出版に向けてのネクストステップ
野球界と同じで、本の産業にも、有名な代理人が何人かいるらしい。
当然Yさん自身は、代理人ではなく、過去の本のプロジェクトにおいては代理人と一緒にチームを組んで、協働してきた経験があると教えてくれた。
私は過去に、講談社さんで4冊と、他の出版社から1冊出版をしているが、日本での出版実績が非常に大きな説得材料になるようだ。
「でも、印象として日本の人が読む本とアメリカで読まれる本って相当違うと思うんですが、それでも日本の部数が何より大事ということになるんですか?」
「そうですね。やっぱりアメリカの出版社も、日本で何部出たかは非常に気にします。もちろん、出版社から、出版する前に、こことここを変えてほしいとか、編集を組み直してほしいとか、そういったリクエストは来ます。それで著者はまた書き直したりっていうのをする場合も多いですし、一度出版してみて、最初からババーっと部数が伸びないことももちろんあるので、その場合、じゃあ第二弾はどうかとか、そんな感じですね。でもとにかく、出版社が強いところがつくかどうかはとても大事です。強い出版社はやっぱり出版イベントみたいな販促的な力も強いですから。そうしたものを戦略的に組む力があるんです。」
「ちなみにKindleとハードカバーだとどういった感じで最初はスタートするんですか?」
「最初からKindleはやりません。なぜなら出版社としてはハードカバーの方が利益率がいいわけで、最初からデジタルも一緒に出してしまうなんてことはしません。徐々に、タイミングをみて、Kindleが後から出てくるということです。」
「なるほど・・・。ちなみに米国のハードカバーってどれくらいの値段なんですか?」
「結構高いんですよね。3000円~5000円くらいですかね。」
米国の書店事情をこんな風に、"自分事"として聴くことになるとは、なんだかちょっと不思議な感じだった。
Yさんの一通りの説明を聞いた後、関くんが言った。
「このプロジェクトがどう進むかまだわからないけれど、僕としてはYさんを是非チームメンバーに入れてやっていきたいんです。それをこの前Yさんとも話をしていて。僕と僕のスタッフ、Yさんで一つのチームを作って進めていきたいねと。マザーハウスさんと私たちチームとこのプロジェクトの契約書を取り決めて進めていけたらいいなって思うんですがどうでしょうか?」
Yさんも、
「日本語は読んでいますので、とても興味深いし、スピード感もあって面白いです。ただ、僕も結局は代理人が興味を示さなければ、何も進まないと思ってはいます。まずは原稿を待ち、それを持って、複数の代理人さんにアプローチを始めたいです」と。
そして、"代理人へのアプローチ"これが、関くん&Yさんたちに依頼する最初の業務契約内容になったのだ。
「ちなみに、もっとも敏腕な代理人、というのはその世界でいるんですか?一番信頼を得ている人。」と私が聞くと、
「はい。います。代理人にはいろんな方がいますが、とりわけ日本からの本を米国に流通させるという意味において、プロフェッショナルでないといけないと思うんですね。その点においては、最も有力な人がいます。名前はNさんです。この人は、イタリア系のアメリカ人で、実はコンマリさんの本もこのNさんです。」
「へえ。。Nさん・・・。」
パソコンに映し出されたNさんのプロフィール画像と経歴を見ながら、私はこの人がOKという基準は一体なんなんだろう・・・?と思っていた。
Yさんは続けた。
「このプロジェクトの最初のスタートとしては、代理人が誰になるかです。僕としても最初は、原稿をNさんに送ってみたいと思っています。どうなるかは別として。」
「は、はい・・・・・。」
なんだかこのプロジェクトは始まってから、ずーっと、狐につままれているような感覚だった。
一緒にこの会議に同席していた副社長の山﨑や、常務の王君が、会議の後に言った。
「なんだか、ここにきて、面白くなってきたなぁ・・・・」って。
"今頃か!!"と内心ツッコミを入れていた・・・。
というわけで、キャシーさんの原稿はY氏により、N氏に送られたのだった。
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