山口絵理子 Eriko Yamaguchi
ファッションやデザインについて、山口絵理子が日々想うことを綴るショートエッセイ。 ファッションアイテムを通じて年齢・性別・国籍などの差異を越えた世界観を表現する「ERIKO YAMAGUCHI」(2022年9月リリース)にまつわるストーリーもお届けします。
今日3月9日は、マザーハウスを創業した日だ。 17周年を迎えられた。 全てのマザーハウスユーザーのみなさんと、これまで多くの学びを与えてくれたみなさんに感謝しています。 一昨日、「セブンルール」というテレビに出させて頂いたのでその反響が嬉しくもとてもあり、少し慌ただしくしているんだけれど、それでも毎年のように、創業記念日は個人的に朝、第一号店をひっそり訪れる。 台東区入谷。 現在私たちの倉庫になっている8坪の小さな空間の前に、1時間ほど立っていた。 現在45店舗、
私は今コルカタにいる。 この国の手仕事、手織りの布(カディ)、ガンジーさんが作った「Freedom of fabric」自由を纏う布、というスローガンに心から共感して、2018年に飛び込んでいった。 まだまだこの国をわかっていないなあと思いながら、ちょこちょこ出張をしては、新しい気づきをくれる国だ。 コルカタは「ウェストベンガル」に入るが、南インド、北インド、州によって言語も肌の色も文化も根付く手仕事も違うから、おばあちゃんになる前に色々な探検ができればなあ、くらいに構
今年は挑戦できたこともあったけれど、その裏でやり抜けなかったこともあったなあ。 挑戦という意味では銀座に自分の名前のお店を出したこと。 「1年契約」でオープンできた銀座東急プラザ入ってすぐの場所。 この前「契約延長をしたい」って言ってくださり、本気で嬉しかった。 あまりにも夢中で服作りをしている裏で、それは達成感も充実感もあったんだけれど、経営者としてはできなかったことも多い。 少しずつ何かが変わっていっているのを見抜けなかった。 それでもなんとか利益が出たのはス
新しいバッグを私のファッションライン<ERIKO YAMAGUCHI>のために作りました。名前は「JOMON cross bag」です。 ユニークな名前の由来は縄文時代です。 「紐から、立体へ。」 縄文時代はさまざまな素材と、それを生かそうとする人の知恵が多く生まれ、開花した時代です。まだ「ろくろ」を知らなかった人たちは、土器を粘土の「紐」や「帯」を利用して作っていました。紐を巻き上げる方法で、最初に底を作り、紐を積み上げていき、段差を滑らかに指で平らにしたり、そ
今回、インドはコロナが明けて初めて来ることができた。 コルカタ(カルカッタという人も多い)という東インドの街に、私たちのお洋服を作っている工房がある。 「この地で工房を作る」そう決めたのは2018年の自分自身だった。 ガンジーがこの国を建国した時代から、世界でコットンと言えばインドだ。 そして大量生産のコットン生地が出回る中で、カタンカタンと綿花から糸に、糸から布にしている人たちを見たときに、「これは未来に残すべき」そう思った。 インドでも手織り人口は激減、コロナ禍
今日、小田急百貨店にあるマザーハウスの店舗に立っていた。 理由は、2008年から続けてきたこのお店が小田急百貨店の閉店により幕を閉じ、10月にできる小田急ハルクと京王百貨店の2店舗にバトンを継ぐことになっているから、思い出の場所で最後の接客をしたかったからだ。 (写真はマザーハウス小田急新宿店) (写真は最新のマザーハウス京王百貨店。ハルクはメンズ館となり10月にオープン予定。) 2008年私たちは入谷と戸越銀座というニッチすぎる場所にしかお店がなかった。(*現在両店
京都には店舗があり、たびたび、地場の職人さんを紹介して頂いたり、私自身もいつか住んでみたいなあと思う街でもあり、休暇を過ごすことも多い。 京都には47の(指定されている)伝統工芸があり、そのほとんどが“絶滅危惧種”だといわれている。後継者が不在、需要が激減、現代に合わずに衰退の一途であることも聞いていた。 そんな京都で、先日伝統工芸に従事される方々とお話しをする機会があり衝撃を受けた事実があった。 初めて知ったのだが、京都市が定義する「伝統工芸」とは「100年間変わらない技
今日41歳になった。 なかなかこんな年齢になると、こんな風に数字を出す女性はいないのかしら?笑。そろそろやめた方がいいのかな。わからん笑。 まあ、でも、毎年なんらかの自分への記録をnoteに書いていてその習慣は好きなんで今年も。 駆け抜けた40歳という1年間。 旦那に「40歳の目標って私、何て言っていたかな?」って昨夜聞いたら 「“自分の世界観を確立したいな”って言っていたよ」とすぐに教えてくれた。 「その目標なら、まじ100点だな、私」って言った。 40歳の誕生
