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触媒を制御するDNAをつかったナノスイッチ

スイッチというと電気をつけたり消したりするのに毎日使いますが、それがナノサイズまで小さくなるなんて考えたことがありますか?

電気であったり電源であったり、オンオフを切り替えるのがスイッチですよね。これをナノレベルまで小さくして化学の反応(触媒機能)のオンオフを切り替える微細な装置を作るのが今回紹介する研究です。

そしてそんなナノレベルのスイッチを実現するのが、このnoteでも何度か紹介しているDNAを使ったモノづくり(DNAナノテク)です。

なんだか難しいと感じる方もいるかもしれませんが問題ありません。視覚的もわかりやすい論文なので一緒に見ていきましょう。

DNAを利用した小さな窓

今回注目するのはDNAを使ってナノホールという小さな穴とその穴を自由に開閉する窓を作ることです。

そんなものどうやって作るのか?と思いますが、DNAを使ったDNAオリガミという技術を使えば簡単にできてしまうんです。まずは画像で見た方がわかりやすいと思います。

cでは全ての窓が閉じているが、dでは窓が開いている(参考文献より引用)

なんだか複雑だな~と思いますが、前述した通り小さな穴と窓があるのに注目です。この全体がDNAでできており、はじめは窓が閉じていますね。いわゆるロックされた状態です。

ここでロックを外して窓を開けるため、鍵が必要ですね。この鍵が金属イオンに反応するDNA酵素(DNAzyme)と呼ばれる物質です。これは環境に特定の金属イオンがあると、それに反応してDNAを切ることができます。つまりこれを使えば、ロックを外して、窓が開くというわけです。

このとき投入する金属イオンの種類を変えることで、特定のDNA酵素しか働きません。すると特定のロックしか外れないため、決められた窓しか開かないということになります。

例えば、Zn2+だけを投入したら左の窓だけが空き、Pb2+だけを投入すれば右の窓だけ空き、両方投入したら両方の窓を開けることができるということですね。

b:金属イオン未投入、 c: Zn2+投入、d: Pb2+投入、e: 両方投入(参考文献より引用)

言葉だけでは簡単そうに聞こえますが、窓のサイズは数十ナノメートル程度です。これはウイルスよりも小さい窓となります。そんな小さな窓の開閉を切り替えるというのは至難の業です。

触媒機能へ拡張

さてナノサイズの窓の開閉についてはわかりましたが、これがどうやって触媒の反応の話になるのでしょうか

これにはナノサイズの窓にさらなる仕掛けを用意します。

窓があるということは表と裏で空間が区別されているということになります。そこで表と裏にそれぞれ混ざると反応するような物質を用意して貼っておきます。

参考文献より引用

先ほどの金属イオンの投与によって窓が開くと、表と裏に貼っておいた物質がお互いに出会うことができます。そして出会った物質は互いに反応するんです。

ここでは反応の有無を蛍光を使って観察していますが、確かにZn2+やPb2+といった金属イオンでそれぞれ処理した場合は、使用した金属イオンに対応する反応が起きている様子が、蛍光によって観察されています。当然、両方の金属イオンを投入した場合は、両方に対応する蛍光が見えています。

光を使った鍵

さらに高度な仕掛けとして、研究グループは光を使って反応する物質を使って、光スイッチを作成しています。

複雑さは増しますが、光の照射によって制御するため金属イオンやDNA酵素が必要なくなるのが利点です。加えて、光の制御で窓の開閉を可逆的にできるのがすごいところですね。

参考文献より引用

実際に何度か繰り返すサイクル試験を行っていますが、確かに繰り返し利用することができることが実証されました。

つまり、光で反応をオンオフできるナノサイズのスイッチができたといっても過言ではないでしょう。

最後に

この研究の面白いところはさらなる発展が考えられるところです。DNAオリガミはコンピューターを使ってデザインするため、より複雑な構造を作り上げることも可能です。

今回は、比較的わかりやすいオンオフの切り替えでしたが、より複雑な構造を実現すればもっと難しいことができるナノマシーンのようなものができると考えられます。

将来的にそんなDNAオリガミを使ったナノマシーンの恩恵を受けられるといいですね。

参考文献

Active generation of nanoholes in DNA origami scaffolds for programmed catalysis in nanocavities

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