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私にしか創れないものがあるとしたら

20年ウエディングプランナーをやってきて、最近ようやく自分らしいとか、理想に近い結婚式の手応えが感じられるようになってきました。

その道のりでの苦労や葛藤を思い出すと、決して楽ではなかったけれど、この仕事を一度も辞めたいと思ったことはないし、続ければ続けるほどに、愛おしさは増しています。楽しくて続けている、という感覚ではなく、もう生涯この人と添い遂げると決めている、という感じ。

私の周りには、というか、ウエディングの世界には、とても素晴らしい才能を持った(正しく言うと努力して才能を磨き続けている)アーティストやクリエイターがたくさんいる。

キャプテン、サービスマン、ミュージシャン、MC、PA、DJ、照明デザイナー、シェフ、パティシエ、ドリンカー、フローリスト、ヘアメイクアーティスト、フォトグラファー、ビデグラファー、スタイリスト、バルーンアーティスト、デザイナーなどなどと、彼らの仕事を支えている無数の生産者さんたち。

彼らは結婚式を創っている。
彼らが、創っている。
結婚式の、五感で感じるもの全てを。

ただ、なんだろう。
彼らといると、時々ふと孤独を感じることがある。

創ることができる人たちと、できない人。
託される人たちと、託す人。
受注者と、発注者。
与えられる人たちと、受け取ることしかできない人。
前者が彼ら、後者が私。

そんなことを感じているのは、私だけなのかな。他のプランナーさんってどうなんだろう。
そして一体何が、私にそう感じさせるのだろう。

私は、お客様と創り手との間で、どちらにも寄らず向き合う相手を変えながら、両者の、柔らかなイメージと感性を引き出し照らし合わせ、手のひらの中でそっと優しく、時に強引に、その素材を混ぜ合わせていく。感覚を研ぎ澄ませて調合されたそれは美しい色に変化して、あとは当日、五感で感じることができるいずれかに昇華されて目の前に現れ、唯一無二の美しい世界を創る。創り手の惜しみない努力と真心によって。

五感で感じられるもののひとつも創ることができない私に、もし、なにか創れるものがあるとしたら。私にしか、創れないものがあるのだとしたら。そんなことをふと考えている。

今のところ実感がないのだけど、もし、あるのだとしたら、それはきっと、言葉では説明することのできない空気のようなものなのだろう。

ウエディングプランナーには、目に見えるもの、耳で聴くことができるもの、舌で味わうことができるもの、香りを感じられるもの、感触を確かめられるもの、それらがシンクロした場の空気、どれもひとつも直接形にすることはできない。

時々、彼らのことを、創れる人たちというか、最終仕上げの立ち位置を羨ましく思うことがある。『これをやった。これを創った。』と、手に取れる実感として感じられることが。

もちろん、たまには私も創ることがある。
ペーパーアイテム、ウェルカムデコレーション、司会としての言葉。キャプテンやサービスだってする。でも、どれも本職ではないと思っているから、いま話していることとは別の次元の話だ。真のプロフェッショナルとしての『創った』ではない。

もし、私にしか創れないものがあるとしたら。

それは『世界感』という、とても曖昧で抽象的で実体のない、ふわふわとした概念的なものでしかない。

無からはなにも生まれない。けれど。

私が混ぜた何かと何かは、必ずひとつの世界を生む。
美しく混ざり合うもののみを混ぜ合わせ、そうで無いものは決して混ぜない。その瞬間は間違いなく、鍛えあげた五感の先に生まれる『六番目の感覚』を使っている。自分の感性の海に潜って、全身で感じ取り、両者の心の奥と、この結婚式がある未来へと想いを馳せ、インスピレーションを交錯させている。

その先に必ず、私にしか創れない美しい世界が生まれているはずだ、と強く自分を信じて。

それが上手くできた時には、当日、ゲストやスタッフの涙や拍手となって私の感覚に返ってくる。でも涙も拍手もお二人に向けられるものだ。私は二人を通して擬似体験させてもらっているに過ぎない。

形のないものに対して持つ自信というのは、あとからその感触を確かめることができなくて、その日から時が経てば経つほどに薄れてしまうから、わたしは時々、一緒に仕事をしてくれる創り手たちの感性の話を聴き、第六感を酷使したことでカラカラに涸れてしまった自分の心をそっと満たさせてもらっている。そうして蓄えた新しいクリエイティブは、また私の創作意欲をかき立ててくれ、いつかの結婚式で調合できる時が来るまで、瓶に詰めて、感性の海の底にそっと沈めておく。

実は今日は、真夜中に目が覚めてしまって、今、午前3時。確かなものが見つかるかなと思ってなんとなく書き始めたこのnoteだけど、わかったことはやっぱり、私に創れるものは、なにもないみたいだ。

なにもないわけではないけれど、結局なんだか実体がなくて、ふわふわとしている。これが私だし、私が創る結婚式はこれでいいんだって、妥協することができなくて、いつまでもずっとその影を追い求めていくのだろう。私とお二人が巡り合ったことで、少しでも深くお二人の心に何かを染め重ねたくて。

そんな確かなもののない、時に苦しい結婚式なのに、なぜか力強く惹きつけられてしまう。色んなものの答えは、しばらく出なそうです。

そして、次はもう少し明るく楽しいnoteを書きたい。笑

おやすみなさい。

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