ERIN

頭の中の備忘録。 本や映画の感想を綴ったりしています。

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レトロな古本屋で出会った、1冊の詩集のこと

📖立方体の空/福永祥子 上京してきた翌朝に、関西にいたときから気になっていた古本屋さん「水中書店」を訪れた。木の箱に並べられた本達はすべてきれいな状態で、店主さんは丁寧に本に向き合われている方なんだろうなと嬉しくなった。海外の文学作品や文芸作品、詩歌が多く、モダンな店内を歩くだけで頭の中がとろける。Googleマップの本屋さんリストには「詩歌が多め。言葉の奥深さを堪能できる素晴らしいジャンル」とメモしてあった。 本棚を1周半回ったところ、美しい青と和紙のような表紙に心惹か

    • 映画記録「関心領域」

      もし配信でこの映画を観ていたら、私はオープニングからエンドロールまで一度もスキップせずにいられただろうか。後半にかけてこれは「現在の自分」を指している、と気づいたとき、今まで感じたことのない恐怖に襲われた。 定点カメラで淡々とヘス一家の様子を映し出していて、まるでホームビデオかドキュメンタリーを観ているみたい。何も説明はされず、下手すると退屈に思えてしまうような穏やかなシーンが続く。しかし、その景色とはそぐわない悲鳴や銃声、エンジン音が遠くから聞こえてくる。画面の中にいる人

      • 映画記録「悪は存在しない」

        物凄い作品を観た。今まで観た映画の中でも指折り、今年1番の映像作品かもしれない。 頭の中で考えが溢れてどうしようもなくなったので、ここでも散文的に書いておこうと思った。いろんなところに書き散らしている。 感想をまとめるのがものすごく難しい。全部を理解できたとも思わないし、考察や解釈を連ねるのも本当は野暮かなとも思う。今観たものはなんだったのか、何が起きたのか。ずっと劇中吸い込まれるようで時間が一瞬だったし、直後は放心状態で、帰宅後も長く余韻が続いた。 ・カメラワークが初

        • 三十一音のお守り本

          📖水上バス浅草行き/岡本真帆 人生で初めて購入した歌集がこの本だった。全部の歌を音読するくらい、好きな言葉と感情であふれていた。 そしてまた私が好きだなあと思う本屋さんやホテルの一角に置いてあることが多く、お見かけするたびににんまりしてしまう特別な本でもある。「あ、なんかこの場所や選書した人と仲良くなれる気がする」と嬉しくなるのだ。 どれも日常の一コマをたった三十一音で写真のように切り取っている。 一首一首を眺めていると、本当に過不足なくその時の温度感や心情までこちらにま

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        レトロな古本屋で出会った、1冊の詩集のこと

          映画「クルエラ」と生きる力

          美意識を高めたい+もうちょっとしぶとく生きたい気持ちのときにぴったり。長すぎず短すぎず、最初から最後まで惹きこまれた作品。 1年ほど前から見たい映画リストに入っていたものの、サブスクの見放題には該当しておらずずっと温めていた。昨日の夜途中で目が覚めて、午前2時に思い切ってアマプラでレンタル購入をした。 デザイナーの夢をもつ努力家エステラと、復讐心に駆られたクルエラ。二面性のある彼女を「ラ・ラ・ランド」でおなじみのエマ・ストーンがものすご~く細やかに演じている。百貨店のトイレ

          映画「クルエラ」と生きる力

          【本のある空間日記】松原市民図書館 「読書の森」を訪れて

          先日、大阪松原市にある図書館「読書の森」を訪れた。1・2時間だけ滞在するつもりがなんと半日ほど入り浸ってしまった。とにかく居心地がいい。それもそのはず2020年に移転・新築開館し、10種もの建築賞を受賞されている施設だった。最近本を読むだけではなく、本が並ぶ空間そのものに関しても強く惹かれることがあるなと感じていて。 元公共政策・社会学専攻×本好きの視点からも、どうにかこの「好き」を書き残しておこう!と思った。 最寄りの高見ノ里駅を降りて、田んぼ沿いの道を進んでいくと、ため

          【本のある空間日記】松原市民図書館 「読書の森」を訪れて

          新卒1年目の9月、会社に行けなかった朝の話

          朝起きて、メイクも済ませて、玄関前で鏡を見た瞬間に涙がどっと溢れた。どうしても扉が開けられない。びっくりして一旦部屋に戻る。朝ご飯はここ一週間ほど食べられていなかった。 最近ずっとおかしいな、身体変やなとは感じていて、公開していないnoteの下書きにも、muute(ジャーナリングアプリ)にも悲しい、胸が痛い、苦しいという文字が数日にわたって連なっていた。現実感がなく、気持ちが常に焦って考えがまとまらない状態が約1か月ほど続いている状態だった。以前に比べるとこの異変に気づくの

          新卒1年目の9月、会社に行けなかった朝の話

          MBTIがリニューアルされたとのこと。変わらずINFPでした。 「自分を偽ると、ものすごく不安を感じてしまいます」は確かに、と思う。思ってもないことを口にする、行うと違和感が拭えないので…。 https://www.16personalities.com/ja/

