見出し画像

話題のALPS処理水とは何なのか?

最近、政府が放射性物質を含んでいた水を処理して、海に放出し始めた件でネット上でいろいろと盛り上がっていますね。

今回の決定はあくまで科学的な根拠に基づくものだろうと考えていたので、私自身は特別反対することもないんですが、想像以上に反対の声が上がっているのを見ると簡単でいいから、政府の決定の根拠ぐらいは知っておいてもいいだろうと思いちょっとネットで勉強してみました。

今回はその際にわかったことを専門用語をほぼ使わずに簡単に紹介したいと思います。情報源は基本的に経済産業省のウェブページを参考にしています。

ALPS処理水とは何なのか

まずはじめに今回処理している水のことをメディアではALPS(アルプス)処理水と報道していますよね。

しかし、そもそもALPS処理水って何なのでしょうか?

ALPSとは放射性物質を含む水から様々な方法で放射性物質を取り除く方法のことで、多核種除去設備(advanced liquid processing system、ALPS)というのが正式名称のようです。つまり、ALPSという方法で処理された水ということですね。

どうやらこのALPSという技術は2013年頃まで開発中であったため、「セシウム」以外の放射性物質を取り除くことができていませんでした。それが科学の発展とともに技術が確立し、ようやく十分処理ができるようになったというわけですね。

ALPS処理水は安全なのか

さて、それではこのALPS処理水というのは本当に安全なんでしょうか?
だいたい、メディアなどでは安全や安心といった言葉で語られますが、科学の世界では安全安心というのはとてもあいまいな言葉です。

難しい言葉は使いませんが、ここでは科学的な思考をもって考えてみましょう。

まず、安全というためには、安全をなんとか定義しないといけません。ここでの安全というのは私たちの普段の生活と変わらないとするといいかもしれません。普段は安全、それが変わらなければやはり安全ということです。

ただ普段の生活というのもあいまいなので、もう少し真面目に「私たちの人体に与える影響が自然界と同じレベル」として考えてみましょう。

前提として、私たちは自然界から放射線を浴びています。これは物質から非常に微弱に出ている放射線で人工であろうがなかろうが関係ありません。その値が1年で1~2mSv(ミリシーベルト)程度と知られています。

それに対して、胸部レントゲンが0.1mSv、CTでは10~20mSvです。健康診断で受けるレントゲンは非常に微弱ですが、けがや病気で稀に受けるCTは自然に浴びる放射線の10倍となります。

ちなみにイランのラムサールという地域では自然放射線で年間10mSv以上浴びている人が多く住んでいます。

これらを踏まえると10~20mSvぐらいは人体に影響がないといってもよさそうです。

それでは、今回話題になっているALPS処理水についてはどうでしょうか。ALPS処理水の放出には大変厳しい基準をクリアする必要があります。そうです。私たちの安心安全のために厳しい基準が設けらえているんです。

基準について、あれこれ言いだすと難しいので、ここでは基準を満たしたALPS処理水の放射線量を見てみましょう。この説明に興味深い1文があったので引用します。

放出口における濃度の水を、生まれてから70歳になるまで毎日約2リットル飲み続けた場合に、平均の線量率が1年あたり1ミリシーベルトに達する濃度

安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策④放射性物質の規制基準はどうなっているの?

つまり、ALPS処理水をそのまま毎日飲んだとしても、1年あたり1mSv被ばく量が増えるだけということがわかります。毎年1~2mSv自然から被ばくしており、その10倍のCTを受けてもまだ健康であれば、ALPS処理水がいかに人体に影響がないかわかると思います。

ALPS処理水を危険というなら、イランのラムサールに引っ越す方がよほど危険なことと言えるでしょう。

この記事では簡単のため、内部被ばく、外部被ばくについては分けて考えてはいませんが、経済産業省の資料にはそれらについても説明があります。

最後に

今回は最近話題のALPS処理水について本当に安全なのかということについて調べてみたことを紹介しました。

ネット上には未知の物質が生まれるだとか、まだ発見されていない現象が起きるだとか、いろんな噂が飛び交っています。しかし、これらには今のところ科学的な根拠はありません。

本当に安全だと思うか否かは個々人の問題です。なので、私からみなさんに安全であると強要するつもりもありません。科学は常に進歩し続けているので、今は根も葉もない噂が100年後には本当だったと言われているかもしれません。

ただ、そんなことを言い出したら、普段飲んでいる水道水が実は危険な物質を含んでいただとか、健康のために飲んでいたサプリに危険な成分が含まれていたとか、なんとでも言えてしまいます。真実なんて知る由もありません。

ここで伝えたいのは、怪しい噂話を鵜呑みにするのではなく、このような科学的なことに関心を持って自分で調べて理解しようとすること、その姿勢が大事だということです。

私自身、サクッと経済産業省のサイトを読んだだけなのでまだまだ疑問が残ります。ALPSの具体的な方法は?とか、放射能以外の課題はないの?とか思うところはありますが、ここまで来たら自分で調べていくだけです。

テレビで報道されたから、専門家がいうから、政府がいうから、信じるというのは良くないことです。自分自身で調べて理解してリテラシーを上げていくしかないと思います。

参考




この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?