びねつラジオ

第5回「本日のバス」/びねつラジオ

夜更かしのみなさんこんばんは、満島エリオです。

突然ですが、バスは好きですか。
私は結構好きです。

といっても日常で使うことはほとんどなく、乗り物が好きで〜という話でもなく、なんというか、ある種の象徴として好き。
なんの象徴かと言われると一言では説明しづらいのですが、電車と比べてのんびりしてるじゃないですか、バスって。電車ほどは時間に厳密じゃないし、エリアをまわるために出発地から最終到着地へのルートが迂回してたりする。急いでる人とか、絶対にこの時間までにここに着かなきゃいけない、という人はあまりバスを選ばない気がする。
あと、乗る人降りる人がいるかいないかで停留所を素通りする、みたいな不確定要素を含んでるところもなんかあやふやでおもしろい。

平日の昼なんかに乗ると大概すいていて、ぽつぽつお年寄りが乗ってて、信号や停留所のたびに止まる。ぼんやりと窓の外の道を眺めていると、この道はここに繋がっていたんだな、とか、ここにこれがあったのか、ということがわかってくる。頭の中で、平面の地図と、実際の道が繋がっていく感じ。
線路が土地をまっすぐ貫いている電車だと、こういう感覚はあまり味わえない。

バスのそういう、あくせくしてなくてあやふやな感じが好きなんです。乗っていると段々頭の中が空っぽになっていって、ぽかーんとした気持ちになっていく感じとか。
そんなことを、昨日久々にバスに乗ってぽかーんとしながら思い出しました。

そんでもって、バスは意外と曲のテーマやモチーフとして取り上げられることがあります。有名なところだとチャットモンチーの”バスロマンス”とか、スピッツの”運命の人”に出てくる≪バスの揺れ方で人生の意味が解かった日曜日≫とか。
電車は大概、せわしない日常や代わり映えのないルーティーンの象徴として描かれることが多いけど、迂回しながらぽかーんと進んでいくバスは、それこそまっすぐは進めない人生みたいなものになぞらえられていることが多い気がします。

そんな感じで、バスそのものと同様に私は「好きなバスの曲」が結構あって、いつか全部並べたいなあと思っていたので今日はそれをやります。

”ファビュラス”/ビッケブランカ

とにかくダンサブルでネアカな感じが最高なのがビッケブランカの特徴だと思ってるんですが、この”ファビュラス”は本当にその中でも代表格であり横綱じゃないかな。だってタイトルが「ファビュラス=非常にすばらしい(マーベラスよりもエレガント)」ですよ。

ジェットコースターみたいな音程の高低差を軽々と歌うボーカルが最高に気持ちがいいし、カラフルなMVの中で踊るビッケブランカの姿も楽しい。
どこまでも明るい曲調なのに、歌詞はバス停で「僕」がバスを見送る、そんな情景を切り取ったちょっと切なさの滲む曲。特に落ちサビの歌詞がいい。
≪右へ左へ揺れる感情に 疲れてしまっても僕は あなたとバスに乗りたい≫
そんな寂しささえも拭い去る軽快なピアノがまた最高な、ファビュラスな曲です。

”快晴のバスに乗る”/After the Rain(まふまふ)

After the Rain名義のCDアルバムに収録されていますが、この曲はまふまふ一人で歌っています。
まふまふと言えば生きる苦しみをテーマに疾走感のあるメロディをボーカルで切り裂いていくのが圧倒的に痺れるアーティストなわけですが、その中でこの”快晴のバスに乗る”はかなり珍しい曲だと思う。
ミドルテンポで、音域も高めとはいえ、落ち着いた音域内で構成されていて、その分まふまふの素に近いフラットな声がじっくり聴けて、そこがとても好き。まふまふボーカルの曲で一番たくさん聴いている曲かもしれない。
歌詞も日常的な言葉ばかりで構成されているのも珍しく、とても身近な感じがする。「君」のことを思い返しながら、また「君」と人生という道のりの上で、同じ「バス」に乗り合わせることを願うような内容で、≪君のいない今日なんて/ボクは乗り逃してみたいよ≫という歌詞が秀逸だ。
そして何よりタイトルがいいですね。バスのあのポカーンとした感じは、やっぱり晴れの日こそ似合うと思うから。

”Get On the Bus”/BONNIE PINK

BONNIE PINKは女性らしいのに芯の強さがしっかりあるのが良さだと思うんですが、この曲もそういうしなやかな強さが感じられる。
≪君がバスを降りた日から≫から始まる歌詞は、静かで寂しいけど、その寂しさを丸ごと包み込むような穏やかな優しさが根底にある気がする。
≪Life is too crazy to control≫
≪ならばスローなバスでいいさ≫
あたり、ちょっとあやふやであくせくしていないバスの特徴が濃く出ているように思う。

”乾涸びたバスひとつ”/米津玄師

米津玄師の1stアルバム『diorama』に収録されています。
メロディは単調で、言ってしまえば地味なんですが、スルメ曲とはこの曲という感じで、聴けば聴くほど切なさが募る。”ファビュラス”が「あなたを見送る」で、”快晴のバスに乗る”が「君とまた会いたい」、”Get on the Bus”が[あなたはいないけど前へ進む」だとしたら、”乾涸びたバスひとつ”は「あなたと行きたかった」って感じだろうか。
≪霞に沈んだ朝の街 揺れるバスの背に寄り添って/このままどこかにいけたらなって 海に沈んでしまえたらって≫
「あなた」との思い出や秘密を一つ一つ数えるたびに、叶わなかった願いがより浮き彫りになっていく。なんかそんな曲です。

こうして見ると、「あなた」「君」がもう隣にいない曲ばっかりだな。そして「あなたとバスに乗りかった」という願いが共通してる。
やっぱり、「生きていくこと」と「バスに乗ること」は似ているというか、親和性がある事象なのかな。
さて、私は誰とバスに乗ろうかな。

【お知らせ】

ちゃこさんの「そのへんの一般人」というインタビュー企画で取り上げてもらいました。

えらそうに語っているので今読むと正直恥ずかしくて自分を張り倒したくなるのですが、書き仕事のことなんかを書いてるので興味のある方はどうぞ。

ではまた次の夜に。
おやすみなさい。

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