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18周年を迎えるにあたって。

ついに会社が18周年になりました。


最近、業務の中でお客様のリストを見返していた時に、起業した2006年からずっと変わらず応援してくださっているみなさんの名前がたくさんあって、お一人お一人とお店で最初に出会ったときの思い出や、ある時は会社に対するご指摘を頂いた思い出、本当にたくさんの歴史を一緒に歩いたことが頭をめぐり、「18年も一緒に歩いてくれているお客様がいること」に幸せと感動を改めて抱きました。


あと2年で20周年です。


様々なことを整えながらも、挑戦も同時にやっていきたいと思っています。


その中で、私個人的には、このnoteできちんと書きたいなと思っていた取り組みがあります。

それは、「英文のステートメントの改訂」です。
つまり、理念の英語の文章を少しだけニュアンスを変更しようとずっと思っていて、ようやく、それが完成したのです。


地味なことのように思えるかもしれませんが、私にとっては、とてもヘビーな作業で、現場の声と自分の声とタイミングとを、照らし合わせながら決めました。


元々「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を日本語で掲げてきて、もちろん日本語は不動で今後も継続しますが、英文が「Creating world-wide brand from developing countries」というもので、この直訳に近いものを2006年から使用してきました。


ただ、現在シンガポールの店舗が成長していることや、お店によっては海外のお客様が半分を占める中で、このステートメントの明瞭さに改善が必要だと思い、長い間悩んでいました。


そこで、18周年を目処に「Showcasing the potential of developing countries」に改訂することを決めました。

理念が意味することは、そこまで大差はないのですが “Showcasing” という動詞については、Creating よりも、直営店を持ち、お客様に商品をお届けしているというニュアンスが私たちのブランドの姿と重なるなあと思い、この動詞にしようと決めました。


また、先日の取締役会でこの文章を発表した際に、「この新しい英文ステートメントの中で、一番私たちが大切にしなきゃいけないのってどこのワードかな。やっぱり、それって “Potential” だよね?」という本質的な議論をメンバー間でできたことが本当に嬉しかったのです。


その言葉の通りで、私は生産地の「ポテンシャル」を信じて、一歩踏み出しました。

それは、まだ目に見えるものではないですが、素材の発見、職人さんとの出会い、技術の向上の余地など、様々な現場で拾い上げるピースを自分の心の中に溜め込んで、満タンになった時に、「よし、信じてみよう」と一歩を踏み出し18年が経ちました。


それを世の中の人は「主観」と言ってくれるのですが、個人的には、主観を作り上げてくれたのは現場に落ちている「ポテンシャルの欠片」でした。一見すると、乱雑に、地面にただただ転がっていたような欠片の時もあったように思いますが、それらに気がついて、立ち止まって、手に取って、真剣に向き合って、「やっぱり、光るかも・・・・。」と思ってきました。


その中でも、18年間私自身がポテンシャルを引き出せているという実感が最も湧いているのは、「生産国の職人さん」です。鞄職人、ジュエリー職人、衣服の職人と国も技術もそれぞれですが、彼らのポテンシャルを引き出すために、何が必要かは現場にいると明確です。


それは、デザイナーという「ものづくり」を行う際に、職人さんの反対側にいてキャッチボールをする相手です。


「このイメージで作りたいんだけれど、どうにか形にしてほしい。」


そんな斜め上のリクエストが来るからこそ、職人さんは難しい顔をしながらも必死に取り組んでくれるのです。


それがバイヤーさんからの ”この鞄のコピーね“ という度々、途上国で聞くようなリクエストだとしたら、ポテンシャルは引き出せないのです。


そのため、デザイナーは職人さんより、半歩前に進んでいかないといけない。

デザイナーの進化が停滞することは、職人さんの歩みをどこか退屈なものにさせてしまう。そんな風に思いながら、私は18年、事業家としての歩みではなく、デザインに向き合いながら、生産地の職人さんたち、素材たちとの「言葉なき手による対話」を続けてきました。


必死だったので、あまり競合などを意識する余裕は、正直ありませんでしたし、物理的に、生産地にいることも多いので、必然としてオリジナルなものづくりの道を一緒に作ってきたように思います。


そうした生産地の挑戦の先に、販売の山ほどの挑戦があり、現在直営店が海外を含めて49店舗になりましたが、そもそものスタートは、やはりものづくりの進化だったと思います。そこに合わせて、事業ができてきたように思います。よく勘違いされてしまう部分なのですが、決して、逆(事業があり、ものづくりが進化した)ではないと感じています。


英文ステートメントの話に戻すと、「ポテンシャル」という言葉には、最も大事な「お客様のポテンシャル」という意味合いが含まれているとも議論しました。


日々寄せられるお客様の声には、「このバッグを持って、就職活動を頑張ろうと思いトートバッグを選びました。」「今入院している友人がいて、元気になって出かけられる日のためにショルダーバッグをプレゼントするんです。」「今年から、ちょっとだけでも前向きな気持ちになりたくて色が綺麗なお財布を新調します。」「ずっと準備してきた試験に受かった自分にご褒美でマザーハウスのジュエリーを買いに来ました。」


日常の仕事の中で、こんな風に商品とお客様の物語に私たちは触れています。

そしてその度に、「ああ、私たちが作っているものは、商品だけではない。商品の中に内包する、一歩踏みだすという行為へのエールも同居しているんだ。」とお客様の声や、お手紙やメールから教えてもらってきました。


このように、ポテンシャルという言葉は、生産地とお客様の両方に伝えられる言葉として今後も大事に使っていきたいと思っています。また、こうしたことは、伝える努力なくして、伝わらないとも思います。


春から、小さなブランドブックを店頭で配布する準備をしています。

また、バッグをお包みするコットンバッグにも秋くらいを目処に、英文ステートメントのプリントを開始していきたいと思っています。


また何より、一人一人が自分のポテンシャルを信じられる組織、ブランドであれるよう、私自身が先頭を切って、不可能だと思うことに挑戦していきたいと思っています。


今年は、再び、新たな途上国に行く予定があります。

そしてこのnoteでも連載している「米国での挑戦」を、引き続き楽しみにしていてください。


業績や数字、世間の評価などが一番大事な物事のように認識してしまいそうになる日常ですが、私は、改めて、自分自身が納得感のある18年目を過ごしたいと思います。


どうぞ今度とも、よろしくお願いいたします。



最後に、二週間前に滞在したバングラデシュの自社工場のリーダーたちと撮った写真を載せます。(これは、米国の出版にあたり送った提供写真の一枚です)

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