「ミニマリズム」という言葉について、省くとか削ぎ落とすという意味だと認識されているけれど、厳密に「シンプル」とどう違うのかは、割と曖昧に捉えられている。数年前、ミラノの展示会に出かけた際に、工業製品のデザイナーを志すイタリア人とその話題になった。 私は彼とともにたどり着いた結論にすごくしっくりきている。 「ミニマリズムってさ、意志なんだよね。シンプルって雰囲気。」 厳密な差を明文化している訳じゃないんだけど、この感覚が作り手としてフィットするし、多分、買う人にとってもな
E.(イードット)のお洋服を愛してくれているみなさこんにちは。 初めて聞く名前だなあとお感じの方もいらっしゃるかと思いますが、マザーハウスのアパレルブランドE.(イードット)というブランドが誕生してもう早4年が経とうとしています。 インドのカディという天然素材に魅了されて、コルカタに自社工場をつくったのが2018年。38人のテイラーのみんなが自国の素材と自分たちの技術を使って、服をつくってくれています。それらを届けるお店も徐々に増えていきました。 本当にお洋服って鞄と違
作る現場の話を始めると私は何時間でも一人談話ができるほど、奥深く、面白く、その世界はデザインとは違う論理で動いているがデザインと隣接する非常にユニークな領域だと常々感じている。 作る現場と一言で言っても、「工場」「工房」「アトリエ」「作業場」「ラボ」色々な形態がある。一般的にはアトリエは工房と同義で、ものづくりの職人が働いている場所を指し、工場とは機械を使って製品を作っていることが多く、規模も大きい、と認識されている。 私は、常々「工場」と「工房」のハイブリット型の工場設
今回世の中の御多分に洩れず私たちも値上げをしなければ耐えられない境地になりました。 すごくフォーマルな形の値上げの「お達し」が百貨店や商業施設の至る所にPOPとして書かれていたり、ウェブサイトのECページにはニュースで表記されているブランドが多いけれど、なんとなく、その一方向のアナウンスメントにちょっと違和感があって、私はこのnoteに自分が見てきた値上げまでの景色とか、モヤモヤがあったこととかを書き記したいなって思った。 まずそもそも、値上げはしない方がお客様は当然だけ
2年2ヶ月ぶりの出張。 行く前からその戦いは始まっていた。 出張1週間前、娘が突如39.8度の熱を出した。 (いつもは2、3日で治るから大丈夫だろう) 1歳4ヶ月になった娘は、熱はあるが元気だったので、私は出張の準備を始めていた。 翌日、翌々日も熱は下がらず、PCRを念のために受けたが陰性。 そして熱が下がって木曜に保育園に行って元気に戻ってきたと思ったら夜に発熱。 ぶり返してしまった。 夫婦で反省して、再び自宅で様子を見るが、夜は40度に近くなり、救急病院に
実は5年前から、都内の下目黒福祉工房さんという施設にお邪魔しています。 知的障害の方の施設ですが、その中で「革班」があります。 革を素材に物作りをするチームです。 10名弱の小さなチームですが、ご縁があってこの工房と出会ってから、私は、彼らの無邪気で可愛い笑顔と、作ることが大好き!っていうエネルギーに本当に魅了されて、自分の時間が空いたら元気をもらいにお邪魔するってことを繰り返していました。 「工房のこの幸せな雰囲気はどこからくるんだろう???」って私はいつも帰り道に
春の新作「Sou」を作りました。 このかばん、一見するとシンプルなのですが、型紙を一枚で作りました。 マニアックな話をするともうエンドレスなのですが、今日書き留めておこうと思った のは、このバッグが教えてくれたこととか、きっかけになってものづくりへの気持ちが変わっていったことがあまりにも大きいから。 コロナ2年目になって暗いニュースばかりで、ニュースを見たくないけど、気になるから見て、また悲しい気持ちになって、の繰り返しだった日々。 「ファッションって何なんだろうなあ
3月9日で16周年となりました。 改めて16年もの長い間、私たちを応援してくださり、そして商品を使ってくださっている本当に多くの皆様に感謝でいっぱいです。 2020年からの2年間、本当に厳しい経済状況の中ではありますが、店頭やオンラインで頂くお客様のメッセージに支えられ、17年目に入りました。 周年記念には、毎年1年間の振り返りや報告をしています。先日オンラインイベントを開催させて頂き画面上でも伝えさせて頂きましたが、このnoteでも一つ、報告があります。 パリについ