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【コラム】社会制度に翻弄された人類を、逆の側から見るとわかること #036

サピエンス全史では、人が小麦の栽培を発展させて世界中に広めたことを、小麦の立場から見て「人を使って繁殖に成功した」という趣旨のことが書かれている。
同じような視点で階級制度と職業について書いてみる、と、見えてくることがある。


■階級制度と職業はどのようにして生まれたか


階級は主に社会で用いられ、職業は経済で用いられる。

階級制度が生まれた最初は、人が集まって集団でやっていくときだろう。猿山のボスのイメージ通りでいいと思う。強い者が弱いものを率い、強いものが取り分が多く偉い。
文明が進化してくると、王族(もともとは猿山のボス)、平民、奴隷ができた。王族構成は貴族制度や領主という考え方にも繋がり、平民の身分は職業で区分されるようにもなった。
農民がベースで生産物を流通させる商人が現れる。すると市が立って関係する様々な職業が生まれた。人が集まれば飲食店や売春が必要とされた。さらに文明が進むと、家を建てたり治水する土木建築が発達し上下水道なども設置される。戦争なり流通なりで移動が必要になるので、船が開発されて船乗りという職業が生まれる。
無作為に好き勝手すると問題が起こるから、政治家という種類の人がルールを定めたり、ルールを守らない者を取り締まる警察のようなものも必要になる。裁判をする者、税を徴収する者、土地を測量する者など多種多様な役割が生まれた。

言い出すとキリがないが、こうして階層階級と職業が決まるべく決まり、生まれるべく生まれ、社会は発展して人々は徐々に暮らしやすくなった。


■睡眠はなんのためにあるのか?


長らく睡眠は「脳を休める」ために行われると言われてきた。でなければ生存競争の中で無防備に攻撃を受ける状態を取ることの説明がつかないからだ。
脳を発達させて生存競争を有利にしたが、同時に脳を休める必要が出て睡眠という無防備状態も獲得した、などと言われている。
しかし2017年に発表された研究結果では、脳を持たない生物が睡眠をすることを確認したことが報告されている。
ではなんのために睡眠が存在するのか?

この研究結果から導き出された仮説はこうだ。
「睡眠が常態であり、覚醒が異常事態なのではないか?」

まだ仮説の域を出ないが、逆側から考えることで見えてくることというのはある。この仮説が本当だと仮定すると、好物や植物から単細胞生物、もう少し複雑な有機物、脊椎動物と進化してきたことの流れも辻褄が合う。
系統樹が上に向かえば向かうほど、生物は意識分量が多くなり無意識の支配から逃れ始める。
睡眠とは完全無意識状態で、極論すれば植物と変わらない。生きてはいるが意識的に行動することができない。

「小麦が人間を利用して世界中に繁殖を可能にした」ようなことと、似たようなことが起こっていると仮定することはあながち間違いではないのかもしれない。


■身分制度、階級社会と職業は「そもそも人がそうであるからカテゴライズされた」


「トップの資質」という考え方は古代中国でもルネッサンスのイタリアでも書物として発行されている。もちろん現代以前に多種様々ある。古代ローマには「奴隷の扱い方」という教科書があった。

考えてみてほしいが、いくら社会に必要性があるとはいえ『その必要性に応えられる能力を誰も持っていない』のであれば、そのような階級や職業は成り立たない。
機能的には成り立つとしても、例えば最古の職業と言われている売春婦は女性なら機能として成り立たせることはできる。しかし精神的に思考的に、誰一人としてそういうことはしない・・・しか答えが成り立たなければ、その職業は成り立たない。つまり存在のしようがない。

であれば、機能がなければ問題外なのはもちろん、機能性があるとしても精神的に、思考的に、あるいは意欲や好み的に「おお、それはなかなかいいぞ。自分に合っているような気がする。ひとつやってみようか」という個性のベクトルが向いている人が事実一定数いるから階級や職業として生まれ成り立ったと考えることはできる。

社会の側から見るとそうではない。必要性によって生まれたと主張する。だが厳密にはこれは少し違う。
社会の側の必要性は、システムを回す必要に迫られているので強制的にその階級なり職業を強要するところにある。
貧しければ選べない。ごちゃごちゃ言っていないで生きていくために望まない仕事をする必要もあるだろう。システムを回すには個人の言い分など聞いていると混乱の元になる。だからもっとわかりやすく「生まれた家の身分と職業が君の身分と職業」と決めつけてしまい、守らせる。その方が社会は問題なく回るからだ。

