用いて審査し、どのくらいの水準を合格とするのか」という実務的な観点から、抽象的に書かれた各コードを具体化していきます。
 
例えば、補充原則1-1①は「取締役会は、株主総会で相当数の反対票があった議案について、反対の理由や反対票が多くなった原因を分析すること」を求めています。これに対応するためには、まず「相当数」の定義を明確にすることが必要となります。
相当数の定義について、実務的によく基準とされるのは、この補充原則のもとになった英国のコーポレートガバナンス・コードで定められる「20%」という数値です。

次に、「分析」では具体的にどのくらいのレベル感を求められているのかを考えます。5W1Hを用いて、

誰が=取締役会
いつ・どこで=株主総会終了後の最初の取締役会
どのように=報告させる・審議する

といった具合に具体化していきます。
 
以上のように、ゴールを明確化できたら次に、「スタート」を明確化します。各コードについて、現状ではどのような取組を行っているか、ありのままの状態を整理していきます。実務上は、まず会社のガバナンスを良く知る人(時には取締役・監査役)に対してヒアリングを行い、ざっくりとしたイメージを掴みます。その後、各種規程を確認したり、議事録を閲覧したりしてより詳細な情報を収集し整理していきます。

そうして集めた情報をもとに、各コードへの対応状況を明確化していきます。このようにして、「スタート」と「ゴール」が明確できれば自ずと「現状と理想のギャップ」つまりは課題が明確になってきます。
 
②ロードマップ作成
第二に、課題を解決するための施策と課題解決までのタイムラインを引いていきます。
具体的な施策は様々ですが、そもそも各コードに対して「ComplyするのかExplainするのか」という方針から決定していきます。その際、上場企業全社の各コードに対するコンプライ率などが参考になります。そして、Complyすると決めたコードには具体的な打ち手を決定していきます。

打ち手が決まれば、それに係る工数を見積り、いつから対応を初めていつまでに完了するのかをスケジューリングしていきます。
 
③解決策の実行(体制整備)
コンサルティングファームのIPO支援は『②ロードマップ作成』までが支援のスコープのケースが多いですが、エスネットワークスは違います。なぜなら、どんなに理想的な施策・手順を描いても、それを実現するのは容易ではないからです。

IPO支援を実際にやってみて知ったことは、教科書通りにはいかないということです。教科書では見えない、様々な登場人物のコントロールが非常に難しいことを知りました。
コーポレートガバナンス・コードの主な登場人物は、取締役や監査役、執行役といったハイレベルな層ですが、多忙であったり自社の事業に意識が集中していたりするので、第三者である私が上位者の意志決定や行動を促すのはとても難易度が高いです。
 
よってどんなに美しいロードマップを描けたとしても、手順通りに進まないことの方が多く、予定通り進まなければどんなに素晴らしい提案書もただの絵に描いた餅になってしまいます。

そうならないためにエスネットワークスは創業以来『常駐』スタイルを基本とし、クライアントの深くへ入り込むことを得意とするコンサルティングをしています。その結果、重要人物の意思決定や行動を促すことができ、当初描いていたロードマップの実現に繋げることができています。


ここまでが具体的なIPO支援のご紹介でした。ただ今回ご紹介した内容はほんの一例になるので興味がある方はより深く調べていただけると幸いです!

何度もお伝えしたことですが、IPOにおけるタスクは幅が広く数は膨大です。他にも事業計画の策定やJ-SOX対応、連結決算体制の整備、各種申請書類の作成支援などなど、本当に多岐に渡る支援内容が存在しています。
間違いなく大変な業務ではありますが、担当する企業のことを深く理解できますし非常にやりがいのある内容であると思います。

次回は③IPO実務の面白さ】についてお届けさせていただきます。ぜひご覧ください!


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