食と科学の融合:おいしさの秘密に迫る
コンピューターから医療まで人類は幅広い分野において科学を発展させてきました。
私たちの生活は過去の科学者や技術者たちによってどんどん豊かになって、さまざまなことが明らかになってきています。
一方で、いまだに全然わかっていないこと、科学として難しいこともたくさんあります。多くの方は人類の始まりや宇宙の果てといった途方もないことかなと思われることでしょう。
しかし、中にはもっと身近な、なんなら私たちが毎日経験していることでさえ科学的に解明されていないことがあるんです。
それが食についての科学です。
インターネットが発達した現代において、私たちは簡単においしい料理にアクセスできたり、料理の上手なノウハウなんかを学ぶことができるようになってきましたよね。
しかし、おいしさっていったい何なんでしょう。
身長だったら長さ、体重だったら質量といった具合に、多くのことは何かしらの指標をもって評価することが可能です。こうして科学的に見ることができるようになり、科学として発展していきます。
それに対して美味しいというのは指標もなければ、測定することもできませんよね。せいぜい、顧客が評価した食べログの星とか、専門家が評価したミシュランの星とか、その程度です。
少々前書きが長くなりましたが、このように美味しいを評価して科学にすることは非常に難しく、現代科学をおいても未解明な点が多いことで有名です。
おいしさを科学する
科学するというと簡単に聞こえますが、冒頭にも述べたように科学するには適切な評価指標や測定方法などが必要ですし、現象を理解するための知見もなければなりません。
ここまで科学発達した現代においても、食に関する分野はいまだに確立していない点が多いという事実があります。
そんな中でもおいしさを科学するべく、多くの研究者や料理人たちが科学の視点から料理を考えるようになりました。
有名なところでは分子調理学や分子ガストロノミー(分子美食学)と呼ばれる分野があります。料理を科学的に考えて、これまで誰も経験したことがない新しい職体験を実現するようなものです。
もしかしたら食べた経験がある方もいるかもしれませんが、液体窒素を使った料理や、味のついた泡エスプーマなども分子ガストロノミーの中で生まれたと言われています。
https://cookbiz.jp/soken/culture/molecular_gastronomy/
最近ではブームも下火になってきたと言われていますが、料理を科学するという考え方時代は今でも生きています。
例えば、料理をエンジニア的に考えるCooking for Geeksという本は、理系料理好きの中では有名な書籍です。
料理と食事は異分野融合の複雑系科学
料理が嫌いと言う人も中にはいますが、そうはいっても食事は私たちの生活の基盤としてとても重要なものです。
そのため大人の人であれば、人生で1度は何かしら料理をしたことがあるという人が多いでしょう。料理はそれぐらい身近にありふれた作業でもあります。
こと食事に関して言えば、食事をしたことがないなんて人は老若男女問わずいないでしょう(特殊な例を除いては)
しかし、料理と食事は両方とも非常に複雑な科学であると考えられています。
野菜炒めを1つとって異なる複数の素材、フライパンでの熱の伝わり方、加熱する順序、混ぜるのか混ぜないのかなど、さまざまなパラメーターが存在しており、これらが複雑に絡み合った結果、味になります。
例えばおいしさを科学的に考えようと要素分解すると、次のような階層構造になると言われています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/57/12/57_12_978/_pdf/-char/ja
基本的な味のから風味や食感、雰囲気を合わせることでおいしさにつながりますが、科学的に考えれば、化学物質とそれを感じ取る生体反応、その物質が口腔内を拡散する物理的な影響、加えて環境や雰囲気を感じ取る認知科学的な情報など、とても難しいことは想像できます。
そもそも、冒頭にも述べたようにおいしさを評価する術は今のところありません。おいしい料理というものを定義することすら困難なのです。
最近では複雑な味を定量評価するため、新たな評価指標を提唱しています。
時間経過に伴う味の変化を感覚的に判断する官能試験と呼ばれるものですが、まさに物理的・化学・生物学的なインプットに対して、味の複雑さという感覚を評価したものになります。
このように料理や食に関する研究は、私たちが生きている限りこれからも続いていくと思います。身近な科学に残された非常に難解な謎を解き明かすおいしさの科学、今後も不定期連載していきますので是非お楽しみに
最後に
今回はおいしさの科学について考えてみました。調べてみると非常に多くの情報がありながらも、まだまだ科学的な決着にたどり着かない面白い領域です。
答えがないとわかっていながらも、むしろ答えがないからこそ、すでにわかっていることを学ぶだけでも日頃の食事をもっとワクワクすることができるかもしれませんね。
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