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【3次元の世界へ】目には見えない立体構造を復元する技術

以前、新企画のプロローグとして、3次元構造を調べる技術をいくつか簡単に紹介しました。

3次元構造を調べる技術はすでに医療現場をはじめ、産業領域にも利用されているわけですが、科学者たちの探究は終わりません。

なぜなら、現在主に使われている方法は、目で見えるぐらいのサイズのものしか観察することができないからです。

ということで今回は、私たちの目には見えないほど小さなものの3次元構造を調べる方法について紹介したいと思います。


共焦点顕微鏡

おそらく最も有名な技術の1つでしょう。光学顕微鏡の技術を進化させて、3次元の構造を復元する技術が共焦点顕微鏡です。

顕微鏡観察の上で、焦点というのは非常に重要で、レンズからの距離がちょうどいいときれいな画像になり、悪いとボケてしまいます。

この特徴を利用すると、きれいに映っている画像とレンズからの距離の関係がわかります。きれいに映ったものを積層していくと、それは3次元の構造を復元することになるわけです。

画像1

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0963996919304004より引用

弱点としては、光が透過しない不透明なものや、可視光では見えないナノスケールのものを観察するのが難しいというところがあります。


FIB-SEM

知らない人からしたらまるで暗号でしょう。正しくは集束イオンビームー走査型電子顕微鏡です。

集束イオンビーム(Focused Ion Beam)はイオンのビームを集めて(集束させて)サンプルに当てることで、サンプル表面を加工する技術です。

この技術は主にナノスケールの構造を削り出すために使われるのですが、この技術と電子顕微鏡技術を組み合わせて3次元を復元します。

走査型電子顕微鏡(SEM)についてはこちら

SEMはナノスケールの表面構造を観察することに優れていまが、当然表面しか見れないので内部までは調べることはできません。そこでFIBというビームを使って表面を削ります。

観察する→削る→観察する→…を繰り返すことで表面の情報を順々に取得していきます。最終的に撮影した画像をつなぎ合わせることで、3次元の構造を明らかにすることができます。

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Two-Stage Alignment of FIB-SEM Images of Rock Samplesより引用

弱点としては、電子顕微鏡なので真空中でしか観察できないというところと、表面を削っていくのでサンプルは最終的には破壊されてしまうという点です。


電子線トモグラフィー

こちらはおそらくナノ界隈では最も有名な透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた3次元再構成技術です。TEMというのは、SEMとは異なり、サンプルに電子を透過させて、できた影を観察する方法です。※

TEMは原子まで見ることができる非常に強力な手法で、この手法を用いて非常に小さなサンプルの内部まで3次元に復元できるんです。

当然、ただ撮影しただけでは2次元の絵が見れるだけです。ただ、この方法ではFIB-SEMとは異なりサンプルを削っていくわけではなく、サンプルを回転させていろんな角度から撮影していきます。

いろいろな方向から撮った写真を計算機に入れてやると、2次元の画像データから3次元構造を復元することができます。画像を撮る原理は異なりますが、360°いろんな方向から画像を取得するという点は、以前紹介したX線CTと同じです。

画像3

Atomic electron tomography: 3D structures without crystalsより引用

弱点としては電子を透過させて、観察する手法なので電子が透過しないほど分厚いサンプルを見ることはできないという点です。小さいものを見ることに特化した方法って感じですね。

最後に

今回は、小さなものを見るための3次元再構成技術について紹介してみました。

世界の研究者たちは、こんな技術を利用して小さな物質の3次元構造を明らかにしているんですね。○○の構造が明らかになったよ、なんていうニュースの背景にはこんな技術があるのかもしれません。

※実際は回折という現象を利用しているので影絵ではないんですが、出てきた影を上手に処理することで画像を見る技術です。

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