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映画TENET(テネット) 誰も語っていないガスマスクの謎

難解、謎が多い、辻褄が…といろいろ議論が上がっているクリストファーノーランの映画TENETを観た。

色々考察する余地があってそれも含めて面白いと思ったのだけど、色々書く前にまず、ネット検索をしても答えの見つからない、誰も触れていない謎があるのでまずこれを書きたいと思った。

もしかしたら単なる自分の勘違い、別に普通のことでだから誰も触れないのかも…と少し不安だけど、どうしても気になるので書こうと決めた。

※完全にネタバレです


ラスト、スタルスク12の決戦シーン、ガスマスクの謎

今回、気になっているのはラストのスタルスク12での決戦シーン、そこに付けていくマスクの話だ。

と言っても、ニールが付けている逆行組の酸素マスクではなく、主人公が付けている防毒マスクの方。

※以後、引用している画像はテレビ画面を写真に撮ったもの


左右反転?鏡映しの主人公

まず、こちらを見て欲しい

左ほほ 1

映画後半、過去に戻るために滞在した船から決戦の地スタルスク12へと向かうヘリの中の主人公。

この時の主人公が付けているガスマスクを見て欲しい。

ガスマスクのあごの部分、画像向かって右、主人公側から言えば左ほほ側に円盤状のフィルターが付いている。

この後、スタルスク12の決戦に向けた前線のベースキャンプへと到着し、ミッションのブリーフィングを受けた後に映画ラストの決戦へと物語は進む。

問題はこのブリーフィングの後、戦地に乗り込むためのヘリの中のシーンだ。

03右ほほ

ここで先程のガスマスクのフィルターを見て欲しい。
船から出発するヘリの中とは逆の右ほほ側に付いている。

よく見るとヘルメットから片耳にだけ伸びている通信機?のようなものも1枚目の画像と左右逆側についているように見える。

つまり、主人公が何故か左右反転、ちょうど鏡写しの状態になっているシーンがある。

実はこのガスマスク、1枚目の画像で見える通りフィルターがある側の逆側にもキャップの様な物があり、ネットで調べたところ、どうやら円盤状のフィルターは左右どちらにも取り付け可能らしい。

ということで、船から出発後ブリーフィングを受けて戦地に行くまでの間に装備の左右配置を変えたという可能性もこの時点ではあるのだが、映画を見ていくとそれもあり得ないということになる。


スタルスク12でも左右反転する主人公

次はこの画像から。

04左ほほ 出動

スタルスク12に到着しヘリから外へ飛び出す主人公。

そして

かける

ヘリから降りて戦地を走る主人公

今度はマスクのフィルターが左頬側になっている。

つまり、話の辻褄で言えばヘリの中でまたフィルターを付け替えたことに。

さらに映画は進み、ド派手にビルを攻撃する決戦5分のシーン

05左ほほ 5分

様子を伺う左頬側にフィルターの主人公

画像7

5分ちょうどのカウントをする隊長アイブスもフィルターは左頬側
(確認できる限り他のシーンでもその他部隊員全員フィルターは左頬側で統一の様子)


07時計

腕時計のアップになりこの直後、ビルへ向けた順行、逆行二組同時のロケット発射となったその直後に次の主人公のアップが

08右ほほ5分後

ここで急にマスクのフィルターが右頬側へと反転する。

流石にこれは途中でフィルター付け変えたとは考えられない。
そもそも、放射線物質や毒ガス攻撃の可能性を考えてのマスクであって、そのフィルターを現場で交換するのはまずないだろうし、調べるとこのフィルターは数時間交換しなくても問題なさそうで、10分やそこらの作戦で交換しなければならない理由は一つもない。

更に言うとこの最後の画像では左右の腕にある順行組の印の赤い布も肩と二の腕の位置が左右逆になっており、マスクフィルターだけでなく、主人公全体が左右反転しているのが分かる。

右頬にフィルターがあるのはこの一瞬だけで、この後は再びマスクのフィルターは左頬側になり、その後、地下を脱出するまでずっと左頬側の主人公のまま話は進んでいった。


09左ほほ 地下脱出

地下から脱出した主人公を見ると赤い布も左右入れ替わっているのが確認できる。

よく見るとフィルターに印字されているマークがあったり無かったり、傷があったり無かったりとそのあたりも変わっているのだけど、まぁそれはフィルター自体はクルクル回るのかもしれない裏側になっただけかも…ということも可能性としてはあり得るのでおかしいとは言い切れないが、とにかく、これは単に撮影のミスなのか?それとも何か意図があるのか?意図的ならその理由は何なのかを考えてみたくなった。


左右反転は単なるミスなのか?

個人的にはこれは意図的だと感じている。

理由は主に3つ

まず一つはこの映画は順行逆行という混乱するシーンが多く、撮影した映像を逆再生して作った部分もあるようだけど、単純な逆再生では左右は反転しないということ。
もっと言えば別に逆再生等特殊な撮影をしなくてもいいただの顔のアップのシーンでもあること。

次に、物語に直接関わりのない、無くても良いシーンであること。
もし本当にミスでこうなってしまった場合、カットしてもストーリー上特に問題が無い。

最後に、もし本当に単純なミスなら撮り直さないか?ということ
この映画のために本物の飛行機まで用意しているのに、こんな単純なミスの修正をしないのはあり得ないと思う。

また、完全に誰も気が付かずに…と考えることも難しい。
何故なら、ラストのスタルスク12の決戦シーンには数多くのエキストラ兵士がおり、その全員が同じ左頬側にフィルターを付けているから。
ここまで統一しておいて主人公のアップの一部だけミスで逆ということはあり得ないと思う。


逆行世界から見ても左右反転は起きない?

