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【美術展】精緻で、洗練されていて、優雅で、愛らしい/東京国立博物館・本館

初めて行ったときは東洋館に時間を取り過ぎて、本館が駆け足になってしまった。カルティエ展と源氏物語図がメインではあったが、本館の展示も丁寧に見たい。それにしてもいつも外国人が多い。


会期・2024年7月9日(火)~8月4日(日)の印象深かった作品のご紹介

屏風と襖絵―安土桃山~江戸

★幽玄かと思いきや穏やかな「山水図屏風」狩野山楽

「山水図屏風」狩野山楽 安土桃山~江戸時代・17世紀

雪景の山水図屏風と一対で伝わっているが、落款印章の位置や構図からみて一対ではなく、別個の作品だろう。

東京国立博物館
「山水図屏風」右隻 部分
「山水図屏風」右隻 部分

配置してある人物の「ひょっこり」感と穏やかな表情がいい。

暮らしの調度―安土桃山・江戸

★「単衣ひとえ 浅葱あさぎ絽次ろじ春景しゅんけい模様」

単衣ひとえ 浅葱あさぎ絽次ろじ春景しゅんけい模様」江戸時代・19世紀

単衣とは、しゃといった薄物の単仕立ひとえじたての着物のことで、夏季に着用する。桜を遠景に、松、竹、梅、葦などの植物がある水辺風景は、江戸時代後期の武家女性の形式的な衣装のデザイン。矢・短冊・兜といった景物は、謡曲ようきょくえびら」をモチーフとした模様と考えられる。

東京国立博物館
単衣ひとえ 浅葱あさぎ絽次ろじ春景しゅんけい模様」裾の部分
兜、松が見える


★「単衣ひとえ 萌黄もえぎ絽次ろじ流水梅竹鴛鴦おしどり草舎そうしゃ模様」

単衣ひとえ 萌黄もえぎ絽次ろじ流水梅竹鴛鴦おしどり草舎そうしゃ模様」江戸時代・19世紀

江戸時代後期の武家女性の夏の衣装。振袖になっていることから結婚前の若い女性の衣装であることがうかがえる。梅が咲く水辺には、おしどりの夫婦が刺繍であらわされ、一見、新春の景色となっている。夏季の衣装でありながら、冬の景色を表わすことで涼を誘う趣向。

東京国立博物館
単衣ひとえ 萌黄もえぎ絽次ろじ流水梅竹鴛鴦おしどり草舎そうしゃ模様」裾の部分
梅とおしどり。おしどりは左から子、親、親、子と配されている、なんとも可愛らしい。

衣装が展示されていると思わず、裾や袖口を見てしまう。うっすら汚れている。これらを纏って生きてきた女性たちが確かにいたのだな、と当時に思いを馳せてしまう。


★外国人のboyも釘付け「水滴すいてき

男の子の丁度目線の位置の展示となっていたせいもあるのだろうか、かぶりつきで見ていた( *´艸`)

「水滴」三口

水滴は硯で墨を擦る際に注ぐ水をいれる器。江戸時代には、銅や真鍮を用いて、身近な動植物をかたどったユニークな形のものや、七宝を施したきらびやかな作品が作られた。本品の柔らかな形と風合いにも、原型を蝋の手びねりで製作する蝋型鋳造ろうがたちゅうぞうの特色が表れている。

東京国立博物館
「桃に唐子からこ水滴」江戸時代・17~18世紀
「胡瓜水滴」江戸時代・17~18世紀
「茄子形水滴」

写真だとどうしても細部の繊細な凹凸がつぶれてしまう。艶やかさに、手に取り長く使われてきた様が伺える。

★なんと美しい木目「茶室蒔絵まきえ料紙りょうし硯箱」

「茶室蒔絵まきえ料紙りょうし硯箱」江戸時代・18世紀
木目を残して生かしつつ、竹垣に囲まれた茅葺の茶室
木目が美しい
石灯籠と菖蒲を配した露地

最小限の文様だけを盛り上げ、金粉を蒔きつける精緻な高蒔絵には洗練された感覚を伺うことができる。内側には黒漆に裏白の葉を大きく表した賑やかな図柄で、外側との対比が見事。

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★このお皿5枚セットで下さい!「色絵三壺さんこ文皿もんさら

「色絵三壺さんこ文皿もんさら」鍋島 江戸時代・17世紀

鍋島焼では、皿の規格をそろえ、転写紙を用いて同図をあらわした組皿が多く作られた。そのなかで本作は5枚が一緒に伝わる貴重な優品。紗綾形さやがた文、氷裂ひょうれつ文、花唐草文と異なった文様の壺が三つ並び、瑠璃地るりじを背景として、愛らしさと洗練さをもちあわせている。

東京国立博物館
左から「紗綾形さやがた文」、「氷裂ひょうれつ文」、「花唐草文」

唐草は、成長や繁栄を表わす文様。

浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)

★「東都名所・てつぽふづ」

「東都名所・てつぽふづ」歌川国芳 江戸時代・19世紀

隅田川河口西側の鉄砲洲てっぽうずで、岩場に腰掛け、釣竿を垂らす男性たち。釣れた魚を手にとる男性の竿先は画面を突き抜けている。左からは|
猪牙舟《ちょきぶね》が一艘、すーっと流れてくる。水平線には点々と帆船が浮かび、画面の枠に収まらない広大な海景が表されている。

東京国立博物館

構図の見事さにただただうっとり眺めた。


★ここにもマンガの片鱗が!「金魚づくし・さらいとんび」

「金魚づくし・さらいとんび」歌川国芳 江戸時代・19世紀

口をぽかんと開けて空を見上げる金魚たち。上空ではとんびに擬した金魚が笊のようなものをつかんで飛んでゆく。大切なものを不意に奪われることのたとえ、「鳶に油揚げをさらわれる」を題材にした戯画で、老若さまざまに擬人化された金魚たちには素朴な愛らしさが漂う。

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浮世絵と衣装―江戸(衣装)

★「帷子かたびら 白麻地しろあさじ竹蔦模様」

帷子かたびら 白麻地しろあさじ竹蔦模様」江戸時代・18世紀

江戸時代には、帷子の素材に、絹のように細く白い糸を用いて織りあげた麻の上布が用いられるようになった。藍のみで竹の立木模様を優雅に染め上げ、軽やかに蔦の蔓を添わせている。繊細な刺繍と藍の染の技術が涼を誘うデザインを生み出している。

東京国立博物館

帷子:裏をつけない衣服の総称。夏に着るひとえの着物。

麻の質感がよく伝わってくる。竹の立木模様、蔦、蔓。

刺繍、大好きなのでこういう繊細な作品は、ガラスに顔を近づけがん見してしてしまう( ;∀;)。

江戸時代 夏の装い
現代の着物の原型である江戸時代の「小袖」は、宮廷貴族が着用する「大袖」に対して、袖口が小さいことから「小袖」と称されるようになった。小袖にもいろいろな種類があり、夏ももっとも暑い時期には、麻のひとえ仕立てである「帷子かたびら」をまとった。時には、夏の衣装にあえて季節を先取りする秋の模様や、冷たい雪をデザインすることによって涼を誘うという趣向もなされた。

東京国立博物館

日本文化は、精緻で、洗練されていて、優雅で、愛らしい。

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