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住宅設計者の自分の家づくり 08 照明計画

照明計画にあたり考えるべきポイントはざっくりと

・どこを何のために照らすか
・照明器具の存在感をどうするか(特に消灯時)

の2つになると思います。

まず「どこを何のために照らすか」という点についてですが、部屋全体を均一に明るくしてしまうとどうしても学校や職場のような雰囲気になってしまいくつろぎの時間を過ごすのには向かず、普段からある程度室内に暗さを残す照明計画をしています。

必要な照度は人それぞれですが、今回はダイニングテーブル、キッチンの作業スペース、読書スペースなど日常的に照度が必要な場所は500~1000lxを、それ以外は床面でおおよそ50~300lxを目指します。

その他に不確定なワークスペースやソファ周りなどはデスクスタンドとフロアスタンドでカバーする予定です。

普段の計画よりやや暗めですが、いざとなれば明るいポータブルLEDランタンもあったりするので問題ありません。

また、同じ照度でも色温度で印象は大きく変わりますが、基本的に全て色温度2700Kで統一します。

ちなみに表記上色温度2700Kで同じ演色性でも実際は各社で色味は結構異なりますので、電球交換タイプの場合は同じメーカーで揃えることをおすすめします。

電球型LEDでは演色性の高さを求めるならフルスペクトルのSORAA社(60W相当のみですがデスクランプや食卓、絵や植物にもおすすめ)、従来の白熱球のフォルム(全方向に光が広がる)を追求するならコスパの良い東京メタルがおすすめです。

調光調色機能付き電球やフィリップス社のHUEのようにIoT化した電球、調光で暗くすると色温度が2000K程度まで低くなるというタイプの器具もありますので電球の選択肢はかなり多様化しています。

最近はLED電球一体型の器具が増えてますが、電球交換型の器具は色々な電球を楽しめるというメリットがあります。


次に「照明器具の存在感をどうするか」です。

多くの設計者が「欲しいのは照明器具ではなく明かり」という考えを持っており、なるべく照明器具の存在感が小さい間接照明やダウンライトなどで全体を構成しがちです。

しかしながらこの手法は灯数が増え、金額も併せて高くなってしまうという傾向があり、今回はコスト面から間接照明は最小限に抑え、既に持っているペンダントライトが5台あるため、これらを活用する方向で検討します。

また個人的な趣味で天井には器具類が極力付いていない空間が好きなので、思い切ってダウンライトやライティングレール、シーリングライトは一切使わないことにしました。

シーリングライトやライティングレールを使わなかった事例は珍しくありませんが、ダウンライトを一切採用しなかった物件は過去に無かったのでちょっとやってみたかった。

照明器具だけではなく、換気扇や火災警報器、点検口などもぱっと目に入る天井面には付けません。

この写真は北林泉の家の広縁です。過去の事例で探してみても天井にダウンライト等の設備が全く付いていない、ある程度面積のある天井はここくらいでしたが、とてもスッキリしてて良いと思います。

今回の計画では、唯一目に付く場所でも天井に付ける器具は前述のペンダントライトですが、これも付け根のカバーが気になるので、目立つ場所では天井面に穴を設けてその奥で設置するように計画しています。

穴から線が出てくるような納まり

引掛シーリングへの着脱は面倒ですが、穴の直径が75mmあれば私の手でもなんとかなります。

ダウンライトを使わず間接照明を抑えると灯数はかなり減り、電灯配線の全数は屋内で17箇所となり、床面積1平米あたり0.2灯でこれは普段の平均の半分程度なのでコストダウンにもつながっています。

また、照明と併せて検討が必要なのがスイッチ類です。

スイッチやコンセントプレートなども目立たせたくないという思いがあり、死角になりつつも普段使いの利便性をぎりぎり損なわないであろうと思われる場所に設置しています。

ベンチ下などの死角になる場所に設置

スイッチの配置については、小さな家ということもあり、集中スイッチのようなものは設けず、照明に近い場所に分散させて設置しています。

また、スイッチの設置高さは一般的には床から1.2m程度が多いですが、0.9mと低めにしています。このくらいの高さだと大人の目線からは比較的目につきにくく、かつ操作上も慣れれば大抵の人には問題ないですし、重心が下がるので天井が高く感じられるという効果もあります。

センサースイッチはトイレが1系統と1階の玄関、廊下、ウォークインクローゼット(廊下への照明も兼ねているため)で3箇所が連動する1系統として採用しています。

玄関と廊下は別系統とすることもありますが、センサーで自動で切れる場合は最近のLED照明の消費ワット数から考えると別にするメリットがそれほど無いように思え、スイッチ操作を減らすことを目的にまとめて、センサー自体もなるべく目立たない場所に設置しています。

明るさのマージンを取るために調光スイッチに頼ることもよくありますが、今回は分散方式による明るさの調整への挑戦(というか主にコスト削減)ということで採用せずに計画しました。

照明の様子をシミュレーションした動画を載せます。

自動露出調整を切っているのでやや暗く見えますが、実際は現在の住まいとさほど変わらず、暗順応によりもう少し明るく感じるはずです。
10年くらい経ってもう少し明るさが欲しくなってもペンダントライトが全て電球交換式なのでより明るい電球に交換することである程度対応できるのではないかと思ってます。

上記は設計中の内容なので、最後に実際の照明の様子を何枚か載せておきます。

※この記事は2019年に自社ブログに書いた内容に加筆訂正したものです
竣工後の写真などは下記リンク先でご覧いただけます。


このシリーズをマガジンにまとめておりますので、こちらも併せて是非ごらんください。

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