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ITお化け屋敷「怨の家」総合ディレクターを行って感じたこと - IT×お化け屋敷「怨の家」制作裏側

岐阜県大垣市の古民家をリノベーションしたイベントスペース「ennoie ミドリバシ」を貸し切って開催したお化け屋敷「怨の家」(主催:合同会社4D Pocket×カラメル、協力:HOPTER TECH SCHOOL)。
その制作の裏側をお見せします。

IT×お化け屋敷「怨の家」総合ディレクターの青木 聖です。
私は岐阜県にてWEBコンサルタントを行いながら、ITクリエイターとして活動をしています。
そんな私が、お化け屋敷の総合ディレクターを行うまでの経緯や気づきを掲載します。


1. ITお化け屋敷の総合ディレクターを行うまでの経緯

ITクリエイターとしての活動の一環としてお化け屋敷の総合ディレクターを行うこととなりました。

私が学生の頃からお世話になっている恩師からお声がけいただいたのがきっかけです。
ITをより一般の方に認知していただくため、展示会ではなくエンタメとして触れやすいお化け屋敷を展示会とするものです。
そのため、「怨の家」は「ITお化け屋敷」と名乗っています。
立ち上げの背景については、↓をご覧ください。
https://note.com/ennoie_staff/n/nb6e81622804e

イベントの総合ディレクターの経験はありませんでしたが、他に類を見ないお化け屋敷に関わることができるということと、自身のステップアップを考え、総合ディレクターとして参加しました。

2. ITお化け屋敷の運営が非常に難しいと思う理由

ITお化け屋敷「怨の家」は通常のお化け屋敷とは違う特徴が3点あります。

1点目は、お化け役が存在せず、驚かす要素はすべてITを用いたギミックであるということ。
2点目は、古民家を一軒貸し切って、一方通行型ではなく、体験者が自由に行き来し、ギミックを攻略し進んでいくこと。
3点目は、そもそもスタッフがお化け屋敷に行ったことがないことに加え、ホラーというものに知見がないということ。

運営側は人間ではないためアドリブが難しく、体験者側に流れが存在しないため、ある程度動きを予想しなければいけない。
しかし、お化け屋敷やホラーに知見がなくどうしても憶測で考えるしかなくなる。
スタッフの中には、夜に怖いコンテンツを見ると寝れなくなるからリサーチには時間がかかるなど、当初は通常の展示会の方が良いのではないかと、個人で思い直すことも多々ありました。

そんな、無謀といっても差支えないように思える状況でした。

3. ITお化け屋敷の総合ディレクターを経て気づいたこと

私が気づいたことは大きく分けて、お化け屋敷という業界、総合ディレクターという不自由さの2点があります。

お化け屋敷という業界

私が総合ディレクターと兼任し、広報活動を担当したことによりはっきり気が付いたことです。

お化け屋敷という業界は、多くの会社が台頭しているわけではありませんでした。
有名な専門企業やディレクターが制作したお化け屋敷が、様々なニュースや記事に繰り返し取り上げられていることがわかりました。

また、お化け屋敷というコンテンツが、コロナや時代により新規参入が厳しいという状態に見えます。
ホラーも次第にニッチ化が進んでいるようにも思え、一般的に気持ちの良い快作ホラーコンテンツというのが忘れ去られつつあるのではないでしょうか。

その中で、どのようにお化け屋敷という文化を残すのか。
慣れている専門会社や著名なディレクターはそこがやはり上手いと感じます。

トイレの個室に入り、都市伝説である「トイレの花子さん」をモチーフとしたお化け屋敷や、救急車自体がお化け屋敷であり、常設ではなく移動を可能にしたお化け屋敷など。
日々、情勢を見ながら適応をし、必死に生き残っているコンテンツでした。

