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自分にしかできないものを見つけるために誰もができること

まずは例としてLindaの話をしよう。彼女の性格と大学時代の経歴はこうだ。

Linda is 31 years old, single, outspoken, and very bright. She majored in philosophy. As a student, she was deeply concerned with issues of discrimination and social justice, and also participated in anti-nuclear demonstrations.

以下が現在のLindaだ。こ2つの説明のうち、どちらがLindaである可能性が高いであろうか?

1)  Linda is a bank teller.
2)  Linda is a bank teller and is active in the feminist movement.

少し考えてみてほしい。


2番だと思ったのではないだろうか?実はほとんどの人が2番だと答えることがこれまでの研究結果からわかっている[1]。しかし確率論的に言えば、正しい答えは1番であるはずだ。「Lindaは銀行員」という1条件だけを満たすほうが、「Lindaは銀行員でかつ女性運動の活動家だ」という2条件を満たす可能性より高いはずなのは、おわかりいただけると思う。

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このconjunction fallacyについて興味のある方は、文献[1]を参照してほしい。

二つの条件を満たす人は、一つの条件を満たす人よりはるかに少ない

つまり、周りの誰とも違う自分独自の何かを探したければ、いくつかの異なる経験を組み合わせるのだ。

例えば、あのアップルの創業者であるSteve Jobsは、コンピューターおたく、カリグラフィー、インド仏教、そしてそこから派生した日本の禅など、少なくとも4つのファクターが有機的に彼の頭のなかで繋がり、シンプルで無駄のない有機的な製品群を生み出すことになる[2]。

いくつかの異なる経験といっても、それが意味のあるものになるためには、それぞれを極めることが必要だ。「XXでアルバイトをしたことがある」「XXクラブで活動のための新しい方法を編み出した」程度ではダメだ。

しかし何か特別なことをしなければならないわけでもない。例えば私の場合は音楽と科学とグローバル経験だ。それぞれは特別に変わったものではない。理系の道を歩みながら趣味で音楽をやっている人は山ほどいる。その中には海外勤務や留学を経験した人もいるはずだ。しかし私がここに自分のユニークさの芽を見出すのは、それぞれを徹底的にやってきたからだ。

だから科学的・論理的に研究開発を進めながらも、右脳で芸術的・直感的に「あれ、違うな、こっちのほうがいい」という周囲の人とは違った感覚を持てる。普段から英語で考えるようになってから、指揮者としてのクラシック音楽の作り方も日本人の感覚とは違うものにできるようになった。だから「私はどういう人か」は、恥ずかしながらまだ見えていない。しかし心配はしていない。いろんなことに興味をもって挑戦し続けるうちに、見つかるはずだから。

一見つながりのない物事をいくつか徹底的に経験すること。二つのことより三つ、三つよりは四つだ。数が多いほど重なる部分にいる人の数は劇的に少なくなる。つまりあなたは人とは違う珍しい存在となる。それが自分にしかできないことを見つける出発点になる。そこから何を生み出すか、どう活かすかを探せばいいわけだ。

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Reference
[1] Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow. New York: Farrar, Straus and Giroux
[2] Isaacson, W. (2011). Steve Jobs. New York: Simon & Schuster


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