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仕事人間だった父、畑仕事にハマる。


父の実家は農家だった。戦後に祖父が始めたのだそうだ。主にタバコ(葉)や野菜を作っていたと聞く。でも、息子である父も叔父(父の弟)も農家は継がず、それぞれに進学し、サラリーマンとなった。

なので、祖母が亡くなってから(祖父は私が産まれる前に亡くなっていた)は、小さな一軒家と手つかずの畑だけが遺されていた。畑とは言っても、草木が生い茂っていたので、ただの荒地だった。

一軒家は親戚家族に貸していた時期もあったが、その家族も引っ越し、相続した父の持ち家となった。

最近、両親が片道2時間かけて、その家に頻繁に通うようになっている。一通りの家具家電も揃え、いつでも泊まれるようにしたという。

そして、少しずつ土いじりをしていると聞いてはいたが、だんだん本格的に野菜を作り始めた様子。

じゃがいも、人参、玉ねぎ、里芋、さつまいも、とうもろこしにスナップエンドウ、空豆…。品目が増えていっている。

私たちも定期的に収穫したものを送ってもらっていたのだが、どれも形は不揃いでも、とても美味しいのだ(いつもありがとう)。



私は、父が畑仕事に熱心になるのが、かなり意外だった。

というのも、まだ祖母が存命の頃、週末に時々祖母宅を訪れていたが、父が畑仕事をするところを1度も見たことがなかったからだ。

当時も祖母はそんなにたくさんの野菜を作っていた訳ではないが、隣りに住む親戚(農家)の農作業を少し手伝ったりしていた。その中に加わるのは、決まって母だった。その間、父は大抵家の中にいて、テレビを観たり、昼寝をしたりしていたのだ。

平日の父は、会社勤めが忙しく、朝早くから夜遅くまで家にはいなかった。私の実家にも小さな家庭菜園があるのだが、そこで作業する父も見た事がない。


だから、本当に意外だったのだ。

定年してからは毎日の散歩に加え、時々のゴルフと趣味の俳句に時間を費やしていたが、だんだん畑での時間が増えていく。週末は大抵訪れて、母と2人で作業しているようなのだ(父は転居したそうだが、母は交友関係や趣味もあり、難しそう)。


今年のGW、私達もその畑を訪れた。荒地だった頃の記憶しかないので、その広さにまず驚く。

こんなに広かったんだ…。草木を取り除き、畑に戻すのも結構大変だったと思う。


わが家4人で、両親と一緒に作業を始める。


この日の予定は、空豆、スナップエンドウ、サラダ玉ねぎの収穫と、さつまいもの苗つけ。

息子(小3)は、はじめ「え~、だるい。嫌だー。」とごねていたが、空豆を一房収穫した瞬間、スイッチが入ったようだ。「やる!」と言って、収穫も苗つけも出来ることは全部やった。長靴に土が入ろうが、手が泥だらけになろうが気にしていない。

この日植えたさつまいもの苗。

実家でも父にはほぼ近付かず(父も孫の扱い方が分からない)、母にべったりなので、父と息子が一緒に作業している姿はレアで、なんだかうれしくなった(めっちゃ写真撮った)。これが、「土いじりマジック」というやつか。


娘(中1)は、程よくサボりながらも、しっかり手伝っていた。夫も、よく動いていたと思う。

私は私で、玉ねぎを大量に引き抜き、葉の部分と根っこをひたすら剪定バサミで切ったのだが、無心で作業し、何だか楽しかった。玉ねぎ達と会話していた気がする(怖い)。

たくさんの玉ねぎ達。


そして、収穫した沢山の野菜を車のトランクに積み込んで帰宅した。友人や兄一家にもお裾分けし、すごく喜んでもらえた。

サラダ玉ねぎは、レンチンして鰹節とポン酢をかけただけで、立派な一品になる。苦情が出そうなほど毎日食べた。スナップエンドウもお弁当の彩りに大活躍。

それに何より、「自分達で収穫した」というので美味しさ倍増だ。子ども達にも、いい食育になった。




最近、父から写真が送られてきた。

じゃがいも大量収穫。
モロッコインゲンにサヤインゲン。
里芋。
子ども達が植えたさつまいも。順調に成長中。
トウモロコシはちょっと小振りらしい。


私自身も、こんなに畑仕事を身近に感じるのは初めての経験だ。この一連の流れから、ふと思ったことがある。

野菜作りは、なんだか子育てに似ている。

畑を耕して、種や苗を植え、適度に水や肥料をやる。時には失敗することも。そうやって成長を見守りながら、収穫期を迎える。それがどんな形だろうと、味だろうと、自分で手がけた野菜はかわいくて美味しい。

父がどんな風に感じているか分からないけれど、子育てをするように畑仕事をしているんじゃないのかなあと、送られてきた写真を眺めながら思ったのだ。

初めはそうでもなくても、だんだん面白くなる。楽しみが増えていく。気付いたらハマっている。実はこれ、私の子育てにも似ている。私は末っ子で育ったこともあり、小さい子の扱い方が分からなくて、子どもが苦手だったのだ。それなのに、わが子を通し、「子育てって大変だけど面白い」、そんな風に今は感じている。そして、気付いたら、周りにいるどの子もかわいくて面白いと思えるのだ。


まあ、何にせよ、歳を重ねてからも、没頭できるものがあるのは素晴らしいことだ。これからも、父が無理のない範囲で畑仕事を楽しんでくれることを願っている。


今年の秋、またみんなで芋掘りに訪れるのが、今から楽しみだ。



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最後までお読み頂き、ありがとうございました♩




***2024/6/10追加***

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