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結晶のモザイクとは

モザイクというとモヤモヤした見せたくないものを見せないようにするものを思いつくと思いますが、そもそもは小さな形が組み合わさった幾何学模様をいうようです。

実は結晶の世界にもモザイクというものがあります。何かをぼかして隠したいわけではありませんよ!

ここでは、普段聞きなれない結晶のモザイクについて簡単に紹介したと思います。


完全結晶とは

結晶とは原子や分子が規則正しく整列したもののことを言います。つまりどこまで行ってもきれいに並んでいるわけです。

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しかし現実問題そんなことが可能なのでしょうか?私たちの目にも見えないほど小さな原子が寸分違わず何億~兆個も並ぶこのなどできるのでしょうか?

その答えは、並ぶこともできるが普通は並ばないです。
一切の狂いもなく並んだ結晶を完全結晶といいます。厳密な定義はさておき、このような完全結晶は不安定になってしまい通常存在しません。※

この完璧な完全結晶を作るのはなかなか難しいことが知られています。普通に結晶を作るとどんなに丁寧に作っても中には欠陥と呼ばれるずれが生じてしまうんですね。

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原子が上手くかみ合ってなかったり、穴が開いていたり、違うものが入っていたり…

結晶欠陥の話はかなり奥が深い話なので別の機会に置いておいて、それでも完璧な結晶を作るのは大変です。

そんな中で、結晶はモザイクというものを持っています。ようやく本題だけれども、そもそもモザイクって何よ?と思われるでしょう。

モザイク結晶とは

モザイクというのは、一切のずれのない小さなドメインの結晶が、占める領域です。一般的な結晶は、たとえ単結晶といっても、わずか数度のずれを持ったモザイクの集まりと考えられます。

ちょっと難しい表現になってしまいましたね…

語弊を恐れず簡単にいうと、モザイクブロックの中では原子が完璧に規則正しく並んでいます。そのモザイクブロック同士がぱっと見わからないぐらい少しだけ傾いているわけです。

丸が原子、四角形がモザイクブロック(誇張して傾けてる)

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世の中にはこのモザイク性を調べるための方法としてX線ロッキングカーブなどがあります。


何の役に立つの?

ちょっと基礎っぽい話が出てくるとたいてい聞かれるのが、何の役に立つのか?ということです。

多くの研究者や開発者は、この結晶のモザイクが少なくなってほしいと願っています。要は、モザイクというのは汚いということで、できることなら完璧な完全結晶が欲しいということです。

そのためにも、研究者は結晶のモザイク性を評価します。この結晶はきれいなのかな?汚いのかな?と調べるわけです。

ということで、半導体メーカーの技術者は、デバイスや素子の性能に影響を与える結晶のモザイク性を一生懸命調べているのです。

個人的には、きれいとか汚いとかはどうでもよくて(それは人間にとってメリットか否かという話なので)、結晶構造がとても複雑で人間が理解していない世界が広がっているなという感覚です。


最後に

私の研究ではモザイク性まで計測をしたりしていないのですが、ここら辺のお話は結構研究に直結するので、いろいろと考えています。

おそらく半導体メーカーの方とか真面目に結晶を研究する人たちはこのモザイクがとっても大事な概念です。

結晶の授業でも応用的な内容で、普通聞く機会はないかもしれませんが、このようなマニアックな研究によって私たちの身近な生活が成り立っていると思うと、不思議ですね。


※完全結晶について:実際、理論的な完全結晶はサイズが無限大になると思うのでそんなものは存在しないのですが、掌サイズまで大きくて一切のずれがない結晶を完全結晶と呼んでいると思います。完全結晶の定義は分野によって多少違いあると思いますが、一応科学的に完全結晶と呼ばれるものはSi単結晶やタンパク質結晶などが挙げられます。


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