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栗界の憧れのヒトに出会えました


遠州・和栗プロジェクト事務局の宮崎です。

岐阜県東濃地域といえば、全国屈指の栗の産地であることはもちろん、「栗きんとん」が地元の銘菓として有名な地域だ。栗きんとんを売る和菓子屋は数多くあるが、地域の生産農家と連携し、栗のブランド化に力を注いでいる菓子製造会社がある。その会社が、株式会社恵那川上屋だ。その代表を務められている鎌田社長を今回はご紹介したいと思います。

◯きっかけは「地域の栗の再生」

遠州・和栗プロジェクトと同様のきっかけからスタートしていた。
春華堂では「栗むし羊羹」を製造販売していたが、地元の栗の不作により、他県の栗を仕入れるようになっていき地元栗を謳った商品ではなくなった。東濃地域の菓子屋でも、地元の栗だけでは足りなくなり、市場から栗を仕入れるようになった。その結果、地元の栗も市場にしか出荷先がなくなり、規模の大きな他産地との競争で安く買い叩かれるようになり、多くの栗農家が廃業に追い込まれた。さらに、市場経由で収穫から時間がたった栗を使うようになったため、栗きんとんの味が昔とは全く違うものになってしまったのだという。「先ずは、社会や地域、そして地元の人々のためになる事を三本柱として考えました。それら3つのことを実現するためには、もう一度、この地域の栗を復活する必要があると考えたのです」と鎌田社長は語る。まずは、恵那山の麓の地域で育てた栗「恵那栗」を有名にして広げていこうと考えたそうです。そのため、遠州栗・掛川栗にも共感いただけたことはとても嬉しかったです。

◯超特選恵那栗部会の発足

驚いたのは、1988年に栗の仕入先である生産農家との間で厳しい「栽培・出荷条件」を定め、その条件をクリアした農家の栗を通常の倍の価格で買い取るというルールを仕組み化。恵那川上屋が全買取全販売を約束することで、生産者は良い栗をつくり、良い選別を行い、大きな栗を出荷することに専念できる。良質な栗をたくさんつくれば高い収入につながるという農業の原理原則を実現することで、生産農家の意識向上が行われていた。一番大切なことは、生産者が意思決定して育てているかと話されていた。「自分の畑に愛着をもてるか」を大切にし、「農家に自信をつけさせること」「地域に自慢をつくること」を着実に一歩一歩実現していった。自分たちの地元を持っていって語れる価値を、自分たちで創り上げていく活動を遠州・和栗プロジェクトでもしていく必要性を感じました。

◯超低樹高栽培

さらに、栽培条件としては「土づくり」の段階から徹底管理され、「超低樹高栽培」と呼ばれる剪定技術を導入したという。超低樹高栽培とは、効率的に枝を払うことで樹木に日光がよく当たるようになり、栗の実が大きく成長するようになる剪定技術のこと。こうして栗の収穫量も増え、安定供給が実現したのである。全国でも唯一無二の反収量を誇る恵那栗へと栽培面でも革命を起こしたのです。「超低樹高栽培は、“栗の第二の始まり”とも言えるものなのです。この技術を様々な地域で指導していくことで、日本の栗を将来に残していこうと考えました。そんな中、県と農協が剪定士や指導者の資格制度を設立してくれたのです」と鎌田社長は語る。上記の取り組みの結果、恵那の地域では、若手の新規栽培者が増えていき、若い人が儲かる仕組みを創り上げていて、高齢化が進む農業課題を解決している。現状、掛川市栗部会でも高齢化問題や後継者不足の問題に大きなヒントになると感じました。

◯地元で加工・販売する価値と責任

栗の鮮度を保つために先ずは、生産・加工・販売の全てを地元で行うことからスタート。収穫した栗を24時間以内にペーストへ加工し、加工しきれなかった生栗はCAS冷凍システムを使って保存することで、いつでも採れたての美味しさをキープすることに成功。「弊社の菓子で使用するための栗は、でんぷん質が糖に変わってはいけないのです。採れたてのでんぷん質が強い状態で加工することが弊社の特徴となっていますが、早く加工するためには、地元しかないのです」と鎌田社長は言う。美味しい栗菓子を提供するための加工技術や機械化を進めることで、恵那栗の価値を成長させてきたのだと感じた。採れたての栗の加工を実現していくことで、栗菓子を購入いただく地元のお客様に地域の自慢の品として認めてもらえるようになる。契約栽培において生産者と加工・販売者は車の両輪でありどちらかが無くなれば成り立たなくなってしまう。このような農商工連携では価格を下げてしまうと失敗する事例が多い。商(工)業者は価格を上げ続ける責任(努力)があります。

◯和栗を世界に発信していくこと

100年先も愛される里の栗づくりを目指し、鎌田社長は培ったビジネスモデルを全国へと展開。北は北海道から南は九州と加工場や超低樹高栽培を広めていった。さらには、信州伊那栗を使った菓子で人気の「信州里の菓工房」(長野県)や世田谷栗で作った菓子を販売する「恵那川上屋 二子玉川店」(東京都)などの直営店を設立。栗を使った地域の菓子文化づくりにも貢献。ここで面白かったのは、そうした取り組みを行うことで、信州では梨から栗に変更して栽培している農家が増えているという。静岡県のお茶や柑橘から栗への変更も可能性は大いに考えられる。
遠州・和栗プロジェクトと同じ目標をもっていて、日本の和栗の魅力を世界に届けたいと共感いただきました。各産地が競争するのではなく、共創し合う文化を作ることで、より和栗の価値を高めていけるのではと話は尽きることはありませんでした。全国の産地や生産者を訪れることで、栗を通じて日本の抱える農業課題を解決していくことはできると実感しました。これからも、同じ志を持つ同志にお会いする旅を続けていきたいと思います。

◯鎌田真悟氏プロフィール

岐阜県生まれ。高校卒業後、東京で洋菓子修行、地元中津川での和菓子修行を経て、現在の前身の有限会社ブルボン川上屋に入社。
2012年3月に農業・食料産業イノベーション大賞を受賞、2013年5月には関連会社の有限会社恵那栗が耕作放棄地発生防止・解消活動表彰で農水省農村振興局長賞を受賞。2014年11月には6次産業化優秀事例として農水省食料産業局長賞を受賞。また2013年には明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科に入学し、2015年9月に終了、MBAを取得した。

クリ千手観音

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