つまり向いていないことを強要されるため、合わない身分や仕事に翻弄される人が出る。仮に全員合っていれば問題などでない。
合っていないことによる問題が拡張すれば、長い時間をかけて身分制度や職業はなくなることもある。代表的なものは奴隷と宦官と貴族で、現代ではほぼ形として残っていない。

社会的には古く差別的でいけないことだったなどとされるが、排除された理由は社会の形態が変わったことに対して不都合になったからで、そういう性質の人がいなくなったからではない
そもそもその身分階級なり職業が生まれるということは、それが個性として向いている人が一定数ちゃんといるからだ。ならその身分や階級がなくなっても、個性を持った個人は現代でもちゃんと存在する。


■少子化を止めることは不可能


と聞いて、差別だ封建復古だと思ってしまうのは現代の常識に照らし合わせるからだ。そのイメージは常に悪いもので、なぜ悪いかというと現代社会の運営の脚を引っ張る悪者の位置付けとして作り上げ、不要になるように仕向けたからで、そもそもその性質に向いている人たちは居場所がなくなったことにより、むしろアイデンティティに悩むことになったりする。

貴族に向いている性質や、奴隷に向いている性質や、宦官に向いている人は、現代では「普通に普通の人として適応しなさいね」という大海原に放り込まれる。日本で育った日本文化を愛する人が、明日からザンビアに住んで一生暮らしなさいねとされるようなものだ。

奴隷の資質というと、卑屈や差別を思い浮かべるのは脳が侵食されているからだ。誰かに忠誠を誓い、仕え、体と命を張って主人のために尽くそうと考える個性の持ち主は現にいる。しかも少なくない数いる。
不要になった制度を、制度を扱う側が悪だと決めつけても、個人の資質は純粋に存在する。

このことから考えて、個性のあり方として色濃く性質が反映されたものこそが、身分や職業として生み出されたといえる。
そういう人がいるから、そのシステムができた。
そういう人がいなければ、システムはできない。
しかもシステムになり得るぐらい一定の数、属性が一致する人がいるからシステムになり得ると考えることもできるのだ。
憎むべきはその運用が「合っていない人を強要すること」や「差別を生み出すことで」もともとの資質そのものに貴賎はない

結婚もそうだ。制度がなくても男女は結びつく。
ならなぜ結婚があるのか。長らく歴史は貧困と経済「非」発展の状態にあった。学はなく自然の脅威で食糧難に陥りやすかった。
こういう背景の中では日々生きるのが精一杯で、来年なんとか生き延びるために何をすればいいか?と為政者も考える必要がある。階級社会を作れば個人は犠牲になっても社会が回るように、出産を効果的に行い5人に2人が成人するシステムを作ることができれば、20年後には労働力を確保できる。
結婚システムはこうして作られた。

そして現代でもこの背景は残っている。
多くの人は結婚したくてするのではなく、結婚するものだからする。結婚しなければ少なからず「自分には問題があるのかもしれない?」などと『潜在的に思わされている』のはこの影響をモロに受けているからだ。
少し考えればこの制度と個性は何の関係もないことがわかる。
結婚しなくても男女が共になることは自然界では当たり前のことだから、その純粋な欲求ではないことがわかるだろうか。

この意味で少子化は決して解決しない。
生産体制が安泰なのに子供を増やす理由が「自然に考えて」ない。
結婚制度がいくら当たり前でも、そのデメリットが目につき、結婚や出産しない方に利益があればそうする人口が増えるのは当たり前だ。離婚率が上がることにも同じことが言える。
そもそも「その制度は自分には合っていません」という人が、我々が思っている以上に多くいるのだ。強要されている分、そうしなくていいなら減るのは当然の結末だ。だから未婚率の上昇、離婚率の上昇、子供を持たない家庭などは一定の自然な%に落ち着くまで止まらない。(正確にはそれでもシステムの抑止力が働くので自然な%までは至らない)


話が逸れたが、まとめると


個性に従って社会性も生まれているということ。
なのにも関わらず、いちど社会性が優位になると個性は殺される方向に働く。
社会が安定したり、経済が上がると「これ以上社会性を向上させる」ために個性を殺す必要がなくなるので、相対的に個性復帰の状態になる。(北欧が顕著)
するとこれまで強要していた社会システムの一部は崩れ始める。奴隷や貴族や宦官が崩れたのも同じ理由。
しかし制度が崩れても、職業が消えても、そうである個性を持つ人は消えない。むしろ一定%が維持されて残る。
残った人は新しい社会制度の中に、自分がマッチできる別の階級なり職業を探す必要に迫られる。また新しい社会の倫理に反しているだとか、間違っていると決めつけられ自己否定に走るようなことも実際起こる。



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