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久しぶりに小説を一気に読んだ

「傲慢と善良」人気らしいと聞いて読んでみた。

以前は、好きな作家の小説もよく読んでいたのに、最近は仕事に関するものやノンフィクションに偏っていたので、小説は数年ぶりかもしれない。
恋愛ミステリーということで興味が持てるか、思ったより厚みと重みがある文庫を手にした気持ちに反して、ページを開くとあっという間に読了。

これは、恋愛婚活を題材にしているけれど、人が選択する時の思考や無意識の反応と行動を深く鮮明にあぶりだしている。
これは恋愛小説なのかな?
婚活を舞台に男女が織りなすドラマではあるけれど、人と人の潜在意識のなかに確かに存在する歪みやずれや弱さを描かれている。

婚活や恋愛をしている人は自分事としてかなり痛いのではないかな。恋愛や婚活はもう終わった人なら思い返して、そうでない第3者として読んでもチクリと刺さる人は少なくないのではないかしら。

登場人物には特別な人はひとりもいない。ごく普通に身の回りにいる誰かと重なるどこにでもいそうな人たち。婚約者の男性の友人や女性の家族や、女性の行方を探して出会う人たちも、何かや誰かを選択している人たちとして描かれている。読んでいるうちにすべての人物に自分が重なり、痛みや疼きを感じはじめていた。

舞台が東京から実家のある地方へそして東北の被災地へ移動するたびに、わたしの中にはリアルな映像をみることができた。日常では表面に出ることがない、けれど、確実に私たちの中で起きていることを詳細に分析し明確化することで、息遣いや温度や流れる風までも感じられ、本を読みながらまるで映画のように私には映像が観えていた。

この小説は、恋愛婚活中の人には刺さりすぎるか腹が立つかのどちらかだろう。けれど、どんな人が読んでもきっと、どこかや誰かと自分と重ねて刺さるはずだ。小説なのだけれど、いつのまにか自分の中に深く降りて、もう一人の自分が自分を見つめはじめる。まるで心理を探るワークを無意識にしているような不思議な作品。

彼らといっしょに物語の中を歩きながら、自分の内面と向き合い気づき、本を読み終える時には、静かに自分の中に答えを見つけて心が軽くなる。
刺されば刺さるほど、読み終わると軽くなっているのではないだろうか?

恋愛小説なかなかいいぞ。
また小説を読んでみようと思う。

掬乃ジュンコ


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