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結婚できるようになった女
31歳、ついに私は結婚した。
というより、「結婚できるようになった」と表現したほうがシックリする。
「今のままだと婚期逃すよ」と腹式呼吸でおどしてきた友達もびっくり。なんせ私は、恋愛で事故りまくる20代を過ごしたから。
ご紹介します。
恋愛事故多発してた、私の脳内はこちら。
『おい、だれか国のえらい人!一途で誠実でマメに連絡をよこして安心させてくれるイケメンを保護しといてください!見当たりませーん!』
わりと早めに両親がいなくなって、孤独多めで生きてきた。
仕事を終えたら、その孤独を埋めるようにハメ外しまくった。主に六本木で。だいたい翌朝は、服にこぼしたカクテルのシミを発見して、ため息をつく。はぁ。酒くせ。
「なにやってんだ、私は。」
女友達は多いけど、みんな彼氏とのデート優先だし。どんどんプロポーズされてくし。こんちくしょう。
やっぱ「誰かの1番」の存在になるには、結婚なんだろうなぁと。
じゃあ、私も結婚したい。というか「一生そばにいるよ」っていう保証をくれ。三木道三を歌ってくれ。愛が足りないんだ、とにかく。
恋愛本は、かなり読みあさった。
だいたい同じことが書いてある。
まずは自分を愛しましょう。
How?????
寿司屋で働いてたら「ハンバーグください」って注文されたぐらいに無理難題なんだが。スシローならあるかもだけどさ。
愛が不足してるとこから、愛を生みだす?
ないトコから、ないモノを創りあげろと?
スタートアップ企業なの?「リッチマン、プアウーマン」はじめちゃう感じ?私のなかの石原さとみも、てんやわんや。
いや。私のなか、石原さとみ不在だったわ。
いたら結婚できてるわ。
私には「愛された」って記憶が足りてない。
父は、もともといない。私が「大人の会話」できるようになる前に、お母さんは亡くなっちゃった。
お母さん大好きだったけど、わりとヒステリックだったな。「ヒステリックブルー」からパッと連想するのはバンド名よりも「母の性格」だ。
恋愛本には、こうも書いてある。
目の前に現れる人は、自分の鏡です。
それはもう、たしかに・オブ・ザ・イヤー受賞なんですよ。
自分が「愛のメモリー不足」と認識してるから、現れる男がくれる愛も足りない。
そこそこ着飾ってるから「かわいいね」とは言ってもらえる。でも「一生一緒にいてくれや」とは言ってくれない。
しかたないか。
起業しよう。
愛という名のスタートアップ。
愛のないところから、愛を生みだしてみせよう。
そうするしか道はない。私の戦略は2つあった。
作戦①愛され女子でオセロする
ある日、彼氏にプロポーズされた子・旦那さんから溺愛されてる子たちを召集。
「もう住む世界がちがう」と思って、すこし距離を置いてたけど、思いきってランチに誘った。
そこで私は、こう宣言した。
「私も結婚したいんだよね。」
すると、愛され女子たちはパァッと顔を輝かせて、めちゃくちゃ応援してくれた。
私にはわかる。この子たちは、こころから応援してくれてると。イヤミとか全然ない。ここにあるのは愛のみだ。
やっぱり愛を持ってる人は、人に愛を分け与えてあげられるほどの余裕があるんだな、と。
「オセロみたいに彼氏いる子から挟まれるとね、彼氏ができるらしいよぉ〜!」
「じゃあ、挟もう挟もう〜!」
ぎゅうぎゅう〜!と、私は愛とやらに挟まれた。
それ以降、結婚できない友達とは距離をおき、愛され女子たちに紛れこんだ。
作戦②愛の記憶を捏造する
男性が女性を愛する、という構図が、いまいちイメージつかなかった。
父は母に暴力をふるったし、じいちゃんは私の尻をたたくし、弟には着拒されてる。
「私は男性から愛されない」
いまいましい記憶が、そういう思考回路をせっせと構築してることに気づいた。
そこで!
男性が女性を溺愛するドラマ・映画・恋愛リアリティーショーをたくさん観た。今までそういう系は興味なかったけど。というか、むしろバカにしてたくらい。
男性がぐっちゃぐちゃに泣きながら、1人の女性のことを想ってる。そんな、愛に溺れる男性をたくさんインプットした。
「女性はこれくらい男性に想われるべき。」
だんだん、私の潜在意識まで届くようになった。
結論から言えば、この作戦は大成功。
今の私は結婚から6年経つけど、うざいほど夫から溺愛されている。これを幸せな家庭と呼ぶんだろう。
愛の記憶をセルフサービスしていくことで、すごい変化があった。まず、私が好きになるタイプがガラッと変わったの。
夫みたいな人は、これまでの私からすると絶対に恋愛対象じゃなかった。5歳も年下だし、弟にしか見えない。優しくされても、下僕にしか思ってなかっただろう。(ひどい)
私を愛してくれる人、私に優しくしてくれる人、一緒にいたらお互い幸せになれそうな人を、私が好きになるようになってた。不思議と。
まさに夫は、私のことがたまらなくタイプらしく、お姫さまのように扱ってくれる人だった。
こうして私は「結婚できるようになった女」に変化したのだ。
今なら私が、オセロの端っこになれる。挟まれたい子を挟んであげたい。ぎゅうぎゅう。
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