【1分で読めるミニ記事】カソードルミネッセンス顕微鏡
以前、電子ビームを当てることによって発生する光カソードルミネッセンスとその応用例について紹介しましたが、具体的に観察する顕微技術についてはあまり触れませんでしたね。
今回は半導体分野において非常に重要な測定手法の1つであるカソードルミネッセンスを使った顕微鏡技術を紹介したいと思います。
カソードルミネッセンス顕微鏡
簡単に想像してもらうとわかると思いますが、見た目が石ころのような半導体にビームを当ててボヤっと光りましたといっても、それがいったい何を意味しているのかなんて分からないですよね。
ましてや、その石ころのような半導体のある一部分に品質に影響する欠陥(原子のずれ)があったとしても石ころ全体ボヤっと光ってしまっては一体どこにその欠陥があるのかわかりません。
そこで重要になってくるのが顕微技術、つまり顕微鏡です。
カソードルミネッセンスという現象兼手法はあくまで電子ビームを当てて蛍光を発するということです。この現象を同じく電子ビームを使う電子顕微鏡と合体させてやりましょう。この組み合わせ自体は様々あるようですが、今回は中でもわかりやすい走査型電子顕微鏡(SEM)との融合を考えてみます。
理系で小さなものを観察する人たちは聞いたことがあるかもしれないSEMですが、その原理はいたって簡単に説明できます。ナノメートルスケールまで小さく絞った電子ビームをサンプル表面に当てて、そのときサンプルから放出された二次電子や反射電子を検出して、画像を作ります。
碁盤の目を一マスずつここの凹凸はどうかな? と確認していく作業を電子ビームを使って超狭い範囲内でやってるというイメージです。
このSEMとカソードルミネッセンスはとても相性がいいようです。
カソードルミネッセンスもSEM同様に電子ビームを使います。一方検出するのはSEMとは異なりルミネッセンス(蛍光)です。
そこで、カソードルミネッセンス専用の検出器(カメラ)をSEM装置の中に入れてやるんですね。
電子ビームを当てながら戻ってきた電子と蛍光をそれぞれ異なる検出器を使って読み取ってやります。それを超細かく一マスずつ進めていくと、サンプル表面全体の凹凸と各地点におけるルミネッセンスの情報が手に入るわけです。
取得したカソードルミネッセンスはコンピューターによって計算されて、色情報に置き換えればマッピングとなり、非常に小さい欠陥(原子のズレ)がサンプルのどこにあるのかわかるということなんですね。
最後に
今回はカソードルミネッセンス顕微鏡について紹介しました。
おそらく、半導体業界や素材業界の一部の技術者しか触れる機会のない顕微鏡だと思いますが、このような技術によって私たちの生活は支えられています。
そして、このような原理というか考え方というのは往々にして他の技術領域にも応用可能だと思います。異分野の手法をヒントにして自らの技術分野の発展を進めていく、そんな研究開発ができたらいいですね。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isj/42/2/42_2_160/_pdf/-char/ja
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