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私が好きな詩

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#俳句

あまりっ子と芸術

あまりっ子と芸術

蛸壺(たこつぼ)や はかなき夢を 夏の月
松尾芭蕉

芭蕉がタコ漁の名所、明石を訪ねたとき作った俳句。

日持ちするタコは夏のごちそう。タコつぼに入ってのんびりと夏の月夜に寝ているけれど、朝には引き上げられて食べられてしまう。

弟子の杜国とともに明石に遊んだ時、吟じられた俳句。芭蕉門下の句集である「猿蓑」初出。死後、弟子によってまとめられた紀行文、「笈の小文」の最後をかざる句。

杜国は豪商の跡

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生活と歌

生活と歌

是がまあ ついの栖か 雪五尺

小林一茶

江戸時代の後半になると社会が豊かになった。特に江戸への人口と富の集積が大きいように思う。その中で印刷の普及が進んだ。どんな家でも浮世絵の美人画が一枚だけでも飾られたりする。それで絵描きはパトロンなしに食べていけるようになった。

源氏物語といった古典が普及したのも印刷文化のおかげだ。どんな境遇の人でも文学を勉強するチャンスができる。そうして裾野が広がった

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夕日が美しいと感じるのは

夕日が美しいと感じるのは

菜の花や月は東に日は西に

与謝蕪村

与謝蕪村は大阪の桜の名所、毛馬閘門(けまこうもん)の辺りの人らしい。明治のころ、淀川の洪水に悩む人々のために作られた近代的な水利施設だ。かつて、大阪城の北のこのあたりは農村だった。

蕪村はそこでちょっと裕福な農家とその女中の間に生まれたらしい。だが、母が亡くなると大阪の家を出て、一人で秩序からはずれて俳諧師として生きた。

先日、橋本治の人はなぜ「美しい」

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笑って過ごそう

笑って過ごそう

紅梅や 秘蔵の娘 猫の恋

正岡子規

 正岡子規が好きです。

 わざわざ、小学校の時、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」が確かめたくて法隆寺に行きました。図書館にあった全集にこの俳句につながる随筆がありました。口減らしにまわりの寺で僧侶になった少年がめそめそと泣いている風景を描写したものでした。まだ、法隆寺のまわりには少年が居そうな刈り取り終わった、広い田んぼが残っていました。明朗で優しい悲しみ。

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