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第5回「商品・サービス開発プロジェクト」レポート

「これからの地域を支えるデザイン経営」を本気で学ぶ場所として、2023年にスタートした越前鯖江デザイン経営スクール。2024年1月13日(土)、14日(日)に5回目となる「商品・サービス開発プロジェクト」が開催されました。

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3月の最終発表会まで残り2ヶ月。プロジェクトをまとめる時期に入りました。4チームそれぞれがプレゼン資料を作成し、講師陣からアドバイスをもらいます。また、1月13日(土)には第4回「これからの価値づくりセミナー」を同時開催。トーキョーコーヒー代表の吉田田タカシさんに講演いただきました。


4チームの進捗と講師によるフィードバック

雪の降るなか、会場に集まったプロジェクトメンバーたち。前回の現地プロジェクトから約1ヶ月間、現地やオンラインでの打ち合わせを重ねた4チームはそれぞれどのように変化したのでしょうか。

小柳箪笥店チーム

「百年箪笥研究所」の立ち上げを構想する小柳箪笥店チーム。越前箪笥の魅力を伝え、小柳箪笥店の売上をアップするために、以下の3点に取り組みたいと考えています。

SNS・ホームページの更新
現在のホームページは、小柳箪笥kicoruの2つ。Instagramは、5代目の勇貴さんが個人アカウントで発信しているものの、小柳箪笥店の公式アカウントは更新が止まったまま。チームメンバーが更新をサポートし、自社ブランドのkicoruやOYANAGIの魅力を発信できる体制を作ります。

カタログ・パンフレットの制作
小柳さんにヒアリングするなかで、展示会などで配る商品カタログがないことが判明。展示会や催事では小柳箪笥店が得意とする大型家具が持ち込みにくいため、カタログやパンフレットといった販促ツールを制作することで、小柳箪笥店の収益アップに繋げたいという考えです。

ZINEの制作
ものづくりやインテリアが好きな人が箪笥に興味を持ち、「百年箪笥研究所」に関わるきっかけとなる冊子を作りたいと考えました。美大、うるしの里会館など、置いてもらう場所をチーム内で検討。プロジェクト中にZINEのレイアウトを作成し、フォーマットを作るのが目標です。

講師陣からは、「ZINEは公共施設よりも書店やZINEショップに置くといいかも。箪笥らしさが伝わるZINEを考えてみては」「冊子制作がただのクライアントワークでおわらないために、小柳箪笥に人が集まって一緒に作る仕かけを考えては」という意見が出ました。

百年箪笥研究所という壮大なプロジェクトにどんな仲間を巻き込めるか。残り2ヶ月での取り組みに期待したいですね。

越前セラミカチーム

越前瓦の新しい景色をつくる」というテーマを掲げた越前セラミカチーム。瓦技術を活かしたベンチやインテリアアイテム、リサイクル素材の瓦の開発を進めます。

瓦チップを原料に混ぜ込んだベンチ

試作中のベンチを見るため、越前セラミカの工場を訪問しました。素材感がより伝わるように、瓦チップの量を調整したり側面に瓦を貼ったりなど、デザイン面での工夫が必要という話に。また、近隣自治体への瓦ベンチのニーズ調査も行いました。

ataWでインテリアアイテムの相談中

チームメンバーの牛島さんが設計したインテリアアイテムは、ペンや本立て、まな板立ての3パターンの使い方ができ、建材としても使えるデザインに。また、越前市のセレクトショップataWを訪問し、インテリアについてアドバイスをもらいました。

会場に戻ってプレゼンの構成やスケジュールを検討します。講師陣からは「瓦を回収してからベンチにするまでのストーリーを見せてはどうか」などのアドバイスが。地域の人々に「瓦のある景色」に気づいてもらうためのプロダクトを作ることで、越前瓦の風景を守っていきます。

沢正眼鏡チーム

新メンバーに加わった平田藍莉さん

デザイナーの平田さんが新メンバーに加わった沢正眼鏡チーム。これまでの1ヶ月間で、Googleマップの会社住所の更新、SNSアカウントの作成、空き家の見学・実測、社長へのプレゼンを行いました。会社の改善案をまとめた「コツコツ100」のシートには、60個もの改善案が集まっています。

1月の現地プログラムでは、求人票の作成に向けて雇用条件の設定を行ったほか、最終発表会に向けて展示イメージの検討を行いました。最終発表会では、200以上ある眼鏡の製造工程の一部や、改修予定の空き家の設計図を展示したりする予定です。

チームメンバーのがんばりを受け、会社や産地を変えたいという強い思いが芽生えた澤田専務。「こんなものだろうと現状維持していたことについて、改善すべきという意見をチームメンバーからたくさんもらいました。Googleマップの会社住所を修正する、駐車場のコンクリートの傷みを直すなど小さなことからですが、会社や地域を変えていきます」

講師陣からは、「産地の理想像をビジュアルでわかりやすく表現した上で、コツコツ100や住宅提供などの取り組みを連動させてはどうか」といったアドバイスが。

沢正眼鏡チームの目指すゴールは、事業継承と担い手づくり。多様な住居と働き方を提供することで実現します。最終発表会では沢正眼鏡オリジナルの眼鏡を着けてプレゼンするとのことで、当日が楽しみです。

曽明漆器店チーム

つくり、つたえ、つなぐ」というビジョンを掲げ、12月に一期一会マーケットを開催した曽明漆器店チーム。来場者が商品を購入してくれた理由を調査すると、漆器への様々なニーズが見つかりました。2月には、漆器倉庫を舞台に2回目となる一期一会マーケットを開催します。

一期一会マーケットはプロジェクト終了後も継続予定で、産地の職人さんや他業界とのコラボも検討中です。3代目の曽明富代さんは「漆器の成り立ちやストーリーを展示し、生い立ち〜使われ方〜修理まで、漆器の物語を買っていただけるマーケットにしたい」と考えています。

また、ターゲット設定については「漆器を売っているお店(中川政七商店、無印良品、あこめや など)をリサーチし、どのお店に置きたいかを考えることで購入層がイメージしやすいです。漆器が載っている雑誌もいいですね」と講師陣からわかりやすいアドバイスが。

「『漆器といえば曽明漆器店』と思ってくれる人が増えてくれたらうれしいです。興味を持ってくれた人への長期的なアプローチやアフターケアを考えたい」と4代目の曽明晴奈さん。曽明漆器店は、産地のNew問屋として、越前漆器への入口をつくり、産地の中と外のつなぎ手になることを目指します。

残りの期間では、マーケット準備と並行してプロジェクトで取り組んできた内容を展示やプレゼン資料にまとめます。

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吉田田タカシさんによるセミナーやチームディスカッションなど、今月も学びの多い現地プロジェクトとなりました。次回の現地プロジェクトでは、3月の最終発表会に向けた最終調整を行います。残り2ヶ月を切り、ますます加速する4チームから目が離せません!

(文:ふるかわともか)

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