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歯も結晶でできている:カギを握るのはタンパク質

私たちが毎日使う歯は健康と直結するとっても大事な部位ですね。

以前、骨も結晶だよという話をしましたが、私たちの歯もまた骨とよく似た結晶でできています。

今回紹介するのは、歯を形成するタンパク質の役割について詳しく調べたというお話です。


歯も結晶できている

歯も骨と同様にヒドロキシアパタイトという結晶でできています。
この結晶が微量にフッ素を取り込んだりできるので、フッ素が良い!みたいな宣伝がよくあるわけです。変なものに騙されないように気を付けましょう

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%AFより引用

主にエナメル質とか象牙質という部分が、結晶できており生物学や医学の専門家だけでなく、結晶成長の専門家もまた歯の研究を精力的に行っているんです!


カギを握るのはタンパク質

そもそもどうやって歯が形成されるのでしょうか?
生物学・医学的な観点はよくわかりませんが、ここでは物質的な視点から見てみます。

体の一部から硬い歯(結晶)が生み出されるというのが不思議ですよね。実は歯の生成(結晶成長)には、あるタンパク質が関係しています

これが今回紹介する研究の肝になるアメロゲニンとエナメリンというタンパク質です。

この2つのタンパク質が歯(ヒドロキシアパタイト)の成分であるリン酸イオンやカルシウムイオンがあるところにあると、歯を作り出します。


タンパク質による歯の成長

タンパク質であるエナメリンとアメロゲニンが同時に存在すると、結晶ではないアモルファスのリン酸カルシウムを作り出し、その後アモルファス粒子周辺から結晶化が起こります。

簡単に言うと2つのタンパク質の協力関係で歯の原料成分をテキトーに集めてきて、その後原子が規則正しく並んで結晶になります。

しかし、これまでいくつかわからないことがありました。
というのも、アメロゲニンに対するエナメリンの割合が大きくなると、歯の形成が遅くなることが分かったのです。

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参考文献より引用(エナメリン割合が増えすぎると結晶核形成頻度が下がる)

この現象について調べたのが今回の論文のお話で、どうやらタンパク質はたくさんあればいいわけではなくて、適量でなければいけないことがわかりました。

この実験では基板の表面にタンパク質と原料を混ぜて人工的に歯を作っているのですが、タンパク質のエナメリンが多くなると、エナメリン同士が凝集して効果が悪くなることが分かったのです

すなわち、私たちの体の中では、このようなタンパク質の複雑なふるまいがとても重要だということが再確認されました。


最後に

それにしてもタンパク質のふるまいって複雑ですよね。
天然のナノマシンとも呼ばれるような精密な働きをするタンパク質の研究は今後も熱い分野だと思います。

参考文献

Jinhui Tao, Andreas Fijneman, Jiaqi Wan, Saumya Prajapati, Kaushik Mukherjee, Alejandro Fernandez-Martinez, Janet Moradian-Oldak and James J. De Yoreo, Control of Calcium Phosphate Nucleation and Transformation through Interactions of Enamelin and Amelogenin Exhibits the “Goldilocks Effect”, Cryst. Growth Des. 2018, 18, 7391−7400

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