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無線通信の進化を探る:APSKとQAMの驚きの技術

情報化社会である現代において無線による大容量通信は私たちの生活にとって欠かせない技術になりました。

それに伴い、無線通信技術の発展も進んでいます。身近なところではラジオ放送で使われていた無線から始まり、現代のWiFiまで脈々と技術は進化してきました。今回はその続きの紹介となります。

ここまでAM, FM, PMといったアナログ変調から、ASK, FSK, PSKというデジタル変調まで見てきましたね。

アナログ変調はラジオなどに使われる音声信号を電波に変える方法、デジタル変調はコンピュータが扱う01情報を電波で表現する方法でしたね。
ここからは、まさに現在のデジタル無線通信の基礎となるAPSKを見ていきたいと思います。

PSKの振り返り

まず前回のPSKがとても重要になるので、もう一度振り返って、さらに少し深堀っていきましょう。

PSKはその名の通り位相(Phase)が異なる電波を使用することで01を表現する方法でした。位相というのは電波が届くタイミングのことでしたね。
このとき、もう少し考える必要があるのは01のデジタル信号の表現方法です。

デジタル信号というのは01を使って記述するのは間違いないのですが、0 or 1かというとそうでもありません。というのも、例えば01を組み合わせた状態を1つの状態と考えれば、00, 01, 10, 11の4つの状態を表現することも可能なんです。

わかりにくければ、次のように言い換えてみて下さい。00, 01, 10, 11の数字の羅列は、それぞれA, B, C, Dの4つの状態と言い換えれますね。
00 = A ,
01 = B,
10 = C,
11 = D

つまり、電波が届くタイミングを“0”用と“1”用の2種類用意すれば良いかと言われたら、必ずしもそうとは限らず、状態の数に応じて4種類とか8種類のタイミング(位相)を用意してやらなければならないわけです。

さて、ここで波の性質と位相の関係を図示する方法があります。それが、こんな感じの図です。実は中心からの角度が位相を表しており、これらの4つの点というのは、それぞれ届くタイミングが異なる4種類の電波を表していることになるんです。これがQPSK。


これは三角関数と波の性質を数学的に理解していれば当たり前のことなんですが、そんなの知らないよという方もいると思うので、まあこんなイメージで表現するんだな~ぐらいで思っておけば大丈夫です。

こうして、電波の種類を増やしていくと、一度に送れる情報量が多くなります。

一度に送れる情報量が増えれば、通信速度も速くなるので嬉しいことですよね。

ということで、たくさんの種類の異なる位相の電波を使ってデータの送受信をすれば、いいじゃないか!と思われるかもしれません。

しかし、残念ながらこの点が近づきすぎてしまうと、データの送受信が上手くいかなくなってしまいます。

感覚的には、電波が届いたタイミングで状態A(=0001)と状態B(=0010)を識別しているわけですが、その到着するタイミングが非常に近くて間隔が短いと受信側が間違えてしまうこともありそうですよね。

そこで開発されたのが次に登場するAPSKです。

APSKとは

振幅位相変調という名前で、通称APSKと呼ばれます。何も下準備がなければ、わけのわからない暗号に思えてしまいます。

しかし、これまでの変調で出てきたキーワードを並べてみると意外と理解しやすいです。

ここまでおさらいですが、変調するときには大きく分けて、振幅Amplitude、周波数Frequency、位相Phaseを変化させた波を使って0と1を表していました。名前はそれぞれASK、FSK、PSKでしたね。

そして今回登場しているAPSKはまさに振幅Aと位相Pの両方を変えながら、波を変換する方法になるわけです。

位相のみを変えるPSKにおける表現の仕方として、先ほど図を示したように円上に波の状態を表した描き方がありましたよね。

これに対してAPSKは次のようになります。

参照元

大小の円が二重になっている様子がわかりますね。

この円の大きさは振幅を表しています。PSKでは振幅は変わらなかったので1つの円でしたが、APSKでは振幅と位相を両方変化させるので、振幅の大小に応じて円の大きさが変わります。

これらの円状の点が、それぞれデータ送信につかう電磁波の情報を表しているんですね。

電波の位相(届くタイミング)しか制御できなかったところに、振幅という情報を変えてやることで、多くの情報を混在せずに送ることができるようになります。

電波を音に例えて簡単に言えば、同じタイミングで聞こえても、音の大きさが違えば違う情報として処理することができるわけですね。

QAMとは

日本語では、直交位相振幅変調という名前で、通称QAM(カム)と呼ばれます。


参照元

これも良くわからない名前だな~と思われるかもしれませんが、視覚的に見てみるとなんだか見覚えのある様子があります。

そうです。先ほどのAPSKで円上に並んでいた電磁波の情報を表す点が、格子状に並んでいるだけです。PSKでもそうであったように電波の種類=点の位置が近くにあると受信側が情報を間違って受け取る可能性があります。そのためAPSKでは二重、三重の円にして、点の重なりがなくなるようにしました。

さらに多くの電波を使いたい場合、点の数は無数に増えていきます。そのような状態でも点同士の重なりが無いように工夫してできたのがQAMというわけです。

最後に

今回はPSKとASKの合体版のようなAPSKと、さらに進化したQAMについて紹介しました。

洗練された技術が組み合わさって新しいものが生まれるというのは面白いですよね。まさに科学技術の進化を目の当たりにしているように思えます。
そして、もうすぐ変調方式も大詰めです。どのように無線通信が行われているかの下準備ももうすぐ終了です。あと少し頑張っていきましょう。

参考


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