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【読書メモ】「生きづらさ」の時代 香山リカ×上野千鶴子+専大生

ちょうど去年の5月ごろに読んでいた本の感想を読み返す機会があった。
今の境遇とは違った時に書いた文章を読むと、すこし心が晴れる部分があった気がしたのでまとめ直してみようと思う。


本書は現代の「生きづらさ」について香山氏、上野氏をはじめとする大学教員・専大生らが討論したもの。心理学(内なるこころの問題)と社会学(私達を取り巻く社会=人間の外側の問題)その仲介に哲学・倫理学を据え、それぞれの専門分野から紐解いていこうとする点が興味深かった。特に、本書で取り上げられていた“自己実現へのプレッシャー”は、無意識のうちに刷り込まれやすいものだと感じる。SNS上の煌びやかな写真や動画、可視化されるいいねや閲覧数などは、いつの間にか不安を煽る材料になってしまった。接触機会の多いコンテンツ上なら、なおさら。

なんとなく、最近の煌びやかさは画面上の映えだけではない気がしている。さも自己実現をしているかのような、友人関係の広がりや出会い、リアルタイムでの旅行先レポ、ボランティアの体験談や長期インターンでの出来事など、そういったものを載せること、そこにただ体験をシェアしたい感情だけがあるとも思えない。自分らしく生きたい、消費者でいたくない、何者かにならなくてはいけない……発信する側も、受け取る側もだんだんと脅迫的になってしまう怖さがあるなと。

そんな中で、上野さんの言葉はすこーんと入ってくる。

「香山さんとか私は鬱にならないと思う。どうしてかというと、自我理想があまり高くないからです。反対に、自己の獲得目標が高い、自我理想が高い人は、現在の自分を許すことが出来ない。(中略)努力しない我が身を常に責め続けなければならない、努力しない自分を許せない。(中略)私は自我理想が高くないから、そこそこほどほどにやっていられればいいじゃないかという、許容水準が極めて低い。

自分の外側にはネット上に限らずいろんな「理想らしきもの」が溢れていて、取捨選択できないうちに内側に取り込まれている感覚がある。
自我理想を高くしすぎず、許容水準が低くてもいいじゃないと開き直ることもまた長く健やかに生きていく上で大切なのではないか、と再認識させられた。


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