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【次世代テクノロジー】量子ドット太陽電池

環境問題とナノテクというとあまり関係がないと感じる方も多いかもしませんが、実はとても密接に関係しています。今回は、そんなナノテク技術である量子ドットを使った次世代の太陽電池について紹介したいと思います。

そもそも現在の太陽電池が完璧な存在であれば、これ以上の技術革新は必要がないですよね。今での精力的に研究が進められているということは、まだまだ課題が山積みということになるわけです。

それでは最新技術である量子ドット太陽電池の前に、現在の太陽電池の課題を見ていきましょう。

シリコン太陽電池の弱点

商業利用されている太陽電池は主にシリコンを使った太陽電池です。

太陽電池についてはこちら↓

当然、コストやサイズといった問題も抱えるシリコン太陽電池ですが、性質の問題でもイマイチなところがあるんです。

太陽電池というと太陽の光エネルギーを余すことなく吸収してくれそうな気がしますが、実は全然そんなことありません。というのも一般的なシリコン太陽電池は太陽光の成分のうち赤外線のほとんどを吸収することができないんです。

これはシリコンのバンドギャップの特性に由来する問題で、シリコンを使う限りは基本的に解決することができない問題です。

バンドギャップというと難しそうに聞こえますが、簡単に説明すると電気を生み出すには強いエネルギーの光が必要で、最低限のハードルを越えられない光は吸収できず全て無駄になってしまうんです。

そのため、エネルギーが弱い赤外線は吸収することができず捨ててしまうことになっているんですね。

バンドギャップの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

そこで、現在シリコン以外の材料を使って吸収できる光の幅を広げようという研究が積極的に行われています。つまり、捨てるエネルギーをなるべく減らして余すことなく太陽光を吸収しようという算段ですね。


量子ドット太陽電池とは

ここで登場する太陽電池の1つが量子ドット太陽電池です。とはいえ、そもそも量子ドット自体がなじみのない言葉ですよね。

詳細は過去の記事を見ていただければと思いますが、量子ドットとは簡単に言うと光学顕微鏡でも見ることができない小さな粒になった半導体のことを指します。

詳しくはこちら↓

この量子ドットの利点としては、粒のサイズを変えることで、吸収できる光のエネルギーをいろいろと変えることができるんです。

要は、これまでの太陽電池が吸収していたエネルギーの光も、吸収することができなかった赤外線も全部まとめて吸収することができるようになるんです。

このように書いてしまうと、ちょっと都合がよすぎる気がしますよね。なんといっても、このようなナノテク技術を作るのは難しいという当たり前の問題が出てきます。

実用化には当然大量製造が必要です。しかしながら、このナノスケールの粒、量子ドットを作るのがそんなに簡単ではないんです。方法はいくつか検討されていますが、数ナノメートルの世界になると制御が非常に難しいんですね。

例えば製造時、半導体表面に小さな粒が自発的に生まれる結晶成長方法を採用したり、液体の中で小さな粒(量子ドット)を生み出して、それを利用するなどいろいろな方法が模索されています。

加えて、ウイルスよりもずっと小さな粒を決まった位置に並べる必要もあります。無数の粒を1つずつ並べるなんてことはできないので、全部まとめて並べないといけないのですが、やはり研究レベルの域を出ていないのが現状と思われます。

量子ドット太陽電池のイラスト

このようなナノテクの難しさに対して、現在使用されている太陽電池に使われているシリコンは半導体技術の根幹でもありすでに研究が進んでいる分野でもあります。ということで、なかなか量子ドットが普及しないのも納得です。


最後に

量子ドット太陽電池は都合よくとらえれば幅広いエネルギーの光を吸収することができる夢の技術です。とはいえ、その開発にはまだまだ時間がかかりそうです。

日進月歩で進むナノテクの未来は明るいと思います。もし高校生や大学生で興味があればナノテク研究の道に進んでみると面白いのではないでしょうか。


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