見出し画像

ただ、ラグビーが楽しいから その地はリヴィエラまたはコート・ダジュール #6

 開催国、フランスの試合は(さぞかし盛り上がるでしょう」と、フランス対ナミビア戦をニース、アルバート公園内にあるビレッジラグビーの大型スクリーンで見ました。



 開始の2時間前から会場は、観戦する人がいっぱいでキックオフを待っていました。ところが、始まってみると一方的にフランスが強すぎて、前半終了前からばらばら人が帰り始めてしまいました。ブレイクに入ったところでホテルに戻ろうとすると、出口の手前のテニスコートほどの芝生で、大人たちがラグビーをやっていました。ジャージではなく、Tシャツにジーンズとか、短パンです。
 きっと一緒にワールドカップを見に来たラグビー部の仲間なのでしょう。名前を呼びあいながら、掛け声をかけながら、パスをしたり、ボールをうばったり・・・夢中でボールを追いかける一人一人が、楽しくてしょうがないというような表情です。

 見ているうちに、ラグビー発祥の逸話と重なりました。もともとラグビーは、サッカーをやっていた少年たちの一人が、いきなりボールをもってフィールドを走り出し、これがきっかけで一つのスポーツとなりました。その少年は、ゲームが楽しくて楽しくて、思わずボールを抱えてしまったのでしょう。彼の名前がウィリアムス・ウェブ・エリス。ラグビーワールドカップの優勝トロフィーにその名前が刻まれています。


 まさに今開催中のワールドカップでは、国の期待を背負って必死になって各国の代表選手が対戦していますが、始まりは、今目の前でみなが夢中で参加している、遊びだったのです。代表の選手たちも、一番最初にボールを持った時は、ただボールを蹴ったり、もって走ったりすることが楽しくて夢中だったはずです。好きで続けているうちに、いつの間にか大舞台に立っていたのではないかでしょうか。そして、代表になった今でも、ゲームの最中に彼らの心の中にあるのは、もしかしたらあの、一番最初にラグビーボールを持った喜びなのかもしれません。彼らこそ、その喜びを忘れずに抱き続けている人たちなのかもしれません。好きでなくては続けられませんから。

 隣で女性がやはりラグビーを見ていました。彼女によると、彼らは知り合いでなく、誰ともなくゲームが始まり、気がついたら人数が増えていたそうです。参加国が火花をちらしているスクリーンと、国も言葉も超え、『このスポーツが好き』というだけで一つになってラグビーに興じている姿が対照的でした。
 
 そして、どちらも皆、小さな少年のように見えるのでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?