左右反転が意図的だとしたら、もしかして逆行組の視点で順行側を見ると左右反転になっていた?と思ったが、これは違っていた。

例えばラストのスタルスク12での決戦で逆行組のニールがヘリから降りてすぐ、順行組がヘリから後ろ向きに降りる(戦い後ヘリに乗り込む逆再生)を見るシーンがあるが、そこでも順行組のマスクは左フィルターで左右反転していない。

正直なところ、このTENETという映画は全てが完璧に辻褄があっているわけではなく、矛盾点もあると感じているので逆行世界からの視線ということも無いとは言い切れないが、それは少し無理やりな気がするし、主人公のアップを逆行視点で見せる理由も無いように思われる。


主人公は二人いた?私の妄想、考察

ここからは完全に私の妄想、勝手な解釈を書く。

左右反転がミスでなく、また順行、逆行の表現でもないとした場合、単純に、右側フィルターの主人公と左側フィルターの主人公の二人が存在していたということではないかと私個人は思った。

ただし、それにもいくつか考えられる可能性がある。


①主人公が何度も順行、逆行を繰り返し決戦に繰り返し参戦している

まず考えられるのが、主人公が同時間帯に何人もいて、その複数人が映画ラストのスタルスク12決戦に参戦している可能性。

劇中でもラストの決戦は映画の冒頭のオペラハウス襲撃と同日。
この時点で主人公はラストの決戦に参戦している主人公と、映画冒頭のオペラハウスの作戦に行っている主人公の二人がおり、さらに決戦後を含めると3人の主人公が存在することになる。

となれば、映画での決戦後、もう一度逆行して、順行になって再び決戦に参戦することも可能なはず。

あの戦地には複数の主人公がいて、密かに活動していたという可能性が考えられる。
その場合、何故そうしたかという理由は分からないが…。


②実は壮大な挟み撃ち作戦のもう一つはパラレルワールド、鏡面世界との挟み撃ちだった。

個人的にこうだったら面白いと思う妄想がこれ。

実はこのテネットと言う映画では時間の向き順行逆行の挟み撃ち作戦の他に、劇中では語られない鏡面世界のパラレルワールドとの挟み撃ちも行われていた。

左右反転の主人公は実は同時進行しているパラレルワールドを示唆する一瞬のシーン。

自分でもかなり無理やりだとは思うが、個人的にはこの解釈が一番気に入っている。


TENETと言う映画ではこのタイトルの通り回文(前から読んでも後ろから読んでも同じ文章)がキーになっており、それは劇中に登場する絵の作者であるゴヤの代表作に関連する。

これについては別の記事に詳しく書こうと思うが、とにかくこの部分を辿って行くと『SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS』という実在する古い回文に行き当たる。
その実際にある石碑の並びにすると

画像11

ちょっと歪んでいるが、このようになり、左右の回文だけでなく、上下でも回文になっている。
例えばこのSATORは劇中のセイターだし、その逆読みのROTASは空港の倉庫を管理している回転ドアがあった企業のロータス社。
他にもアレポ、オペラ、テネットとこの映画のキーになる回文なのは間違いない。

この点は他の解説サイトでも見かける部分だが、私が気になったのは、時間逆行の物語を一つの回文とするなら、この石碑の縦読みの回文構造については一切無視されているのではないかということ。

上の画像を左上から横にSATOR、AREPO…と読んで行き、それと逆行する形で右下のSからSATOR…と回文を読むのが順行逆行の映画の物語とするのなら、もう一つ左上から下に向かっても読める縦読みの回文構造については、実は劇中では語られていない、パラレルワールドの物語があるのではないかと思った。

そして、この映画に関してはそのうちの時間の順行逆行について語られた物語であり、だからこそこの映画の理屈に矛盾が生じるのではないかと思う。

もちろん、これは私の勝手な推論とも言えないもはや妄想レベルの話だ。
正直に言って、これを投稿する今現在ですら、このガスマスクの左右反転の問題について、これだけ多くのテネット解説がネットにあって未だ、他に語っている人を見つけられないでいることに何か自分が壮大な勘違いをしているのではないかと不安で仕方のないレベルなので、自信なんてこれっぽっちもないのだけれど…。

もし、このガスマスクについて何か分かる方がいるのなら教えて頂きたいとすら思いつつ、この辺で終わります。

おまけ TENETのNについて

TENETの話をしたついでに少しだけ書いておこうと思う。

この映画は語られていない謎の部分やそもそも現実の理屈と矛盾する部分を多分に含んだ映画なので、結局こうじゃないかなーと自論を話し合うのが楽しい映画だと思う。

私も、これからちょっと書いてみたいなという妄想がもう少しあるが、とりあえず今回『SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS』の話をしたついでにその中心である”N”について少しだけ書いておくことにした。

私自身はNには色んな意味が含まれていると思っている。

例えば劇中のキーアイテムであるアルゴリズムをずっとプルトニウム214だと思い追っていたが、核物質のNuclearのNや、登場人物のニールのNなど複数の意味があると思う。

その中にNOWのNもあるのではないか

順行逆行、運命の話、私の妄想だがパラレルワールドのifの話、色々あるけどその中心は『今』なんだという話、今、その場にいる自分が主人公なんだという意味があるのではないか?と思う。

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