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みなに幸あれ(2024) おばあちゃんの体当たり演技が優勝! 

 ホラー好き界隈では話題になっていたこちらの作品。かねてより噂は聞いていたのでAmazonプライムビデオで見放題になる日を心待ちにしていた。”日本ホラー映画大賞を受賞した短編映画を清水崇監督プロデュースで長編映画化”。こんなにそそる謳い文句があるだろうか。老人×奇行=良作ホラーという黄金律にも当てはまっているし。早速鑑賞したので感想を書いていく。

 <あらすじ>

祖父母が暮らす田舎へやって来た看護学生の“孫”は、祖父母との久々の再会を喜びながらも、祖父母や近隣住民の言動にどこか違和感を覚える。祖父母の家には“何か”がいるようだ。やがて、人間の存在自体を揺るがすような根源的な恐怖が彼女に迫り……。

映画.com

<感想>

 冒頭でも述べたように老人がおかしな言動をする映画は当たりが多い(epona調べ)言わずもがなシャマラン監督のヴィジット、A24制作のX(エックス)、テイキング・オブ・デボラ・ローガン、ドント・ブリーズなどなど。その通り。奇妙で不気味な老人というのは世界各地に生息しているのである。         

 本作に出てくる老夫婦もかなりの奇行を披露してくださるのだが、私は迷わずサムネに採用したおばあちゃん指ぺろぺろシーンが作中で一番強烈だった。見せられている映像への嫌悪感なのか、それとも、この映像にもまだエロを感じてしまう自分に対する嫌悪感なのか…。何と言えば良いのか、今まで生きてきて感じたことのない感情で胸がいっぱいになった。

 中盤までは、この老夫婦をでんでんと大竹しのぶが演じたらパーフェクトだなぁなんて呑気に考えていたが、この指舐め&出産シーンで私の妄想は立ち消えた。国民的大女優にオファーできる内容ではなかった(妻役の女優さんを悪く言う意図はない)


 田舎という舞台をよく活かしており、閉鎖的な環境の恐ろしさ、いわゆる村ホラーの良さを存分に発揮していたと思う。住民同士の「常識」によそ者である主人公は馴染めない。誰も教えてくれない。結びつきが強くなりがちな田舎の長所とも短所ともいえる部分を、上手にストーリーに落とし込んでいるなと感じた。

 本作は「幸せは誰かの犠牲の上に成り立っている」という思想が映画全体のメッセージとなっている。老夫婦の家に監禁されている男は「犠牲」や「身代わり」を具現化した存在なのだろう。資本家と労働者のように、誰かの幸せには誰かの犠牲を伴うということは、まぁそうでもあるし、そうではないとも思うんだけど。

 それに共感するかどうかは視聴者の自由として、犠牲になる人物の選考基準がよく分からず、誰も監禁していないはずの農家を継いだ青年には身体の異変(目が赤くなるなど)が起こらないなど、やや消化不良な点もあった。が、そんなところに突っ込むのは野暮なんでしょ?この手の映画では。


 例のムカデのような”Well, are you insane?”と尋ねたくなるような作品は世の中にたくさんある。それらと比較すると本作はマイルドだし、奇怪な演出はあるにはあるが普段から見慣れている人には物足りないだろう。

 繰り返し出てくる「あなたは幸せ?」という問いを中心に、どんどん格差が広がる社会へのアンチテーゼも感じられなくなくもない。個人的には映像ではなくてホラー小説として活字で読んだ方が面白いだろうなと感じた。

 興味を持った方は是非。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 




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