私は、私たちの専門であるITを用いたことが、「怨の家」というコンテンツのフレーバーとなる物であると気がつきました。

お化け屋敷内部の照明をコントロールするための装置

総合ディレクターという不自由さ

お化け屋敷は、規模にもよるでしょうが、大抵は大きなプロジェクトとして運営されます。
例に漏れず、「怨の家」も20人弱ほどのメンバーで始動しました。

チーム活動を経て感じたことは、総合ディレクターという不自由さです。
自己の世界を表現すべき総合ディレクターという立ち位置でしたが、私含めチーム全体がホラーコンテンツに対し知識が浅いのが、非常に大きい爆弾でした。
体験者のホラーコンテンツに正解はないと理解はしていますが、正解の方向はあると感じています。
ただ、知識が浅いために、その方向をチームで一元化することが非常に難しいです。
歴史背景や雰囲気、ストーリー展開など、各々に知識がないために、作業が進んで進んでからようやく議論になり止まるという進行となってしまいました。先回りの思考ができておらず、また脳内のコンテンツを文書に書き出した際に、何%伝わっているのかが見えないことも原因の一端として感じられます。
個人での制作であるならば、思うがままに脳内からアイデアを引き出し、形成をしていくことができます。知見のあるジャンルのチーム活動であれば、ディレクションの経験はあるため、船頭として方向を決めることもできました。

お化け屋敷というジャンルに立った時、私自身も前が見えていませんでした。
そこからは、自己の世界を出すというより、スケジュール・打ち合わせの取りまとめ・議事録と自己の世界に靄がかかり始めていました。
コンテンツに対し「こだわる」ことが難しいと感じてしまったためだと感じます。

私は制作物は自身の子供であると考えます。
けれど、その子供の形が、親の私にとって非常に輪郭の無いぼやけたものとなってしまいました。

4. 今後の進行について

現在も正解を自分の中で導き出せず、暗中模索を進めています。

総合ディレクターの共有は長いなど、クレームが入る時もあります。
ただ、それは「こだわり」ではなく「作業」になってしまう前触れなのではないかと恐れています。

私自身も間違っているかもしれないし、それにチームを付き合わせている可能性もあります。

時間をどこにかけるのか。
何に情熱を注ぐのか。
長期のプロジェクトで、短期に入ってくるものに対し、優先順位をどのように扱うのか。

このプロジェクトでは悩みは尽きません。
社会人との並行という立場もあいまって、チームの時間を制約してしまうこととなります。

こだわることは、偉そうに指示を出すことなのか。
自分の中で重く捉えておく。けれども、譲らない自信をもつ。

開催の日まで模索を続けることこそが、未熟ながらも前に進むための行動なのではないかと考えています。
この「怨の家」を私の子どもであると胸を張って言えるために、今は頭を抱えていこうと思います。



この家にあの子は奪われた――
ITを用いた驚かせ役がいない前代未聞の無人お化け屋敷「怨の家」
日時:8月27日(土)・28日(日)
参加:完全予約制(32組限定)
場所:ennoie ミドリバシ(岐阜県大垣市西外側町2丁目46)
https://ennoie.4dpocket.co.jp/

「怨の家」スタッフ
【プロデューサー】石郷 祐介(合同会社4D Pocket)
【総合ディレクター/演出】青木 聖(カラメル)
【アートディレクター】中村 魁斗(HOPTER TECH SCHOOL)
【テクニカルディレクター】佐藤 宏樹(カラメル)
【演出補佐/撮影/広報】清水 亮太
【演出補佐/デザイン/Web】出口 瑞渉(HOPTER TECH SCHOOL)
【デザイン】小寺 真里亜(HOPTER TECH SCHOOL)
【開発】間宮 祥太(サン企画)、石原 武流(HOPTER TECH SCHOOL)、木村 俊行(HOPTER TECH SCHOOL)、地海 斉樹(HOPTER TECH SCHOOL)、若林 亮吾(HOPTER TECH SCHOOL)、江﨑 亜美(HOPTER TECH SCHOOL)、奥村 元春(HOPTER TECH SCHOOL)、後藤 翔哉(HOPTER TECH SCHOOL)、中島 暢慎(HOPTER TECH SCHOOL)、深尾 真矢(HOPTER TECH SCHOOL)、山田 さくら(HOPTER TECH SCHOOL)


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