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なぜ私たちは無線通信できるのか?変調の集大成OFDMとは

私たちにとってデータの送受信はボタン一つでできてしまいますが、その裏では非常に高度なテクノロジーが動いています。

今回は普段絶対に気にしないけれど、現代社会の生活を強く支えてくれているデータ送受信の多重化方式と呼ばれるものを掘り下げてみてみたいと思います。

それでは一緒に見ていきましょう。

多重化方式とは

これまで何度かデータの送受信については紹介してきましたが、効率的に情報伝達を行う手段の1つとして多重化方式と呼ばれるものがあります。

データの送受信において制御できるパラメータとして3つの軸があります。それが周波数、時間、符号です。これらの情報を適切に制御することで、情報を分割して相手先に届けることができるようです。

TDMA:時分割多重

TDMA(時分割多重)ではその名の通り、時間で情報を分割します。

実際には同じタイミングでデータ送信を行っているわけではないようですが、非常に短い時間の間にデータを転送するため、あたかも同時に送信しているように見えます。

wikipediaより引用

送信側もタイミングがずれて届けばどの情報がどこからどう来ているのかを判断できるということですね。

CDMA:符号分割多重

CDMA(符号分割多重)では、スペクトル拡散符号と呼ばれるものを使って符号情報を変換します。正確な表現かはわかりませんが、フィルターのようなものを使って情報を互いに混ざらないように変換しているようなイメージです。

wikipediaより引用

異なるフィルターを通って変換された情報はお互い同じ時間・同じ周波数領域にあっても混ざることなく通信することができるというわけですね。

FDMA:周波数分割多重

FDMA(周波数分割多重)はその名の通り周波数を分割します。

これまでも何度が登場しているように、データ送信に使用する周波数領域を変えることで、情報を混ぜずに目的地へ送ることができるわけです。
そしてこの考え方をさらにパワーアップしたものがこの後紹介するOFDMと呼ばれる手法です。

wikipediaより引用

OFDM:直交周波数分割多重

なんだか非常にわかりにくい名前をしていますが、簡単には単純に周波数を分割しているFDMAの仲間と思えば大丈夫です。

ただ、気になるのがFDMAとの違いですよね。

まずFDMAの場合は周波数で分割するとき、間を少し開けておかなければなりません。つまり使えない周波数が少しだけ出てきます。これって勿体ないですよね。

それじゃあ、余すことなく周波数を使うにはどうしたらいいのかと研究者たちは考えたわけです。

そこで登場するのが、頭文字Oが意味する直交というキーワードなんです。この直交というのは数学的な表現なんですが、もう少しわかりやすいように具体的な例を出しましょう。

データの送受信に使う電磁波の話を考えます。電磁波も然り、波というのは不思議なもので、普通は2つの波がぶつかると何かしら影響を及ぼしあうんですが、ある特定の条件を満たすときには互いに影響しないことがあります。このような2つの波を数学的に表現すると直交しているというわけです。

つまり、データ情報を持っている電磁波がいくつあっても、互いに影響しなければ、ノイズにも混線にもなりません。そのような電磁波を適切に用意してやれば、使用する周波数帯の間を空ける必要もなくなります。

このように工夫された方法がOFDMというわけです。

具体的な処理のためには数学を知っていなければなりません。OFDM、フーリエ変換とか調べると学術的な記事がたくさん出てきます。理系の方は是非見てみるとここよりも正しい意味でOFDMを学べるはずです。

アナログ変調からOFDMまで

ちなみに、OFDMはこれまで登場した無線技術と密接に関係しています。あんまり関係なかったように見えるという方もいるかもしれませんが、もう少しお付き合いください。

これまではラジオ放送から始まり、デジタル無線通信の基礎技術となったQAMまで紹介してきましたね。

流れとしては振幅を利用したAMと位相を利用したPMというアナログ変調から、ASKとPSKというデジタル変調が誕生しました。

PSKでは一度に送れる情報に限界があったため、ASKをエッセンスとして追加して、振幅と位相の2つを制御してより情報をたくさん送れるAPSKとなりました。そして、APSKの形状を少し変えて格子状にしたのがQAMでしたね。

ここでお気づきかわかりませんが、FMはどこに行ったんだ? という点です。電波として使えるパラメータは振幅、周波数、位相であったはずなのに、QAMでは周波数は仕事をしていないように思えます。

そうです。ここで周波数の違いというのが登場して、導入されたものがOFDMともいえるわけです。周波数は直交化という波に特有の性質を用いて、重なっていても互いに影響しないという状態を作り出すことができます。

はじめはAM, FM, PMの3種類だった方法が気づけば、デジタルになり、合体し、さらに直交化して重ね合わせることで高度な情報通信技術となったわけですね。

最後に

今回はデータ送信技術には欠かせない多重化方式について紹介しました。
具体的な原理は数学と信号処理を駆使しなければならない非常に難しいものですが、ざっくりと雰囲気を理解するだけでも大変学びになると思います。

生活していると全く気にすることがありませんが、これらの技術が無線通信に使われていると思うと技術者たちの頑張りに感心しますよね。

参考


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