世界の博士はどこで働いているのか?
日本では博士になると研究者になるのが一般的でそれ以外の選択肢がなくなってしまうという噂を聞きます.
はたして,それが本当なのかどうか気になるところですが,こちらの記事によれば,たしかに日本では博士を研究職でしかとらないという会社もあるようです.
以前,こちらの記事を引き合いに,博士号の歴史を簡単に振り返りながら,そもそも博士って何なんだっけ?という話をしました.
今回はそんな博士について日本を超えて海外の例を見てみましょう.
海外の博士事情
海外は博士号の取得が日本よりも難しいといわれています.しかし,これは一概になんとも言えません.
具体的には各大学が定める卒業要件をクリアするかどうかにかかってくるので,その点では海外だから難しいとか,日本の方が簡単とは言えないわけです.
この前,海外では大学の先生たちからの厳しい突っ込みに対して自分の論文を守るディフェンスというものがあるが,日本は3年在籍すれば博士が取れるという誤解が出回っていました.
日本にはディフェンスという言葉がないかもしれませんが,一般的に公聴会と呼ばれる場で厳しい突っ込みを受けて耐えなければなりません.3年いれば自動的に博士が取れるというのは大きな間違いです.
少し脱線してしまいましたが,ここからは話を戻して海外における博士のキャリアについてみていきましょう.
海外において大学院生は学生であるものの社会人という認識を持たれているため,5~6年博士課程で勉強するというのはよく聞きます.
日本では大学を出て,就職してようやく一人前の社会人とみられてしまうため,あまり長いこと博士課程で研究しているとビジネスの世界では遅れをとってしまいます.
それに対して,海外では大学院生も研究者として見られるため,ビジネスにおけるビハインドだと考えず一つのキャリアとして博士学生をやってるケースが多いです.
そして,博士号を取得すると,立派な研究者として認められるため,企業の研究者になったり,大学の研究者になったりするわけですね.
逆に博士号を持ってないと研究者として見てもらえず,研究職としての就職が難しいと聞いたことがあります.この点でも,学部や修士の卒業後,即戦力として働いてほしい日本企業とは大違いだなと思いますね.
また,海外の場合は研究者以外のキャリアパスも多くあります.一例として以下のサイトの調査を引用してみましょう.
わかりやすい例では,コンサルやアナリストといった職種ではないでしょうか.日本でも同様に,博士号を取得してからこのような分析や課題解決を主とする仕事につく人は多いですね.
コンサルタント
データアナリスト
データサイエンティスト
政策アナリスト
一方で,日本では理系職でありながらも博士人材をあまり採用しないような職種も挙げられています.冒頭の記事でも紹介されていましたが,日本でもこのような職種にも博士人材を活用できるような働きかけが必要になると思います.
人によっては博士号がなくてもいいでしょうと感じる方もいるかもしれませんが,いずれも科学的な専門知識を必要とされる職業であることは間違いありません.
技術営業
臨床試験担当者
薬事担当者
品質保証
サイエンスライター
弁理士
またビジネス寄りの職種にも博士のキャリアがあるようです.とくにこの辺りはプロダクトを理解するため技術的な知識が必要になると同時に社会学や政治,経済などの専門性も求められるため,理系のみならず文系博士が大活躍するような気もしますね.
またビジネスよりことも仮説検証や統計的な解析が必要になります.こういった場面では当然専門的な知識が求められます.
マーケティング
広報
事業開発(BizDev)
このように見てみると,かなり広範囲なホワイトカラー職に博士のキャリアが開かれていることがわかります.冒頭の記事によれば7割の企業は博士=研究者というイメージのようですが,かならずしもそうではないと認識してもらえれば,より広範囲での博士人材活用が現実的になるのではないでしょうか.
最後に
ちなみに私も向上に配属された後,紆余曲折あり研究はせずに社内DXの業務に駆り出されました.博士号を取得しても研究できないのか…と思っていましたが,最近は何かと科学的な思考が求められる場面が多いなと感じます.
社内DXではプロマネをやってきましたが,これはこれで高度な分析的な思考や技術的な素養が必要になります.
博士は確かに科学的な専門性を持っていますが,それ以上に仮説検証や論理性,戦略的思考などベースとなる力も求められます.そう考えると研究者だけが,唯一のキャリアというのは狭いです.そういった意味でも,もう少し日本における博士のキャリアが広がることを願いたいですね.