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「まなび」と「あそび」

遊びの没入感

どうしたら学ぶことが楽しくなるだろうと常に思っています。ぼく自身、大学入学まで勉強を楽しいと思った記憶はありません。勉強は、大人に強制されるツマラナイものであるはずでした。しかし、大学にそんな大人はもういません。不思議なもので、そうなると学問は自由で面白いものになっていました。
結局、大学院に進学したぼくは朝まで論文とにらめっこするようになりました。もはや勉強という感覚はなく、遊びと表現したほうが相応しいように思います。

漫画の話

読書が好きな子どもはあまり多くないようです。ぼくも高校までに読んだ本の冊数は知れたものですから、他人のことは言えません。しかし、大人になってからは読書にのめり込み、どこに出かけるにしても本一冊は持ち歩いていないと落ち着かない「活字中毒者」になっています。もし小中高生のときから色んな本に触れていたらもっと違う人生を送っていたかも知れないとも思います。

読書のハードルは高く感じる人でも、漫画には簡単に手を伸ばせると言うことはあると思います。“読書の時間“がある学校も多いと思いますが、せいぜい10〜20分程度ではないでしょうか。それは、それ以上長い時間だと集中できない生徒が多いからだと考えられます。長い時間、読書を続けるには訓練が必要なのです。

一方、漫画は違います。日頃長時間集中して授業を受けられない生徒さんに漫画を読んでもらったことがありますが、なんと2時間ほぼ私語なく読み続けることができたのです!(授業をする身としては「この子にも集中力があるんだ!」という喜びと「ぼくの授業は全然マンガに敵わないな…」という挫折感とで複雑な気持ちになりました。)これは娯楽が持つ「没頭させる力」の凄まじさを見せつけられた体験となりました。

ゲームを通じて学ぶ

「ゲーミフィケーション」という言葉があります。もう少し日本語化するならば「ゲーム化すること」とでも言えるでしょうか。遊びの熱中させる力を利用して目的を達成しようとする手法は数年前から注目を浴び、学習や仕事など至る所で活用されています。イコール学習塾でも「遊びながら学ぶ」ということは取り組むべき内容として意識しています。例えば、単純に計算をさせるのではなくタイムを計測して競ったり、英単語もしりとりやクイズ形式にするなど、楽しんで取り組めるよう模索しているところです。

ゲームを上達するために学ぶ

そのようなゲームを繰り返し行ううちに、ゲームに勝ちたい、優位に立ちたいという思いが生まれるのは自然なことです。学校の英語のテストでは上位をすぐに狙えないとしても、例えば先に準備ができるようなゲーム設計をしておけば、勝ちたいと思う気持ちと時間さえあれば上位に立つこともできます。このゲームで優位に立つための準備はゲームの一環なので苦ではない。しかし、これはそのまま学習でもあるので、楽しみながら学ぶことができるようになるわけです。

ゲームに織り込まれた世界観にふれる

ゲームには作者の世界観が反映されています。ゲームのプレーヤーは遊んでいるうちにその世界観に触れることにもなるわけです。例えば、イコール学習塾でも購入したボードゲーム「カタン」はそのストーリー性や戦略性の高さもさることながら、その背後に広がる世界観も魅力の一つです。

カタンでも他のプレーヤーと対戦するわけですが、相手を攻撃したり、何かを破壊したりすることはできません。協力しつつ盤面の発展を目指す平和的な思考に触れていくことは人格形成にとってもプラスに働くように思います。

ゲームを創る

社会変化のスピードはどんどん加速しています。それにしたがい、ゲームのルールもどんどん変わるわけです。これが単なるボードゲームであればいいのですが、本当の意味の「人生ゲーム」で起きているのですからうかうかしてはいられません。これからはトッププレイヤーであることの価値は薄れ、ゲームメーカーであることの価値が強まっていくでしょう。

それを考えるとゲームを創るという行為が、より子どもたちの中でも一般的になっていくべきではないでしょうか。かつてぼくは自由帳の中にマスを描き、キャラクターを描き、架空のゲームを作っていました。そういう同級生がクラスに数人いて、面白いゲームを作っている人のところにより大きな輪ができていたことを覚えています。子どもながらにゲームメーカーだったように思います。

しかし、ビデオゲームの虜になり、他人が作るゲーム(ルール)の盤上でプレイすることが当たり前になりました。もちろん、そういう中にも学びはありますが、野菜のない食事のようでバランスに欠いているような気がします。ルールに沿ってプレイするだけでなく、意図的にゲームを創る側になれるよう、周りの大人も機会を提供してあげるべきだとも思います。きっと遊び道具の欠如がカギとなるのではないか、と考えているところです。


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