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【仕事/雑記】お客様は十人十色 その1 慣れないチップでやらかした彼氏さん

バルーンと飲食店と、それ以外にもたまにイベントスタッフなど、色んな面でお客様と関わる機会が多い私の仕事。
その接客は楽しみでもあり、またコミュニケーションの学びでの場でもある。

しかしどこの業界でもそうだろうが、何かしら忘れられないお客様というのはいるもので。
この雑記では、良し悪し、故意過失問わず、そんなお客様とのやり取りを懐かしんでいきたい。

バルーンアート、仲睦まじいカップルの席にて

今から7,8年前の話になる。
若者向けの大衆居酒屋で、20歳そこそこと見える仲の良いカップルにバルーンアートを作らせていただいた。
こんなことしてるんですよ、の導入からとてもいい雰囲気でスタートさせてもらい、ショーの最中も笑顔の絶えないとても楽しい時間になった。
両名にしっかり楽しんでいただき、さて締めるかというところでチップの催促に入る。
このチップ催促はパフォーマーにとって一つの壁なのだが、なんと有難いことに、この時すでに彼氏さんが1,000円札を手にしているのが視界に入っていた。
こういった場合はできるだけ速やかにそのチップを頂き、彼氏さんを立てつつ締めるのが理想の流れだ。
その想定で少し彼氏さん側にチップ入れを置くと、相手もそれに気づいてくれた。
「じゃあこれでいいですか?」とにこやかにチップを差し出す彼氏さん。
「ええ、もちろんです!ありがとうございます!!」と同じく笑顔で返す私。
実にスムーズだ、なんて平和な予定調和。

・・・になるはずだった。

「え、私も出したい!」

彼女さんが、楽しそうに声を上げつつ、財布から500円玉を取り出した。
私も彼氏さんも少々驚いたが、このセリフ自体は何も問題はない。
むしろ、とても嬉しいものだ。
私のショーを見て、ぜひ対価を渡したいとまで思ってくれるその厚意はとても有難いものであり、だからこそ私から断ることはできない。

ここで想定されるパターンは二つ。
一つは、彼氏さんのチップに彼女さんのチップが加算されるパターン。
もう一つは、彼女さんのチップを彼氏さんに渡し、二人で1,000円のチップになるパターン。
売り上げとしては前者が嬉しいのが本音だが、後者だとしても文句があろうはずがないし、彼女さんの言葉だけで私の満足度は120点だ。

ところがここで想定外の事態が起きる。

「あ、そう?わかった!」
そう言って、彼氏さんが持っていた1,000円札を引っ込めたのだ。
彼氏さんの顔を見ると、相変わらずの素敵な笑顔。
そう、彼に他意はなくただ単純に、彼女さんの「チップを出したい」という言葉を額面通りに受け取ってしまったのである。

残ったのは、彼女さんの差し出した500円玉のみ。
「鳩が豆鉄砲を食らったような」とは、あのような表情を言うのだろう。
彼女さんのあの顔を、私が忘れることはない。

しかし、まさか彼氏さんにまた1,000円を出してほしいと言えるはずもなく。
彼女さんも鳩豆顔のまま500円をチップ入れに置くしかなく。
彼氏さんは上機嫌で、私の締めの言葉を待っているというなんとも微妙な空気が仕上がってしまった。

悔しいが当時の私はまだ未熟で、お礼と挨拶を早急に終え、その場を去るしか選択肢がなかった。

今でこそ笑い話になるが、現場ではそれどころではない
あんなに仲の良かったカップルが険悪になってしまったら。
最悪もしこの件で別れることになったら・・・。

そんなことを想像すると、その後のテーブルの様子は怖くて見ることができなかった。

果たしてあの場の正解はなんだったのだろう。
彼氏さんの若気の至りと言ってしまえばそれまでだが、私自身の誘導ミスでもあり、トークでカバーできたかもしれない。

今でも時々思い出し、答えのない問題に思いを馳せるのであった。

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