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よその国に来て想う、美しき日本への回帰思考

いま私は海外にいるのに、不思議と「日本」について考えさせられることが多い。ものを考える時には必ずキッカケがあるわけで、そのキッカケを探してみると「日本人としてのラベル」「北欧と日本に通ずる美意識」という2つのキーワードが浮かんでくる。

どうしてそんなキーワードに辿り着いたのか、すこし整理してみたいと思う。

日本人としてのラベル

デンマークでの私は、まだ何者でもなくって。ここで出会う様々な人にとって一番わかりやすい私のラベルが「日本」ということになる。

今までは「リクルートの吉田さん」「編集者の吉田さん」として自分が積み上げてきた経験と共に何かを語っていけばなんとかなったものが、いきなり「リクルートって何?」「ふぅん…編集…?」という反応なのは当然で(今まで、私の仕事に興味のある界隈の人としか付き合って来なかったんだなぁ…しみじみと…)。その結果残る私のラベルは「日本人のEriさん」みたいな、とんでもなくシンプルなものだったりする。

幸いなことに世界にとって「日本」とはとても良い国らしく、日本の話題だけで結構話が持つし、興味を持ってくれる人が多い。

その結果、日本の暮らし、社会、政治、食、人、自然、そして文化…そういったことを改めて振り返り、語ることが多くなった。日本を切り口にして会話をしていくと、世間話をするよりも簡単に話が広がってゆく。

ここでは他者と対話する時、私は必ず「日本」というキーワードに思いを馳せることになるのだ。

北欧と日本に通ずる美意識

それにしたって、この土地では日本の話が盛り上がりやすい気がする。そんなに沢山の国々を見てきたわけではないけれど、街で刹那的にすれ違う人々とこんなにも自国の話をする土地を、私は他に知らない。

学校では日本の「森林浴」に興味を持つ子や、金継ぎの本を興味深く読む子にも出会ったし、コペンハーゲンのショップに行けば日本作家の器や日本のデザインにインスパイアされた商品を目にする。歯医者の先生は、日本にはすでに3回旅行に行ったと嬉々と話してくれた。

彼らが日本の伝統文化やクラフトマンシップに強い興味を持っていることがずっと不思議だったのだけれども、北欧デザインについて調べている時にふと謎が解けた気がした。ヒントは北欧デザインの特徴にあった。

北欧デザインの特徴を挙げてみると、
・シンプルなデザイン
・落ち着いたカラー
・木製の家具や暮らしの道具
・長く愛されるデザイン
・自然との共存
みたいなキーワードが並んでくる。あれ、なんだか既視感……。

そう、北欧デザインは日本の美意識やデザインの特徴と似ている。そう考えると、デンマークで日本文化が受け入れられていることだけでなく日本で北欧デザインが流行ったことも必然だったのかもしれない。

そんな嬉しい発見と共に、いま私はひとつ、大きな後悔をしている。

ああ、どうして私は日本のあの美しい精神性、所作をもっと学んでこなかったのだろう。今…猛烈に勉強したい…と。

もし私がもっと日本文化の美意識を理解していれば、彼らの文化をより深く理解できたかもしれない。私が彼らに提供できることが何か、あったかもしれない。

そんなわけで私は今、日本から遠く、とおく離れた北の国で日本文化についての勉強を始めようとしている。成田空港を発った時は思いもしなかった展開に少し戸惑いながらも、残された生活を少しでも意義あるものにするために。

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