【物語/詩】砂糖の南極

 透明な薄紫色のゼリーのペンギンが甘くて冷たい琥珀糖の氷塊の上でスケートをしています。
 もちろん、海は青くて甘いソーダ水。ナタデココの氷と炭酸泡がシュワシュワ波打ちます。
 薄紫色のペンギンが海でしばらく泳ぐと、その透明な体もちょっとしゅわしゅわ炭酸になりかけてしまいます。パチパチ感がくすぐったい程度で本人は気にしません。
 この甘い南極で薄紫色の透明なゼリーでできたペンギンは、琥珀糖の黄色い星を見つけました。大昔、ここにはたくさんの星が降り注ぎ、氷の上に落ちたものだけは、そのまま氷砂糖漬けになって残ったのです。
 大きな黄色の星を背負って持って帰りたかったペンギンですが、よく見ればあちこちに落ちていてありふれたものらしく、となれば宝物にできるわけでもなさそうなので、一口齧ってみることにしました。甘いレモンの香りの星でした。
 白い曇り空一面の世界、水平線遠くまで、ゼリーとソーダ水。ペンギンたちは仲良く遊び、海にはゼリーの魚たちも泳いでいます。アイスクリームの氷山と、粉砂糖の吹雪も日常風景。

甘さと透明なものでできたこの風景はどこまでも広がります。
あなたのためならば、容易いことです。
費用の限度はなく、材料は無限であり、
手間なんてちっとも苦にならない。
幻想に与えられる価値は無窮であり、
誰にも否定されることを許さない。
あなたが私にくれたこの宝物を、私はずっと大切にして、もっと遠くまで広げていく。
あなたが真実の夢を忘れ、それをありふれた批判にさらすときも、
傷ついたあなたの皮膚を私が守り、
あなたの最も怖れる旅立ちの階段の先の一歩も、
必ずあなたの手を引いて行くと、既に約束をしている。
あなたのためならば全てが自然なことで、対価など一切要らない。
あなたが小さな頃に割って支払った、あの美しいガラス瓶の中の宝石たちのために悲しむ必要もない。
恒星が何度か破裂して撒き散らした宝石の元素が、流れ星となって地上へ降り注ぐとおりに、
あなたのためにいくらでも物語を。
壊れることのない物語を、
あなたのために限りなく。



あとがき

これは、私の詩、永遠少年症候群〜鯨の夢の続きでもあります。
ノトスもペンギンだったし、私はペンギンが好きなのか?と思われそうですが、ペンギンが好きと思ったことは今まであまりなかったです。単に海が好きだからとか?かなあ?

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