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映画レビュー「ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド」

ピーター・ジャクソン監督の映画「They Shall Not Grow Old」を観た。

第一次世界大戦集結100年の2018年にイギリスで公開されたWW1のドキュメンタリー。モノクロ・無音のモノクロ映像をデジタル技術を駆使して着彩したりセリフを追加したり音をつけたりして再編集したとのこと。

2020年1月の日本公開時のタイトルは「彼らは生きていた」だったらしい。邦題の付け方というのはさまざま議論されることがあるが、本作においても「彼らは生きていた」は的外れ感がすごい。ナレーションは退役軍人のインタビューなので、つまり彼らは帰還できたということだが、その彼らの語りで構成されているドキュメンタリーのタイトルが「彼らは生きていた」ではミスリーディングをさそうとすら思う。

まあそれはいいとして、わたしはこの映画をみてよかった。紛れもない戦場の現実を豊富な映像で見たのは初めてだった。水浸しの塹壕を見たのも初めてだった。話には聞いていたが、塹壕に水がたまり、その水が足ごと凍り凍傷になった「塹壕足」を見るのも初めてだった。
戦場で没した数多の若者たちは永久にその年齢のままだというタイトルからは、素直に反戦思想をインストールまたはアップデートしたい。

帰還した時のエピソードで映画が締め括られていたことから、この映画のスピリットを受け取った。

「親からは戦争のことを一切聞かれなかった」
「だれも戦争のことに興味がなかった」
「仕事に復帰すると『長い間姿を見かけなかったが、何をしていたんだ?』と言われた」

自分だったら、戦争から生還したとして、その後の長い人生をどうやって生きていけただろう?

とつぜん起きる戦争はない。どんな戦争も、時代の流れがあって、それは終わった後も続いていく。私たちが生きている現在と切り離されるものではない。すべて地続きだということを見つめなければ学びはない。

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