          MBTIがリニューアルされたとのこと。変わらずINFPでした。 「自分を偽ると、ものすごく不安を感じてしまいます」は確かに、と思う。思ってもないことを口にする、行うと違和感が拭えないので…。 https://www.16personalities.com/ja/

          【仕事場ライフハック】 上司への報連相チャットを送った後、すぐにトイレに行く。 文章大丈夫だったかな、何返ってくるかな、の心配が7割は減る。

          【仕事場ライフハック】 上司への報連相チャットを送った後、すぐにトイレに行く。 文章大丈夫だったかな、何返ってくるかな、の心配が7割は減る。

          ここ3日くらい夜寝付けなくて、ご飯も3食冷凍うどんの日があったりする。夏バテなのか環境変化の波がきているのか。なんにせよ無理しないように。

          ここ3日くらい夜寝付けなくて、ご飯も3食冷凍うどんの日があったりする。夏バテなのか環境変化の波がきているのか。なんにせよ無理しないように。

          吉祥寺に住んでよかったなと思うこと

          お久しぶりです。1か月ほど間が空いてしまいました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。 社会人になってなかなか内省する時間も取れないまま、ううん、時間があればとにかく寝ることでぎりぎり回復しているような生活をしておりました。特段忙しいわけではないはずなのに、波のようにインプットに追われる日々。会社のルールや暗黙知、成長の後押し、いろんなものにもみくちゃになっています。所属の部署も決まって心機一転、がんばれるところはがんばって、ちゃんと休んで、焦らず行こうと思うこの頃です。

          吉祥寺に住んでよかったなと思うこと

          【読書メモ】「生きづらさ」の時代 香山リカ×上野千鶴子+専大生

          ちょうど去年の5月ごろに読んでいた本の感想を読み返す機会があった。 今の境遇とは違った時に書いた文章を読むと、すこし心が晴れる部分があった気がしたのでまとめ直してみようと思う。 本書は現代の「生きづらさ」について香山氏、上野氏をはじめとする大学教員・専大生らが討論したもの。心理学(内なるこころの問題)と社会学(私達を取り巻く社会=人間の外側の問題)その仲介に哲学・倫理学を据え、それぞれの専門分野から紐解いていこうとする点が興味深かった。特に、本書で取り上げられていた“自己実

          【読書メモ】「生きづらさ」の時代 香山リカ×上野千鶴子+専大生

          日光の水が本の背にさざ波をつくり 酸化した硬いページのうえで ゆるやかに蛇行しながら 薄暗い書架の澱んだ時間に 静かな流れを与えています 言葉は眠る 忘れ置かれる至福のうちに まどろみの島/石田瑞穂

          日光の水が本の背にさざ波をつくり 酸化した硬いページのうえで ゆるやかに蛇行しながら 薄暗い書架の澱んだ時間に 静かな流れを与えています 言葉は眠る 忘れ置かれる至福のうちに まどろみの島/石田瑞穂

          無題。

          自分の世界を守りたい。 日々の喧騒から飛び出して、ただただ一人こもっていたい。 好きなようにしてください。本当に。 自分の泳ぎ方を考えています。 一人でも生きていけるけれど、 一緒にいたいから傍にいるのでしょう? 私にはわからないのです。 私は誰かの所有物ではありません。 自己肯定感をあげるための、道具でもありません。 私には、わからないのです。 勝手に描いた未来に私を置き去りにしないでください。 はっきりと、これはされて嫌なことですと 受け入れるかは

          無題。

          渋谷のレコードバーで過ごす金曜日の夜

          こちらにきて初めてひとりでバーの扉を開けた。東京にいる友達の行きつけで、写真で見た時からいい雰囲気だった。開店時間の20時過ぎ、駅から少し歩いたビルの一室に向かった。 カウンター席に座り、京都のドライジン「季の美」をたのんだ。瑞々しい柚子とレモンの柑橘ベースに玉露の和が香りたつ。さらに山椒と生姜のスパイスのような奥深さが際立ってとても美味しい。レコードの前でひとり静か過ごす。気をつけないとすぐに呑み終わってしまうから、少しずつ、少しずつ。 何をするわけでもないけれど、グラ

          渋谷のレコードバーで過ごす金曜日の夜

          こころの余白をあらためて

          自分のやりたいことについてうまく語れないことの方が多い、という話。それってどの範囲の話?人生?今の仕事で?生活で?それぞれ集結しているはずだけれどうまく紐付かないし、毎回言葉に発することは違うかもしれない。曖昧で、でもわかりたくてもどかしい。 本を好きな理由のひとつが、まさにこれじゃないかなと思っている。文章に触れることで自覚する。何に惹かれて何を思うのか、本という媒介を通じた著者との会話であり、自分との対話の時間だから。 そういった時間を重ねる中で、ふと言葉が立ち上がる。

          こころの余白をあらためて